社内の FAQ は、思いつく質問を上から書いていくと、途中で止まります。続くのは、実際に来た質問から積み上げる作り方です。新人が先輩に聞いた質問や、お客様からの問い合わせを 1 か所に集め、AI に分類と件数を出させ、多い質問から順に答えを下書きさせます。載せる前に、担当の人が直します。
当社は 2026 年 5 月、製造業の会社様向けに組んだ AI研修の資料に、この手順を書きました。その会社様は、技術の営業を 1 人で回していて、これから人を増やすところでした。過去のお客様とのやり取りや、ベテランの判断の基準が、人の頭の中にしかありません。新しく入った人が同じことを何度も先輩に聞く前に、聞かれたことを残して引ける形にしておく、というのが資料の組み立てです。
FAQ は、実際に来た質問から積み上げます
資料に書いた流れは、次の 5 つです。
- 集める問い合わせ、新人の質問、電話のメモを 1 か所に集める
- 分ける月に 1 回、AI に質問を分類させ、件数を出させる
- 下書きする件数の多い質問から、AI に FAQ の形で答えを下書きさせる
- 直して載せる担当の人が答えを直し、社内の共有の場所に載せる
- 引く同じ質問が来たら、まず FAQ を見る。無ければ 1 に戻る
思いつく質問から書くと、書く人が大事だと思う質問が並びます。実際の質問から積み上げると、現場で何度も聞かれていることが並びます。問い合わせがチャットやメールで 1 か所に集まる仕組みがあれば、その記録が FAQ の材料になります。
質問を集めるときに残しておく項目
チャットやメールの問い合わせは、記録が勝手に残ります。残りにくいのは、電話で受けた質問と、新人が先輩の席まで来て口で聞いた質問です。こちらは、答えた人がその場で 1 行書く場所を決めておかないと、1 か月後には何も残っていません。
1 件ごとに残しておくと、あとで AI に分類させやすい項目は、次のとおりです。
| 項目 | 書き方 |
|---|---|
| 日付 | 質問を受けた日 |
| 質問した人の部署 | 新人なら入社の時期も添えると、つまずく時期が分かる |
| 質問の言葉 | 言い換えずに、聞かれた言葉のまま |
| 答えた人 | FAQ の答えを確かめてもらう相手になる |
| 答えたこと | 1〜2 行。手順書を見せたなら、どの手順書か |
「質問の言葉」を聞かれたまま残すのは、FAQ の質問の文にそのまま使うためです。答えた人が自分の言葉に直して書くと、次に同じことを聞く人が探す言葉と合わなくなります。
分類と下書きを頼むときの指示文
資料には、分類と下書きの 2 つの指示文を載せました。会社の名前や細かい設定を外すと、次の形です。
あなたは当社の問い合わせを分析する担当です。
添付の問い合わせ(過去 3 か月分)を読み、次を出してください。
1. 問い合わせの分類(5〜10 個)
2. 分類ごとの件数と割合
3. 分類ごとの、よくある質問の言い方 3 つ
4. 分類ごとの、よくある答え方
5. FAQ にした方がよい上位 10 件(件数と、答えるのにかかる手間から選ぶ)
お客様の名前と案件の名前は、伏せ字にしてください。
添付の質問と答えの組を、社内向けの FAQ の形に整えてください。
各 FAQ の形:
- 質問(質問した人の言葉で、50 字以内)
- 答え(200〜400 字、数字を入れる)
- 関係する手順書へのリンクの欄
- 担当の部署
- 最終更新日
専門の言葉は、最初に出たところで括弧に短い説明を入れてください。
2 つ目の指示文の欄は、それぞれに理由があります。
| 欄 | 理由 |
|---|---|
| 質問(質問した人の言葉で) | 探すときに使われるのは、質問した人の言葉だから |
| 答え(200〜400 字、数字を入れる) | 短すぎると答えにならず、長すぎると読まれにくい |
| 関係する手順書へのリンク | 答えは手順書の入口にして、手順そのものは手順書に置く |
| 担当の部署 | 答えが違っていたときに、誰に直してもらうかが分かる |
| 最終更新日 | 古い答えを見分けられる |
問い合わせにはお客様の名前が入るので、1 つ目の指示文には伏せ字の指示を入れてあります。AI に渡す前に伏せる手順は、名前と金額を伏せる手順の記事に書きました。
AI に答えさせるのは知識までにして、判断は人が教えます
新人の質問には、調べれば答えが決まるものと、経験で判断するものが混ざっています。資料では、この 2 つを分けて扱いました。
AI の FAQ が答える(知識)
- 工程の名前、材料の名前、社内の用語
- 図面や作業指示書の記号の意味
- 手順書のある場所と、手順の順番
- 前に同じことを聞かれたときの答え
人が教える(判断)
- この傷は不良か、出荷してよいか
- この作業は安全か、機械を止めるべきか
- このお客様の苦情にどう応えるか
- お客様との信頼や、仕事の倫理にかかわること
知識の質問を AI が受け持てば、ベテランが同じ説明を繰り返す時間が減ります。判断の質問は、AI が答えると、新人が理由を知らないまま答えだけを覚えます。判断の基準は、ベテランが教える時間として残します。ベテランの判断を残しておきたいときは、新人の質問にベテランが口で答えている場面を録音し、AI に「質問・答え・判断の理由・気をつけること」の形に整えさせる方法を、資料に書きました。
答えに自信が無いときは、人に戻す道を作っておきます
AI に答えさせる仕組みには、答えられないときに人へ引き継ぐ道を付けておきます。資料では、現場のタブレットで AI に質問したとき、答えに自信が無ければ「ベテランを呼ぶ」ボタンが出る形にしました。こうした引き継ぎは、エスカレーションと呼ばれます。
もう 1 つ、資料に書いたのが質問の記録です。新人が AI に聞いた質問は、記録として残ります。どの工程で、どの言葉でつまずいているかが、記録から見えるようになります。同じ質問が続く所は、FAQ だけでなく、手順書や教え方の側を直します。
作ったあとも、届く質問から直し続けます
FAQ と AI のチャットは、作った時点が完成ではありません。2026 年 7 月 31 日、新人の教育のために、社内の資料を読んで答えるチャットボットを作った産業機械の会社様と、ここまでを振り返りました。社長と確かめたのは、目的は新人が自分で調べて答えにたどり着けることで、仕組みを入れること自体ではない、という点です。作ったあとも現場から質問は届いていて、その質問が資料の置き方や名前の付け方を直すきっかけになっています。経緯は社内の資料に AI で答えさせる前の整理の記事に書きました。
載せる前に決めておくことは、次のとおりです。
- 誰が答えを直して載せるか(分類ごとの担当の部署)
- 答えが古くなったと気づいた人が、どこに知らせるか
- お客様の図面や単価など、FAQ に書かない情報
- AI が答えられないときに、どの人に引き継ぐか
- 最終更新日を、どの時点で書き換えるか
FAQ を、AI が読んで答える社内チャットボットの元にするなら、資料をまとめる場所(ナレッジベース)の考え方も役に立ちます。毎月の作業として質問の分類と下書きを回す場合は、AI伴走支援で進めます。



