社員の AI の研修に国の助成金を使うなら、先に決めるのは、研修の後に誰のどの仕事が変わるかです。そのうえで、研修の題材がその仕事に直結しているか、研修を始める日の 1 か月前までに計画を労働局へ出せる日程か、研修の費用を会社が全額払う形かを確かめます。申請の手続きを代わりに行えるのは、社会保険労務士です。
当社は、この助成金の要件に合わせて社員向けの研修を組むリスキリング研修を行っています。ただ、この助成金を使った研修は、2026 年 9 月 25 日の時点で、当社ではまだ行っていません。助成率や金額は年度やコースで変わるため、この記事には書いていません。
- 研修の後に、誰のどの仕事が変わるかを決めた
- 研修の題材が、受ける人の仕事に直結している(汎用的なプロンプトの作り方だけになっていない)
- 1 回の短い研修で終わらず、複数回の研修として組んでいる
- 研修を始める日の 1 か月前までに、計画を労働局へ出せる日程になっている
- 研修の費用を会社が全額払う形になっている(実質無料・キャッシュバックの話が混ざっていない)
- AI のツールの導入費用を、研修の費用に入れていない
- 申請の手続きを誰が行うか(頼むなら社会保険労務士)を決めた
- 出席・内容・成果を記録する形を決めた
- 最新の案内(支給要領・パンフレット)の日付を確かめた
厚生労働省の案内(2026 年 9 月 25 日に確認)と、当社のリスキリング研修の進め方からまとめたものです。
AI やデジタルの研修でよく名前が挙がるのは、人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースです
人材開発支援助成金は、厚生労働省の助成金です。会社が雇っている社員に、仕事に関係する専門的な知識や技能を身につける訓練を計画に沿って行ったときに、訓練の経費や、訓練の間の賃金の一部が助成されます。コースは 7 つあります。
AI やデジタルの研修でよく名前が挙がるのは、事業展開等リスキリング支援コースです。新しい事業を始めるなどの事業の展開に合わせて、新しい分野で必要になる知識と技能を身につける訓練が対象です。社内のデジタル化(DX)を進めるための訓練も、このコースの対象に含まれます。
厚生労働省の詳しい案内には、このコースは令和 4 年度から 8 年度までの期間限定の助成金として作られたと書かれています。令和 8 年度は 2027 年 3 月までです。
研修の内容で確かめる 3 つのこと
研修の後に誰のどの仕事が変わるかを、先に決めます
当社のリスキリング研修では、まず御社の業務がどう変わるかを決めてから、その研修が対象になるかを確かめます。
このコースでは、研修の計画と一緒に、事業の展開や社内のデジタル化の中身を書いた計画も労働局へ出します。どの仕事を変えるかが決まっていないと、この計画が書けません。研修の題材を選ぶ前に、研修を受けた後にできるようになってほしい作業を、受ける人ごとに挙げておきます。
題材は、受ける人の仕事に直結したものにします
2026 年 8 月 3 日から、このコースで対象にならない訓練の決まりが変わりました。デジタル化(DX)に関わる訓練でも、仕事に間接的にしか関係しないものや、どの仕事の人にも共通して必要なものは、対象になりません。この日以降に出す計画から当てはまります。
厚生労働省の案内には、AI の研修の例が載っています。生成 AI を使って、商品の提案書の構成案を作り、文章を作らせ、直す方法を学ぶ営業担当者向けの訓練は、対象になる例として挙げられています。営業担当者の仕事にそのまま使える内容だからです。一方で、生成 AI を使うための汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練は、特定の仕事に当てはめていないため、対象外の例として挙げられています。
社員全員に同じ一般的な使い方を教える研修は、組み方によっては対象になりません。当社のモデルケース(想定)では、受ける人の仕事ごとに班と題材を分けています。
| モデルケース(想定) | 班の分け方と題材 |
|---|---|
| 金属加工の会社(従業員 30 名) | 事務・営業の班は、図面を受け取ったときの返信と見積もりの下書き。現場のリーダーの班は、作業の記録と報告のまとめ |
| 会計事務所(職員 15 名) | 2 班に分け、お客様への文章、資料づくり、集計の順に回を分ける。最初の回で、AI に入れてよい情報と入れない情報を決める |
