PDF や紙の書類を AI で Excel の表にするとき、当社は同じ読み取りを 3 回、別々に AI にさせています。3 回の結果をセルごとに突き合わせ、3 回とも同じ値になったセルはそのまま使います。食い違ったセルだけを、人が原本の PDF で確かめます。
1 回だけ読ませた表は、見た目は整っていても、どのセルが間違っているかが分かりません。全部を人が原本と見比べるなら、手で打ち直すのと手間があまり変わりません。3 回読ませるのは、人が見る場所を、食い違ったセルだけに絞るためです。
ここに書くのは、2026 年 3 月から 4 月にかけて、プレス加工と金型を手がける会社様の工作寸法指示書を 1 つの一覧表にしたときの記録です。
まず、同じ読み取りを 3 回させ、セルごとに機械で比べました
工作寸法指示書は、部品の品番ごとに 1 枚ずつあります。書かれているのは、材質、板厚と寸法の規格、測る道具と確かめる頻度、工程と使う機械、注記、改訂の記録などです。お客様は作業の指示をデジタルに移す準備を進めていて、その下準備として、全部の指示書を 1 つの表にまとめることになりました。
最初の読み取りでは、AI に仮の列で表を作らせ、それを別々に 3 回行いました。突き合わせは目で行わず、プログラムでセルを 1 つずつ比べています。2026 年 3 月 26 日に 3 回分を比べた結果です。
- 比べたセルの数
- 4,760セル
- 3 回とも同じ値
- 82.1% 3,907 セル
- 2 回が同じ値で、多数決で採用
- 9.1% 433 セル
- 3 回とも違うなど、人の確認に回したもの
- 5.2% 249 セル
- 1 回だけ空欄など、値の有無が分かれたもの
- 3.6% 171 セル
出所: 当社の作業記録(3 回の表を比べた結果)
8 割強のセルは、3 回とも同じ値でした。人の確認に回したのは、多数決でも決まらなかった 5.2% と、値の有無が分かれたセルです。比べた結果は、Excel の 2 枚目のシートに、食い違ったセルだけを並べて残しました。こうしておくと、どのセルを人が決めたのかを、あとから追えます。
ただし、多数決にも弱点があります。2 回が同じ読み違いをすれば、間違った値の方が選ばれます。
翌日、表の列を 3 回の分析で決め直し、4 月にその列で読み直しました
3 月 27 日には、表の列そのものを決め直しました。AI に 30 枚以上の指示書を読ませ、どんな項目がどのくらいの割合で出てくるかを書き出させる分析を 3 回、別々に行い、3 回の結果を比べて列を確定しています。
決め直すときに判断したことの例です。
| 指示書の書き方 | 決めたこと | 理由 |
|---|---|---|
| 「切断寸法」と書く指示書と、「シート寸法」と書く指示書がある | 1 つの列にまとめる | 1 枚の指示書に両方が出てくることがなかった |
| 板厚を測る道具の欄は、どの指示書も「マイクロメーター」 | 列として残す | 値が全部同じでも、指示書にある項目は落とさない |
| 寸法の欄は A から N までの 14 行の枠がある | 列は A から K までの 11 項目にする | L から N に値が入った指示書が無かった |
| 図面の中の「展開」「製品図」などのラベル | 列にしない | 図の一部で、表で扱う値ではない |
| 指示書の置き場所のフォルダの名前(得意先と種類) | 列にする | 指示書の中には書いていないが、絞り込みに使う |
列が変わると、前の表と同じ列どうしで比べられなくなります。そこで 4 月 3 日に、決め直した列で、指示書を得意先と種類ごとの 5 つのまとまりに分けて、もう一度読ませました。読み取りが 2 度になった理由の 1 つは、列を決める前に読み取りを始めたことです。列を先に決めて渡していれば、読み取りは 1 度で済みます。
