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コラム

中小企業白書 2026 で見る、AI を使う中小企業の割合と使い道

この記事の要点

2026 年版の中小企業白書では、2019 年以降に省力化投資をした事業者のうち、AI の活用に取り組んだのは 30.3% でした。目的は「業務時間の節減」が 84.5% で最も多く、使い道はどの業種でも文書作成・要約と業務の自動化が上位です。社員向けの研修会や勉強会に取り組む事業者ほど、想定した効果が得られなかったと答えた割合が低くなっていました。

2019 年以降に省力化投資をした中小企業のうち、その投資の中で AI の活用に取り組んだのは 30.3% でした。2026 年 4 月 24 日に閣議決定された中小企業白書の 2026 年版は、第 2 部の第 2 章で、AI の活用を 5 つの図にまとめています。取り組んだ割合、部門ごとの使い方、目的、業種ごとの使い道、社員向けの勉強会の有無による効果の違いです。この記事では、5 つの図を番号つきで読みます。

数字はいずれも、帝国データバンクの「令和 7 年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」の回答です。もとになっているのは、人手をかけずに仕事を回すための投資(省力化投資)に取り組んだ事業者で、中小企業全体ではありません。

AI の活用に取り組んだのは 30.3%、情報通信業は 71.7% でした

第 2-2-87 図は、省力化投資の中で AI の活用に取り組んだかを、業種ごとに並べたものです。

省力化投資のうち、AI の活用に「取り組んだ」割合
全体
30.3% 5,645 社
情報通信業
71.7% 237 社
建設業
25.9% 1,428 社
製造業
24.9% 1,508 社

出所: 中小企業庁「2026 年版 中小企業白書」第 2-2-87 図

業種 取り組んだ 回答した事業者
全体 30.3% 5,645 社
建設業 25.9% 1,428 社
製造業 24.9% 1,508 社
情報通信業 71.7% 237 社
運輸業、郵便業 27.4% 215 社
卸売業 27.9% 1,132 社
小売業 31.1% 296 社
宿泊業、飲食サービス業 22.9% 48 社

情報通信業を除くと、どの業種も 2〜3 割です。白書は、業種別の図では一部の業種だけを載せた、と注に書いています。

部門別では、事務と営業の部門で「活用している」が 7 割前後でした

第 2-2-88 図は、AI の活用に取り組んだ事業者に、部門ごとの使い方を聞いたものです。「該当する部門はない」と答えた事業者は除かれています。

部門 活用している 必要性を認識しているが、活用には至っていない 必要性を認識しておらず、活用していない
製造・生産管理・物流部門(1,210 社) 57.2% 31.2% 11.6%
営業・販売・顧客対応部門(1,605 社) 68.2% 24.9% 6.9%
バックオフィス部門(1,577 社) 73.4% 20.9% 5.7%

AI に取り組んだ事業者でも、製造の現場に近い部門では、3 割ほどが「必要だと思うが、まだ使えていない」と答えています。

目的の 1 位は業務時間の節減で、人手不足と属人化の解消が続きます

第 2-2-89 図は、AI を活用する目的を聞いたものです(複数回答、1,685 社)。

目的 割合
業務時間の節減 84.5%
人手不足の解消 40.5%
業務の属人化解消 40.1%
意思決定の迅速化 26.8%
人件費の削減 24.5%
品質の均一化 23.3%
その他 5.2%

「人件費の削減」は 24.5% で、「業務時間の節減」の 3 分の 1 に届きません。浮いた時間を人を減らすことに使うより、足りない手を補うことに使う、という読み方ができる数字です。1 人の担当者しか分からない仕事を減らす目的(属人化の解消)も、4 割の事業者が挙げています。

使い道は、どの業種でも文書作成・要約と業務の自動化が上位でした

第 2-2-90 図は、AI の具体的な使い方を自由に書いてもらい、生成 AI で 12 の使い道に分けて、業種ごとの割合を並べたものです。回答が 10 社以上あった業種だけが載っています。6 つの使い道を抜き出しました。

業種 文書作成・要約・校正 業務自動化・効率化 データ分析・統計・意思決定支援 議事録・文字起こし・会議支援 広告・マーケティング・販促 プログラミング・コーディング支援
建設業(177 社) 60% 38% 37% 19% 12% 2%
製造業(227 社) 38% 51% 36% 17% 9% 7%
情報通信業(93 社) 46% 35% 27% 10% 13% 45%
卸売業(162 社) 49% 45% 34% 10% 19% 4%
小売業(50 社) 48% 38% 38% 20% 32% 8%

建設業では文書作成・要約・校正が 60% と最も高く、製造業では業務の自動化・効率化(RPA を含む)が 51% で最も高くなっています。情報通信業のプログラミング支援 45%、小売業の販促 32% は、ほかの業種より高い数字です。同じ図の「マニュアル・教育・研修」は、どの業種も 2〜8% にとどまっていました。

