e ラーニングの受講の記録は、動画を「開いた」かどうかではなく、「どこまで見たか」で残します。早送りで飛ばした所を見たことに数えてしまうと、記録の上では修了していても、中身を学んだかは分かりません。2026 年 8 月、当社は企業研修向けの e ラーニングの仕組みを設計し、受講の記録として何をどう残すかを先に決めました。
厚生労働省の人材開発支援助成金の案内(人材育成支援コース、令和 8 年 8 月 3 日現在)は、e ラーニングを、受講を管理する仕組み(LMS)で進み具合を管理できる遠隔の講習、と説明しています。管理の中身の例として挙げているのは、訓練を修了した日、受講の開始と終了の日時、受講した時間、進み具合の割合です。社員の研修に助成金を使うかどうかにかかわらず、これらは研修の記録として役に立つ項目です。
動画は、見た区間をつないで数えます
動画の受講の記録は、次の順で作る設計にしました。
- 送る再生している画面から、見た区間(何秒から何秒まで)を 15 秒ごとに送る
- つなぐ前に受け取った区間とつなぎ、重なった所を 1 回に数える
- 割合を出すつないだ区間の合計を、動画の長さで割る
- 完了にする決めた割合を超えたら、その教材を完了にする
再生、停止、飛ばし、速さの切り替えといった操作は、出来事の記録として、消さずに足していきます(視聴ログ)。この記録があるので、飛ばした区間と、実際に流れた区間を分けて数えられます。画面を開いただけの受講は、見たことに数えません。
倍速で見ることは認め、1.5 倍までとしました。速さを変えたことも記録に残します。
決めておいた時間と、実際にかかった時間は分けて持ちます
e ラーニングの時間には 2 種類あります。教材ごとに前もって決めておく「標準学習時間」と、受講した人が実際にかけた時間です。当社の設計では、この 2 つを別々に持ち、両方を出せるようにしました。
| 時間 | 決め方 | 使い道 |
|---|---|---|
| 標準学習時間 | 動画は 1 倍の速さの長さ、読み物は本文の字数を 1 分 500 字で割った長さ、課題は資料を読む時間と書く時間を足した長さ | 受講の案内に書く。教材ごとの算定の根拠を表で残す |
| 実際にかけた時間 | 動画は見た区間の合計。読み物と課題は、画面にいた時間や作業の時間を測る | 受講した人が、どれだけ取り組んだかを示す |
設計を進める中で分かったのは、動画だけを測ると、記録に残る時間が、コースによっては決めた時間の半分から 3 分の 2 ほどにとどまることでした。読み物を読む時間と、課題に取り組む時間を測っていなかったからです。この 2 つの測り方は、設計の時点ではまだ作っていませんでした。e ラーニングの仕組みを選ぶときは、動画以外の教材の時間をどう記録するかも確かめておきます。
修了の条件は、教材とテストと課題の 3 つで判定します
修了は、次の 3 つがすべてそろった時点にしました。修了した日は、3 つ目がそろった日です。
- 各動画の見た割合
- 90% すべての教材を完了
- 確認テストの正答率
- 80%
- 課題の提出の締め切り
- 15営業日 受講できる期間の終わりの日の前
出所: 当社の e ラーニングの設計(2026 年 8 月)。課題は講師が採点して合否を返す
課題の締め切りを、受講できる期間の終わりから 15 営業日前に置いたのは、採点に 5 営業日、差し戻したときの作り直しに 5 営業日、もう一度の採点に 5 営業日を見込んだからです。期間の最後の日に出された課題は、期間の中で採点を終えられません。締め切りは、仕組みの側で自動で決めます。
受講の期限が近い人には、期限の 30 日前、14 日前、7 日前に知らせる設計にしました。管理者が手で受講の記録を「修了」にする操作は、助成金を使うコースでは使えない作りにしています。修了は、条件がそろったことを仕組みが確かめて決めます。
記録を直すときは、理由と前後の値と操作した人を残します
受講の期限を延ばすときのように、記録を手で直す場面はあります。直すときは理由の入力を必須にし、次の項目を監査ログに残します。
- 操作した人と、直した対象
- 直す前と後の値
- 理由
- 日時と、操作した端末の情報
監査ログは書き足すだけで、あとから書き換えたり消したりはできない作りです。1 件ごとに、1 つ前の記録の内容を含めた値をつなげて持たせ、途中の記録を書き換えると、つながりが合わなくなるようにしました。このつながりは、あとから作り直せません。そのため、最初の受講の記録が入る前から入れておく決まりにしています。
受講の実績、修了、修了証の記録は、物理的には消さない設計です。修了したことを証明する修了証も、記録から作ります。
仕組みから出せる記録
社員に研修を受けさせた会社が、あとで記録を求められたときに出せるよう、次を出せる設計にしました。
- 受講者ごとの、修了した日・受講の開始と終了の日時・受講した時間・進み具合の割合(教材ごとの内訳つき)
- 修了証(コース名・標準学習時間・受講できる期間・修了した日)
- 教材ごとの標準学習時間の算定の表
- ログインとログアウトの日時(会社ごとの就業時間と突き合わせられる形)
- 確認テストの受験の回数、最初と最後の点数、それぞれの日時
公表されている資料だけでは解釈を決めきれない点は、教材を作り込む前に、労働局に確かめる準備をしました。e ラーニングの研修が助成金の対象になるかどうかは、社会保険労務士に相談し、労働局に確かめる事柄です。申請の手続きを代わりに行えるのは社会保険労務士で、当社が行うのは、申請に使う記録を仕組みから出すところまでです。
研修の動画を AI で作るときに確かめたことは、研修の動画 348 本を AI で作る記事に、助成金を使う前に確かめることはAI を学ぶ社員研修に助成金を使う記事に書きました。修了をどう決めるかの考え方は、用語集の修了条件にまとめています。研修の組み立てと記録の残し方からご相談いただく場合は、リスキリング研修で進めます。