| 子ども向けのスポーツ教室(スタッフ 12 名) | パソコンを使う班は連絡文・日程の調整・出席と支払いの表の扱いまで。スマートフォンで使う班は連絡文の下書きに絞る |
1〜2 時間の AI基礎研修だけでは対象にならないため、複数回に分けて組みます
当社の AI基礎研修(1〜2 時間)だけでは、このコースの対象になりません。研修の時間数などの条件があるためです。リスキリング研修は、計画に沿って複数回に分けて行います。1 回の研修は 10 名までとし、5 名から組めます。
研修の計画は、研修を始める日の 6 か月前から 1 か月前までに労働局へ出します
研修の計画は、研修を始める日の 6 か月前から 1 か月前までの間に、管轄の労働局へ出します。研修を先に始めてしまうと、計画を出す時期を過ぎてしまいます。
当社の流れでは、30 分の無料相談の後、御社が対象になるかと必要な手続きを、社会保険労務士と確かめます。ここまでが相談から 1〜2 週間です。次に、受講人数と研修時間でお見積もりして、研修計画を作ります。計画づくりには、対象の確認から 1 週間ほどかかります。研修の日程は、計画が固まってから決めます。計画を出してから研修を始めるまでに 1 か月以上を空けるため、研修の日付は、そこからさらに先になります。
研修の費用は会社が全額払う必要があり、「実質無料」をうたう勧誘には注意します
厚生労働省は「『訓練経費』は無料になりません」というチラシを出しています。この助成金を受けるには、研修の費用を会社が全額払うことが必要で、その一部が後から助成されます。費用が無料になったり、利益が出たりすることは、制度の上でありません。
チラシと詳しい案内では、次のような勧誘に注意するよう呼びかけています。
- 受講料が実質無料になり、払った額より多くのお金が戻るという話
- 研修の後のアンケートや、ほかの会社への営業の協力の対価として、お金を受け取る話
- AI の研修と AI のツールの導入をまとめて、ツールの導入費用も研修の費用として申請できるという話
最後の例について、案内には、AI の研修の費用は対象になるが、AI のツールの導入費用は対象にならないと書かれています。判断に迷う話を持ちかけられたら、管轄の労働局に相談するよう案内されています。
当社のリスキリング研修の料金は、受講人数と研修時間でお見積もりします。請求は、研修の開始月と完了月に分けて、請求書でお送りします。社会保険労務士への申請の手続きの費用と、AI のサービスの利用料は、当社の料金に含みません。
申請の手続きは社会保険労務士が行い、当社は出席・内容・成果の記録を申請に使える形で整えます
助成金の申請の手続きを、報酬を得て代わりに行うことは、社会保険労務士の独占業務です。厚生労働省の詳しい案内には、研修会社が申請の手続きを無料で行うとうたっていても、受講料に手続きの対価が含まれていると見なされれば、法律上の問題になると書かれています。当社は申請を行いません。御社の顧問か、つきあいのある社会保険労務士と確かめながら進め、確認の場には当社も同席します。
申請には、研修を行ったことが分かる記録が要ります。当社のリスキリング研修では、出席・内容・成果の記録を、申請に使える形で残します。班ごと、回ごとに記録を分けておくと、どの研修に誰が出たかを後から確かめやすくなります。
制度の決まりは、年度の途中でも変わります。厚生労働省のページでは、2026 年度だけでも 4 月 8 日、5 月 14 日、8 月 3 日に、決まりや書類の変更が案内されています。計画を出す前に、支給要領とパンフレットの日付を確かめ、分からない点は管轄の労働局に問い合わせます。
研修の計画と記録は当社が、届け出と費用の支払いはお客様が受け持ちます
| すること | 受け持つ人 |
|---|---|
| 研修の後にできるようになってほしい作業を挙げる | 御社(当社が伺って整理します) |
| 対象になるかどうかと、必要な手続きを確かめる | 社会保険労務士と当社 |
| 研修計画を作る | 当社 |
| 計画の届け出と、助成金の申請 | 御社。手続きを頼むなら社会保険労務士 |
| 研修を行う(複数回、1 回 10 名まで) | 当社 |
| 出席・内容・成果の記録を整える | 当社 |
| 研修の費用を全額払う | 御社 |
| AI のサービスを契約し、利用料を払う | 御社 |
これまで社長と数名で受けていただいた 3 時間の AI研修の時間割は、AI研修の 3 時間の時間割に書いています。研修の後に届いたご相談は、AI研修の後に届いた 2 件のご相談の記事にあります。