白書は、この分類に使った指示文も図の注に載せています。自由記述を AI で分けるときの手順は、自由記述を AI で分類する記事で、この指示文と並べて書きました。

研修会や勉強会に取り組む事業者ほど、想定した効果を得ていました

第 2-2-91 図は、社員の AI 活用を進めるための研修会や勉強会に取り組んでいるかどうかで、AI 活用の評価を比べたものです。

AI 活用の評価(社員向けの研修会や勉強会の有無別)

取り組んでいる(920 社)

  • 想定を超える効果が得られた 12.2%
  • 想定した効果が得られた 79.2%
  • 想定した効果が得られなかった 8.6%

取り組んでいない(789 社)

  • 想定を超える効果が得られた 11.8%
  • 想定した効果が得られた 72.1%
  • 想定した効果が得られなかった 16.1%

「想定を超える効果」は、どちらも 12% 前後でほとんど変わりません。差が出ているのは、「想定した効果が得られなかった」の割合で、勉強会に取り組んでいない事業者は 16.1%、取り組んでいる事業者は 8.6% でした。数字の上では、勉強会の有無による差は、大きな成果の割合より、うまくいかなかった割合の方に表れています。白書は、AI の活用と併せて研修会や勉強会を行うことが重要だと「示唆される」と書いています。

5 つの図を読むときの前提

数字を自社の判断に使う前に、次の点を押さえておきます。

白書の AI の数字を読むときに確かめること
  • 回答したのは、2019 年以降に省力化投資に取り組んだ事業者。中小企業全体ではない
  • 部門別・目的・使い道・評価の図は、その中で AI の活用に取り組んだ事業者の回答
  • 使い道の図は、自由記述を生成 AI で分類したもの。1 件が複数の使い道に入るので、合計は 100% にならない
  • 業種によって回答の数が大きく違う(宿泊業、飲食サービス業は 48 社)
  • 評価は事業者の自己評価で、効果を測った数字ではない

白書は別の節で、政府の人工知能基本計画(2025 年 12 月 23 日閣議決定)が掲げる AX(AI を使って製品やサービス、仕事の進め方を変えていくこと)にも触れています。

研修の題材を選ぶときの使い方

使い道の図で、どの業種でも上位だったのは、文書の作成と要約、業務の自動化でした。当社の AI秘書作成研修では、秘書に任せたい仕事を伺い、1 つを選んで御社の環境で一緒に作ります。範囲は、AI をカレンダーとメールにつなぐところまでです。最初の 1 つを、白書で多くの事業者が挙げた「書く・まとめる」仕事のうち、メールや予定に関わるものから選んでおくと、研修の翌日からも同じ仕事で試せます。

社員向けの勉強会の進め方は、当社が経営者向けに開いた講座の記録と一緒に、生成 AI を使わない理由の記事に書きました。会社としての方針の決め方は、令和 7 年版 情報通信白書の数字を読んだ活用方針の記事にあります。同じ 2026 年版の中小企業白書からは、業務の見直しの数字を読んだ記事も書きました。

よくあるご質問

AI に取り組んだ 30.3% は、中小企業全体の割合ですか?
全体の割合ではありません。2019 年以降に省力化投資に取り組んだ事業者(5,645 社)に、その投資の中で AI を活用したかを聞いた結果です。省力化投資をしていない事業者は、この数に入っていません。
研修会や勉強会をすれば、AI の効果は出るのですか?
白書の図は、勉強会に取り組んでいる事業者の方が、想定した効果を得たと答えた割合が高い、という比べ方です。勉強会をしたから効果が出た、と確かめたものではありません。白書も「示唆される」という書き方にとどめています。
自社の業種の使い道の割合は、どこで見られますか?
第 2-2-90 図に、回答が 10 社以上あった 8 つの業種について、12 の使い道ごとの割合が載っています。中小企業庁の白書のページから、HTML 版と PDF 版のどちらでも読めます。

出典・参考にした資料

  1. 中小企業庁「中小企業白書」(2026 年版の閣議決定 2026 年 4 月 24 日)
  2. 中小企業庁「2026 年版 中小企業白書(HTML 版)」
  3. 中小企業庁「2026 年版 中小企業白書(HTML 版)」第 2 部第 2 章第 2 節(第 2-2-87 図〜第 2-2-91 図)

この記事を書いた人

小野 隆士ドットシンク株式会社 代表取締役

システム開発会社の会社員、Web 制作の個人事業主、不動産営業、Web 制作会社の役員を経て、CRM 事業を軸にドットシンク株式会社を起業。自社の営業と事務の仕事に AI を使い、そのやり方を AI研修と AI伴走支援でお客様の会社に持ち込んでいます。デジタル庁 デジタル推進委員(2024 年 7 月任命)。

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