AI が書いたまとめを人に回す前に、私は数字を 1 つずつ元の表と照らします。2026 年 4 月、研修の会社様から頼まれたアンケートの分析で、AI(Claude)が書いた「結果のまとめ」「成果」「課題」の文章を、取引先に出す前に読みました。成果を言い過ぎている印象が強く、日本語も分かりにくい。そこで、数字は計算表で実際に確かめた値だけを使うこと、数字を多用せず、落ち着いた言い方にすることを頼んで、書き直させました。
この記事では、そのときに見つかったことと、まとめを人に回す前に確かめるようにしたことを書きます。
文の中の数字を、計算表のセルと 1 つずつ照らしました
まず、文に書かれた数字を 1 つずつ抜き出し、計算表のどのセルの値かを並べた表を AI に作らせました。「文に書いた値・セルの値・合っているか」の 3 列です。合わない行は、次のようなものでした。
| 見つかったこと | 直し方 |
|---|---|
| 研修を受けた人の数が、名簿の人数と違っていた | 名簿の人数に直した |
| 前の期の平均として書かれた数字が、計算表のどこにも無かった。別の 1 項目の値が紛れ込んだ可能性が高い | 出所が確かめられないので、前の期と比べる文ごと外した |
| 小数第 2 位が、セルの値と 0.01 ずれていた | セルの値に合わせた |
| 「多くの項目で上がった」の項目の数が、文に書かれていない基準(ある幅より大きく上がった項目だけ)で数えられていた | 上がった項目をすべて数え直すと全部の項目だったので、基準の要らない書き方にした |
いちばん気をつけたいのは、4 つ目のような数え方です。数字そのものは計算どおりでも、どう数えたかが文に書かれていないと、読む人は違う意味に受け取ります。AI は、もっともらしい基準を自分で置いて数えることがあります(ハルシネーション)。数え方を説明できない数字は、使わないか、数え方ごと書きます。
言い過ぎの言葉は、調査で言えることまでに戻しました
AI が書いた文には、調査の結果よりも強い言葉が並んでいました。
書き直す前(AI の文)
- 数値で実証されています
- 設計の堅牢性を示しました
- 定量的に裏付けられました
- 再現性・拡張性が確立
書き直した後
- 改善が見られました
- 改善が続いています
- スコアが上がっています
- 受講者が増えた中でも、改善の傾向を保っています
この調査は、同じ人に研修の前と後で答えてもらうアンケートです。言えるのは「改善が見られた」までで、研修が改善を生んだと「実証」したわけではありません。言い過ぎの文は、読む人が数字を確かめたときに、まとめ全体を信じてもらえなくなる原因になります。
「課題」の欄も書き方を変えました。読む人の組織の弱いところを並べる書き方から、「次の回で一緒に掘り下げたいテーマ」として書く形にしています。
読む人に通じない記号は使いません
書き直した文には、まだ「Δ平均」という書き方が残っていました。変化の大きさを表す記号です。私は「意味のわからん記号を使わんで欲しい」と伝え、「スコアの変化」のような言葉に置き換えさせました。集計をした人には当たり前の記号でも、経営者や取引先の担当の方には通じません。
同じ理由で、矢印や「pt」のような略した書き方も、読む人に合わせて言葉に直します。
長さは、元の資料の見出しの数と字数に合わせます
4 日後の 4 月 20 日には、同じ分析のスライド 4 枚分の文章と、自由記述の設問ごとのまとめを AI に書かせました。最初の文章は長く、1 つの項目に数字が 3〜4 個並んでいて、読みにくいものでした。そう伝えて削らせると、今度は見出しだけのような、短すぎる文になりました。
そこで、元のスライドの密度を数えて、それを AI に渡すことにしました。
- 大きな見出し
- 2〜3個
- 見出しの下の項目
- 3〜5個
- 1 つの項目の字数
- 70〜150字
- 1 つの項目に入れる数字
- 1〜2個
出所: 当社が 2026 年 4 月に、取引先の元のスライドから数えた目安
長いと言われたときは、文を削る前に数字を削ります。残りの数字は、根拠をまとめた別のファイルに移します。短すぎると言われたときは、見出しを増やすのではなく、1 つの項目の文を足します。
もう 1 つの失敗は、元のスライドで 6 つあった項目を、AI が 3 つにまとめていたことです。項目の数を変えると、読む人は「なぜ減ったのか」と確かめたくなります。数を変えるときは、変える前に理由を見せて、合意を取ることにしました。
どこに貼るかを、作る前に聞きます
この日の私の頼み方は、段階的に増えていきました。設問ごとのまとめができると「コピペしたいからパワポスライドにできる?」と頼み、箇条書きの形を見て「文章にできるかな?見出しとテキスト」と頼み、最後に、別の資料にそのまま貼れる文の形を見本で示しました。冒頭の 3〜4 文で全体の傾向を書き、そのあとに「● テーマ名(件数)」と回答の原文の引用を並べる形です。
貼れる形が決まるまでに、スライドにする、文章にする、貼る用の文を足す、と 3 段階かかりました。最初に「できた文章を、どこに貼りますか」と聞いていれば、もっと早く決まっていたはずです。今は、まとめを書かせる前に、貼る先と、読む人と、元になる資料の密度を決めています。
- 文の中の数字が、すべて元の表のセルまでたどれるか
- 数え方や比べ方の基準が、文の中に書いてあるか
- 調査で言えること以上の強い言葉を使っていないか
- 読む人に通じない記号や略語が残っていないか
- 長さと数字の数が、貼る先の資料の密度に合っているか
- 項目の数を元の資料から変えていないか。変えたなら理由を伝えたか
- 引用が、回答の原文のままか
自由記述のテーマの分け方と引用の決まりは、自由記述を AI で分類する記事に、表の数え直しはAI に Excel の集計をさせる前の記事に書きました。お客様に届く資料の確かめ方は、AI の間違いを届く前に止める記事にもまとめています。値を元の表と照らす作業は、用語集の突き合わせとファクトチェックにも書きました。報告や資料の下書きを毎月 AI に任せたい場合は、AI伴走支援で、確かめる手順と一緒に組み立てます。



