総務省の「令和 7 年版 情報通信白書」(2025 年 7 月)によると、会社として生成 AI の活用方針を「明確に定めていない」と答えた割合は、中小企業で 47.6% でした。大企業は 25.8% です。中小企業の約半分は、使うか使わないか、どこまで使うかを、会社として決めていないことになります。
同じ調査では、導入の懸念の 1 位が「効果的な活用方法がわからない」でした。使い方が分からないことと、方針が決まっていないことが、同じ調査の中に並んで出ています。会社の方針が無いと、社員は何に使ってよいかを自分で判断することになります。
数字はすべて、白書の第Ⅰ部第 1 章第 2 節「AI の爆発的な進展の動向」の図表から取り、図表の番号を添えました。
活用方針を決めていない会社は、中小企業で約半分
白書は、日本・米国・ドイツ・中国の会社で働く人に、所属する会社の生成 AI の活用方針を尋ねています。日本では「積極的に活用する方針」と「活用する領域を限定して利用する方針」を合わせて 49.7% で、前の年度の調査の 42.7% から増えました(図表Ⅰ-1-2-12)。
日本の会社を規模で分けた数字が、次の表です(図表Ⅰ-1-2-13)。
| 活用方針 | 大企業 | 中小企業 |
|---|---|---|
| 積極的に活用する方針である | 26.1% | 17.5% |
| 活用する領域を限定して利用する方針である | 29.6% | 16.8% |
| 利用を禁止している | 5.4% | 1.4% |
| 方針を明確に定めていない | 25.8% | 47.6% |
| わからない | 13.2% | 16.8% |
目を引くのは、「利用を禁止している」が中小企業で 1.4% しかないことです。禁止している会社が多いのではなく、方針を決めていない会社が多いということです。社員が個人で AI を使っていても、会社はそれを知らない状態になりやすい数字です。会社が把握しないまま使われている状態は、シャドー AI と呼ばれます。
国別の内訳は次のとおりです(図表Ⅰ-1-2-12)。
| 活用方針 | 日本 | 米国 | ドイツ |
|---|---|---|---|
| 積極的に活用する方針である | 23.7% | 39.2% | 39.2% |
| 活用する領域を限定して利用する方針である | 26.0% | 45.6% | 37.2% |
| 利用を禁止している | 4.3% | 5.8% | 7.1% |
| 方針を明確に定めていない | 31.8% | 9.1% | 12.9% |
| わからない | 14.2% | 0.3% | 3.6% |
中国は、積極的に活用する方針が 48.5%、領域を限定する方針が 44.3% でした。米国とドイツは、方針を決めていない割合が 1 割前後にとどまります。日本との差は、使うか使わないかよりも、決めているかどうかに表れています。
業務で使っている人の数字と、使われている業務
何らかの業務で生成 AI を使っていると答えた割合は、日本で 55.2% でした。米国 90.6%、ドイツ 90.3%、中国 95.8% と比べると、低い水準です(図表Ⅰ-1-2-14)。
ただし、この数字には読み方の注意があります。白書の注によると、所属する会社の AI の活用方針を知っている人に尋ねた答えをもとにした推計です。方針を知らない人の会社は入っていません。
個別の業務では、「メールや議事録、資料作成等の補助」に使っている割合が、日本で 47.3% でした。会社で生成 AI が最初に使われる場面は、文章を書く仕事の下書きだと読めます。
導入の懸念と、期待する効果
- 効果的な活用方法がわからない
- 30.1%
- 社内情報の漏洩などのセキュリティリスクがある
- 27.6%
- ランニングコストが掛かる
- 24.9%
- 初期コストが掛かる
- 22.1%
出所: 総務省「令和 7 年版 情報通信白書」図表Ⅰ-1-2-15
懸念の 1 位と 2 位は、使い方と情報の扱いです。どちらも、お金をかける前に社内で決められることです。費用の懸念は 3 位と 4 位に来ています。
5 位以下も含めた日本の答えは次のとおりです。
| 懸念 | 日本 |
|---|---|
| 効果的な活用方法がわからない | 30.1% |
| 社内情報の漏洩などのセキュリティリスクがある | 27.6% |
| ランニングコストが掛かる | 24.9% |
| 初期コストが掛かる | 22.1% |
| 著作権等の権利を侵害する可能性がある | 19.8% |
| 出力結果の精度に問題がある | 18.4% |
| 懸念事項はない | 14.4% |
| 出力結果に倫理上不適切な内容や偏見が含まれる可能性がある | 12.6% |
出力の精度を心配する答えは 18.4% でした。AI の答えには事実と違うものが混じるので、外に出す前に人が確かめる手順(ファクトチェック)を、使い始めるときから組み込んでおきます。
生成 AI を使うことで自社に起きる影響(図表Ⅰ-1-2-16)では、日本は「業務効率化や人員不足の解消につながる」が 32.8% で最も多く、次が「ビジネスの拡大や新たな顧客獲得につながる」22.7% でした。一方で「特に影響はない」も 29.5% あります。3 割の人は、使っても自社は変わらないと見ていることになります。
| 自社への影響(日本) | 割合 |
|---|---|
| 業務効率化や人員不足の解消につながる | 32.8% |
| 特に影響はない | 29.5% |
| ビジネスの拡大や新たな顧客獲得につながる | 22.7% |
| 斬新なアイデアや新たなイノベーションがうまれる | 22.5% |
| 社内情報の漏洩などのセキュリティリスクが拡大する | 21.0% |
| 著作権等の権利を侵害する可能性が拡大する | 14.2% |
| 活用しないと企業としての競争力が失われる | 11.8% |
| 人材育成の方針を見直す必要がある | 11.3% |
米国では「ビジネスの拡大や新たな顧客獲得につながる」が 50.2% と最も多く、日本とは期待の向きが違います。日本の会社は、まず人手の足りなさを埋める道具として生成 AI を見ている、と読めます。
進んでいること
- 活用方針を決めた会社は 49.7% に増えた(前の年度は 42.7%)
- 業務で使っている人の答えは 55.2%
- 使い道はメール・議事録・資料作成の補助が中心(47.3%)
止まっていること
- 中小企業の 47.6% が方針を決めていない
- 懸念の 1 位は効果的な活用方法がわからない(30.1%)
- 特に影響はないと見る人が 29.5%
方針は、白書の選択肢の 3 つから選ぶと決めやすくなります
白書の選択肢は、そのまま会社の方針の候補になります。「積極的に活用する」「領域を限定して利用する」「利用を禁止する」の 3 つです。まず、このどれにするかを社長が 1 行で決め、社員に伝えます。「領域を限定する」なら、どの仕事に使ってよいかも一緒に書きます。
当社が選んでいるのは、「領域を限定して利用する」に近い形です。社内の多くの作業に AI を使いますが、外への送信とデータの削除は、人が承認してから行う決まりにしています。この決まりは、AI が作業を始めるたびに読み込むファイルに書いてあります。
方針を決めたら、次はその下の決まりです。使ってよい AI、入れない情報、出てきたものを誰が確かめるかを、A4 1 枚に書きます。書き方は社内の AI の使い方の決まりを A4 1 枚にまとめる記事にまとめました。懸念の 1 位の「効果的な活用方法がわからない」には、最初に任せる作業を 1 つに絞ることで答えます(AI に任せる仕事を毎月 1 つずつ増やす記事)。
方針と最初の使い方を社員と一緒にそろえたい場合は、AI の基礎とセキュリティの基礎を社員の方と一緒に聞いていただく AI基礎研修があります。



