2019 年以降に省力化投資をした中小企業のうち、その投資の中で AI の活用に取り組んだのは 30.3% でした。2026 年 4 月 24 日に閣議決定された中小企業白書の 2026 年版は、第 2 部の第 2 章で、AI の活用を 5 つの図にまとめています。取り組んだ割合、部門ごとの使い方、目的、業種ごとの使い道、社員向けの勉強会の有無による効果の違いです。この記事では、5 つの図を番号つきで読みます。
数字はいずれも、帝国データバンクの「令和 7 年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」の回答です。もとになっているのは、人手をかけずに仕事を回すための投資(省力化投資)に取り組んだ事業者で、中小企業全体ではありません。
AI の活用に取り組んだのは 30.3%、情報通信業は 71.7% でした
第 2-2-87 図は、省力化投資の中で AI の活用に取り組んだかを、業種ごとに並べたものです。
- 全体
- 30.3% 5,645 社
- 情報通信業
- 71.7% 237 社
- 建設業
- 25.9% 1,428 社
- 製造業
- 24.9% 1,508 社
出所: 中小企業庁「2026 年版 中小企業白書」第 2-2-87 図
| 業種 | 取り組んだ | 回答した事業者 |
|---|---|---|
| 全体 | 30.3% | 5,645 社 |
| 建設業 | 25.9% | 1,428 社 |
| 製造業 | 24.9% | 1,508 社 |
| 情報通信業 | 71.7% | 237 社 |
| 運輸業、郵便業 | 27.4% | 215 社 |
| 卸売業 | 27.9% | 1,132 社 |
| 小売業 | 31.1% | 296 社 |
| 宿泊業、飲食サービス業 | 22.9% | 48 社 |
情報通信業を除くと、どの業種も 2〜3 割です。白書は、業種別の図では一部の業種だけを載せた、と注に書いています。
部門別では、事務と営業の部門で「活用している」が 7 割前後でした
第 2-2-88 図は、AI の活用に取り組んだ事業者に、部門ごとの使い方を聞いたものです。「該当する部門はない」と答えた事業者は除かれています。
| 部門 | 活用している | 必要性を認識しているが、活用には至っていない | 必要性を認識しておらず、活用していない |
|---|---|---|---|
| 製造・生産管理・物流部門(1,210 社) | 57.2% | 31.2% | 11.6% |
| 営業・販売・顧客対応部門(1,605 社) | 68.2% | 24.9% | 6.9% |
| バックオフィス部門(1,577 社) | 73.4% | 20.9% | 5.7% |
AI に取り組んだ事業者でも、製造の現場に近い部門では、3 割ほどが「必要だと思うが、まだ使えていない」と答えています。
目的の 1 位は業務時間の節減で、人手不足と属人化の解消が続きます
第 2-2-89 図は、AI を活用する目的を聞いたものです(複数回答、1,685 社)。
| 目的 | 割合 |
|---|---|
| 業務時間の節減 | 84.5% |
| 人手不足の解消 | 40.5% |
| 業務の属人化解消 | 40.1% |
| 意思決定の迅速化 | 26.8% |
| 人件費の削減 | 24.5% |
| 品質の均一化 | 23.3% |
| その他 | 5.2% |
「人件費の削減」は 24.5% で、「業務時間の節減」の 3 分の 1 に届きません。浮いた時間を人を減らすことに使うより、足りない手を補うことに使う、という読み方ができる数字です。1 人の担当者しか分からない仕事を減らす目的(属人化の解消)も、4 割の事業者が挙げています。
使い道は、どの業種でも文書作成・要約と業務の自動化が上位でした
第 2-2-90 図は、AI の具体的な使い方を自由に書いてもらい、生成 AI で 12 の使い道に分けて、業種ごとの割合を並べたものです。回答が 10 社以上あった業種だけが載っています。6 つの使い道を抜き出しました。
