当社は、私が AI に頼んだ仕事を、頼んだ言葉のまま 1 件ずつファイルに残しています。いつ、誰が、何を頼み、AI がどう受け取り、何ができたか。2026 年 3 月 24 日に始めました。4 月 4 日に記録が抜けていると気づいてからは、記録を作業より先に済ませる順番にしています。
言葉のまま残すのは、「何を頼んだか」と「AI がどう受け取ったか」を、あとから分けて確かめるためです。
1 件の記録に書くこと
記録は、頼みごと 1 件につき 1 つのファイルです。ファイル名は「日付_時刻_連番_内容」の形にしています。中身は次の項目です。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 日時 | 頼んだ日と時刻 |
| 頼んだ人・受けた人 | 社長から、どの担当の AI へ |
| 分類と優先度 | 開発・調査・資料づくりなど。急ぎかどうか |
| 関係する案件 | どのお客様、どの社内の仕事か |
| 頼んだ言葉 | 言い換えずに、そのまま写す |
| 対応の方針 | AI がどう受け取り、どう進めるか |
| できたもの | ファイルの置き場所 |
| 状態 | 実行中・完了 |
いちばん大事なのは「頼んだ言葉」の欄です。ここだけは、AI に要約させずに原文を写させます。
1 件の記録は、たとえば次のような形になります(中身は例です)。
# 頼みごとの記録: 来週の打ち合わせの空き時間を探す
日時: 2026-04-02 10:15
頼んだ人: 社長
受けた担当: 秘書の役の AI
分類: 予定の調整 / 優先度: 通常
頼んだ言葉(原文):
来週、1 時間空いているところを 3 つ出して
対応の方針:
来週の月曜から金曜の 9 時〜18 時で、60 分以上の空きを予定表から探し、候補を 3 つ報告する。予定は登録しない。
できたもの: 候補 3 つを返答で報告
状態: 完了
頼んだ言葉は短く、前提が省かれています。「来週」「1 時間」をどう受け取ったかは、対応の方針の欄に書かれます。並べて読むと、受け取り方が合っていたかを確かめられます。
頼んだ言葉のまま残す理由
人に仕事を頼むときも同じですが、頼んだ言葉と、受け取った側の理解は、少しずつずれます。AI の場合は、ずれた理解のまま作業がどんどん進みます。
頼んだ言葉(原文)
- 社長が実際に言った言葉
- 短く、前提が省かれていることが多い
- あとで意図を確かめるときの基準
対応の方針(AI の解釈)
- AI が言葉をどう受け取ったか
- 範囲や手順が足されている
- ずれがあれば、ここで見つかる
2 つを並べて残しておくと、仕上がりが意図と違ったときに、どこでずれたかが分かります。頼み方が足りなかったのか、AI の受け取り方がずれたのか、です。次に同じような仕事を頼むときの見本にもなります。
記録のファイルは、ほかの仕事のファイルと一緒に Git に置き、頼みごと 1 件の作業が終わるたびに記録します(コミット)。こうすると、頼んだ言葉と、そのとき実際に変わったファイルを、同じ履歴でたどれます。
記録が役に立つのは、3 つの場面です
| 場面 | 記録があると分かること |
|---|---|
| 仕上がりが意図と違ったとき | 頼み方が足りなかったのか、受け取り方がずれたのか |
| 似た頼みごとをもう一度するとき | 前回うまくいった頼み方と、そのときの対応 |
| 別の人や別の AI に引き継ぐとき | どこまで頼み、どこまで終わっているか |
3 つ目は、人が休んだときや、頼みごとが何日もかかるときに効きます。記録の状態の欄を見れば、終わっていない頼みごとがすぐに分かります。
4 月 4 日、記録が抜けていました
記録は、3 月 24 日から始めていました。ところが 4 月 4 日、私が確かめると、頼んだ仕事の記録が作られていませんでした。決まりは書いてあったのに、記録が後回しになっていたのです。私はその場で「記録してない」と指摘しました。
その日に決め直したのは、順番です。
- 言葉を受ける頼まれた内容を読み、分からない点があれば先に聞く
- 記録する頼んだ言葉をそのまま写した記録のファイルを作る
- 作業する記録を作ってから、作業に取りかかる
- 状態を直す終わったら、記録の状態を完了にし、できたものの場所を書く
どんなに急ぎの頼みごとでも、記録が先です。作業が終わるたびに「記録したか」を確かめる項目も足しました。後でまとめて書くと、頼んだ言葉を正確に写せなくなるからです。
社長からの指摘そのものも、別のファイルに残しています。何を指摘されたか、なぜか、次からどうするかの 3 つを書き、AI が作業の前に読むようにしています。同じ指摘を 2 度受けないためです。
社内で始めるなら、4 つの項目からで足ります
記録の仕組みは、大げさなものでなくてかまいません。
- 日時
- 頼んだ人
- 頼んだ言葉(言い換えない)
- できたものの置き場所
共有フォルダのテキストファイルでも、表計算の 1 行でも始められます。社員が AI に頼んだ仕事も同じ形で残しておくと、うまくいった頼み方を社内で見比べられます。AI がした作業を人が確かめてから外に出す、という当社の進め方は、記録があってはじめて回ります。外への送信とデータの削除を人が承認する決まり(Human-in-the-Loop)も、誰が何を承認したかが記録に残っていることが前提です。
社内で AI を使い始めるとき、何を記録し、どこに置くかを決めるところから、AI伴走支援でお手伝いしています。AI に読ませる決まりのファイルについては、用語集の CLAUDE.md にまとめました。