- 3 回読ませる仮の列の表を、別々に 3 回作らせる(3 月 26 日)
- 機械で比べる3 つの表をセルごとに突き合わせ、一致・多数決・食い違いに分ける
- 列を決め直す指示書の項目を 3 回分析させ、表の列を確定する(3 月 27 日)
- 読み直す決めた列で、5 つのまとまりに分けてもう一度読ませる(4 月 3 日)
- 品番ごとに照らす前の表と品番ごとに比べ、食い違いを人が原本で確かめて表を確定する
食い違ったセルには、読み違いの型がありました
4 月の読み直しの結果を前の表と比べたときに出た食い違いを、型に分けました。
| 型 | 実際に出た例 | 頼むときに決めておくこと |
|---|---|---|
| 「上と同じ」の印 | 測る道具の欄の「↑」を、そのまま「↑」と写した回と、上の行の「ノギス」に置き換えた回があった | 「↑」や「同上」は、上の値に置き換えると先に伝える |
| 列のずれ | 工程の名前の欄に型の番号が入り、使う機械の欄に工程の名前が入った。注記の文が工程の欄に入った回もあった | 1 行に 1 品番。欄が空なら空欄のまま残し、左に詰めない |
| 英字の読み違い | 品番の末尾近くの「A」と「B」が入れ替わった | 品番のような鍵の列は、別の方法でもう一度確かめる |
| 全角・半角と空白 | 「t=2.6」と「t=2.6」、「25 +1.0/0」と「25+1.0/0」 | 比べる前に、全角と半角、空白をそろえる |
| 番号の付け方 | 注記の頭の「1.」が付いた回と、付かない回があった | 番号を残すか消すかを決めておく |
列のずれは、1 か所で起きても影響が大きく出ます。1 か所ずれると、その行の右側の値がすべて 1 列ずつずれるからです。セルの数で見ると大量の食い違いになりますが、行ごとに見れば、ずれ始めた 1 か所が分かります。
全角と半角の違いは、意味は同じでも、機械で比べると食い違いに数えられます。人の確認に回るセルが増えるだけなので、比べる前にそろえておく方が早く済みます。
読み直しで、空欄だった日付と品番の読み違いが見つかりました
4 月の読み直しでは、前の表で空欄だった制定日(指示書を作った日)が 21 件埋まりました。品番が前の表と合わないものもあり、多くは同じ部品の品番を、どちらかが読み違えていたものでした。末尾近くの A と B の入れ替わり、括弧や空白の有無です。
品番は、表の行を見分ける鍵です。ここを読み違えると、正しい値が別の部品の行に入ります。最後に 2 つの表を品番ごとに照らし、133 品番で値の食い違いが無くなったことを確かめてから、一覧表を確定しました。
AI に表を作らせるときは、最初にこれを伝えます
上の型から、読み取りを頼むときに最初に伝えることをまとめました。
- 表の見出し(列)の一覧と、列の順番
- 1 行に 1 件。表の鍵になる列(品番など)は必ず埋める
- 書いてあるとおりに写す。読めない・書いていないときは空欄にし、推測で埋めない
- 「↑」「同上」などの印をどう写すか
- 全角と半角、空白、単位の書き方をどうそろえるか
- 一度に読ませる量(まとまりに分けて渡す)
この中では「推測で埋めない」がとくに大事です。AI は、空欄の代わりにそれらしい値を入れることがあります(ハルシネーションと呼ばれる間違いの一種です)。空欄のまま返してもらえば、人が原本を見に行く場所がはっきりします。
当社がこの指示書で 3 回読ませたのは、表の値がそのまま現場の作業の指示になるからです。寸法の規格や工程を 1 つ読み違えれば、違う部品ができてしまいます。お客様に届く文書の確かめ方は、AI の間違いをお客様に届く前に止める手順にも書いています。書類の読み取りのような繰り返しの作業を AI に任せる設定は、AI伴走支援で御社の書類に合わせて行います。読み取りの前に伏せておきたい情報があるときの手順は、名前と金額を伏せる手順の記事に書きました。