| 業種 | 文書作成・要約・校正 | 業務自動化・効率化 | データ分析・統計・意思決定支援 | 議事録・文字起こし・会議支援 | 広告・マーケティング・販促 | プログラミング・コーディング支援 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 建設業(177 社) | 60% | 38% | 37% | 19% | 12% | 2% |
| 製造業(227 社) | 38% | 51% | 36% | 17% | 9% | 7% |
| 情報通信業(93 社) | 46% | 35% | 27% | 10% | 13% | 45% |
| 卸売業(162 社) | 49% | 45% | 34% | 10% | 19% | 4% |
| 小売業(50 社) | 48% | 38% | 38% | 20% | 32% | 8% |
建設業では文書作成・要約・校正が 60% と最も高く、製造業では業務の自動化・効率化(RPA を含む)が 51% で最も高くなっています。情報通信業のプログラミング支援 45%、小売業の販促 32% は、ほかの業種より高い数字です。同じ図の「マニュアル・教育・研修」は、どの業種も 2〜8% にとどまっていました。
白書は、この分類に使った指示文も図の注に載せています。自由記述を AI で分けるときの手順は、自由記述を AI で分類する記事で、この指示文と並べて書きました。
研修会や勉強会に取り組む事業者ほど、想定した効果を得ていました
第 2-2-91 図は、社員の AI 活用を進めるための研修会や勉強会に取り組んでいるかどうかで、AI 活用の評価を比べたものです。
取り組んでいる(920 社)
- 想定を超える効果が得られた 12.2%
- 想定した効果が得られた 79.2%
- 想定した効果が得られなかった 8.6%
取り組んでいない(789 社)
- 想定を超える効果が得られた 11.8%
- 想定した効果が得られた 72.1%
- 想定した効果が得られなかった 16.1%
「想定を超える効果」は、どちらも 12% 前後でほとんど変わりません。差が出ているのは、「想定した効果が得られなかった」の割合で、勉強会に取り組んでいない事業者は 16.1%、取り組んでいる事業者は 8.6% でした。数字の上では、勉強会の有無による差は、大きな成果の割合より、うまくいかなかった割合の方に表れています。白書は、AI の活用と併せて研修会や勉強会を行うことが重要だと「示唆される」と書いています。
5 つの図を読むときの前提
数字を自社の判断に使う前に、次の点を押さえておきます。
- 回答したのは、2019 年以降に省力化投資に取り組んだ事業者。中小企業全体ではない
- 部門別・目的・使い道・評価の図は、その中で AI の活用に取り組んだ事業者の回答
- 使い道の図は、自由記述を生成 AI で分類したもの。1 件が複数の使い道に入るので、合計は 100% にならない
- 業種によって回答の数が大きく違う(宿泊業、飲食サービス業は 48 社)
- 評価は事業者の自己評価で、効果を測った数字ではない
白書は別の節で、政府の人工知能基本計画(2025 年 12 月 23 日閣議決定)が掲げる AX(AI を使って製品やサービス、仕事の進め方を変えていくこと)にも触れています。
研修の題材を選ぶときの使い方
使い道の図で、どの業種でも上位だったのは、文書の作成と要約、業務の自動化でした。当社の AI秘書作成研修では、秘書に任せたい仕事を伺い、1 つを選んで御社の環境で一緒に作ります。範囲は、AI をカレンダーとメールにつなぐところまでです。最初の 1 つを、白書で多くの事業者が挙げた「書く・まとめる」仕事のうち、メールや予定に関わるものから選んでおくと、研修の翌日からも同じ仕事で試せます。
社員向けの勉強会の進め方は、当社が経営者向けに開いた講座の記録と一緒に、生成 AI を使わない理由の記事に書きました。会社としての方針の決め方は、令和 7 年版 情報通信白書の数字を読んだ活用方針の記事にあります。同じ 2026 年版の中小企業白書からは、業務の見直しの数字を読んだ記事も書きました。



