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コラム

AI に Excel の集計をさせる前に、表の作りと揺れを調べる

この記事の要点

AI に表を集計させる前に、表の作りを読み取り専用で調べ、列ごとにどんな値が入っているかを書き出します。全角と半角や空白の違いは機械でそろえてよく、意味の近い答えをまとめるかは人が決めます。そろえ方の一覧は Excel の中に置き、数式から参照させました。氏名の空白をそろえると、結び付けられる回答は 3 割ほど増えました。

「勝手に集約せず入力されたデータの表記揺れを吸収しつつグラフ化して欲しい」。2026 年 4 月 19 日、研修のアンケートの集計表について、私は AI にこう頼みました。AI(Claude)に表計算の集計を任せるとき、いちばん時間を使ったのは計算そのものではありません。表がどう作られていて、同じ答えが何通りの書き方で入っているかを、計算の前に調べることでした。

この集計は、管理職向けの研修を行う会社様から頼まれたものです。研修の前と後に取ったアンケートの回答が、1 冊の Excel に入っていました。この記事では、AI に表を集計させる前に調べたことと、見つかった揺れの扱い、前の集計と数が合わなかったときの決め方を書きます。

最初に、表の作りを読み取り専用で調べます

最初の日(4 月 13 日)は、AI に原本を変えさせず、作りだけを調べさせました。原本の Excel は 42 枚のシートでできていて、集計に使うのはそのうち 4 枚でした。4 枚とも見出しは 1 行目、回答は 2 行目からで、左の 4 列(回答の日時・メールアドレス・所属・氏名)は共通です。2 回目の調査では、設問の文が「研修を受ける前と比べて」で始まる形に変わっていて、見出しの文字は 1 回目と一致しません。並び順は同じだったので、数式は見出しの文字に頼らず、列の位置で原本を参照する形にしました。

原本の 4 枚は、集計のファイルの中にそのまま写しています。作業はすべて写した側で行い、原本のファイルは触りません。

表を AI に集計させる前に調べること
  • シートの数と名前。集計に使うシートはどれか
  • 見出しの行と、回答が始まる行
  • 列ごとの値の種類(数・選択肢・複数選択・自由記述・日付)
  • 回ごとに設問の文が変わっていないか。変わっていれば、何で列を対応させるか
  • 列ごとに、何通りの書き方で値が入っているか
  • 複数選択の答えが、何で区切られているか
  • すでにある集計の値が、数式か、手で入れた数字か

最後の項目は、あとで効いてきます。すでにある集計が手で入れた数字なら、原本から数え直した値と食い違うことがあるからです。

同じ答えが、何通りもの書き方で入っていました

列ごとに値の一覧を出すと、選択肢のはずの列にも、書き方の違う値が並んでいました。1 回目の調査の「頻度」の列には、同じ間隔を表す答えが 15 通りの書き方で入っていました。「2ヵ月に1回」「1か月に1回」「3か月に1回」のように、カタカナの「ヵ」とひらがなの「か」、半角と全角の数字が混ざっていたのです。所要時間の列には、分の数字の中に「初実施」という言葉も入っていました。

AI が最初に作った区分の表にも、気になるところがありました。「今回から初めて実施します。」や「トラブルなど発生した時実施」といった答えまで、「3ヵ月以上」の区分に入っていたのです。区分の合計を回答の数にそろえるための作りで、数は合います。ただ、初めて実施した人と、3 か月に 1 回の人が、同じ区分で数えられることになります。

揺れには、機械的にそろえてよいものと、人が決めるものがあります。グラフにするときは、次のように分けました。

機械でそろえてよい揺れと、人が決める揺れ

機械でそろえてよい

  • 全角と半角の数字や記号(「1」と「1」)
  • 全角の括弧と半角の括弧
  • 前後の空白、全角の空白
  • 末尾の句点(「まだ行っていない。」の「。」)

人が決める(件数を付けた一覧で確かめる)

  • 「3ヵ月に1回」と「3ヶ月に1回」
  • 「月1」と「1か月に1回」
  • 「20分〜25分」と「約20分」
  • 「とても増えた」と「やや増えた」

「人が決める」の列は、まとめれば数は見やすくなります。ただ、私は「勝手に集約せず」と頼んでいたので、AI は文字の形が違うだけの「ヵ」と「ヶ」も、このときは別の答えとして残しました。判断に迷う揺れは、件数を付けた一覧にして私に見せ、まとめるかどうかは私が決める形にしています。

そろえ方の一覧は、Excel の中に置きます

揺れのそろえ方は、AI の作業の中だけで済ませず、Excel のシートに一覧として置きました。入力された書き方と、それを数える区分を 1 行ずつ並べた「正規化の辞書」のシートです。「頻度」の設問だけで 23 行になりました。集計のシートの数式は、この辞書を参照して数えます。

辞書を Excel に置くと、どの書き方をどの区分に数えたかを、あとから誰でも確かめられます。回答が増えて新しい書き方が出てきたら、辞書に 1 行を足せば、数式はそのまま使えます(辞書を参照する範囲は、行を足すときに広げます)。

ここで、AI の作業が 2 回やり直しになりました。1 回目は、AI がグラフの画像を先に作り、集計のシートでは値を数字のまま書き込んでいたことです。私は「関数を使ってやって、ほかのシートと形式を合わせて欲しい」と頼み直しました。既にあるシートが数式で作られていることを、作る前に確かめていれば防げました。2 回目は、辞書を参照する範囲が数行ずれていて、ある区分が 0 件になったことです。それからは、目で数えた行番号に頼らず、区分の名前で辞書の行を探して範囲を決める手順にしています。

複数選択の答えは、区切り方で数が変わります

複数選択の設問は、選んだ選択肢が 1 つのセルにカンマでつながって入っていました。選択肢の文の中にも読点があるため、「、」や「,」で単純に区切ると、1 つの選択肢が 2 つに割れます。たとえば(例)「2) 価格, 4) 担当者の対応(説明が早く、丁寧だった)」を読点でも区切ると、選択肢 4 が途中で切れてしまいます。

そこで、カンマの直後に「数字と閉じかっこ」が続く所だけで区切ることにしました。Excel の数式で数えるときも、選択肢の番号(「4)」)を探して数えます。

氏名の空白をそろえると、結び付けられる回答が 3 割ほど増えました

1 回目と 2 回目の回答を同じ人どうしで結び付ける集計は、氏名で対応を取っていました。最初は氏名が完全に一致するものだけを結び付けていましたが、姓と名の間の空白が、回によって違っていました。全角の空白、空白なし、半角の空白 2 つ、といった違いです。

4 月 15 日に、氏名をそろえる手順を次のように決め直しました。結び付けられた組は、3 割ほど増えています。

順番 そろえること
1 全角の空白を半角の空白にする
2 全角の英数字と記号を半角にする
3 「髙」を「高」にするなど、異体字を一覧で置き換える(このデータでは該当なし)
4 空白をすべて取り除く
5 前後の空白を取り除く

そろえたあと、同じ回に同じ名前が 2 行ある組も 2 つ出てきました。このときは先に出てくる行を採り、もう 1 行は集計から外して、そのことを記録に残しました。名前で記録をつなぐ作業は、用語集の名寄せにまとめています。

前の集計の値とは、セルごとに突き合わせます

原本から数式で数え直すと、前に手で入れてあった集計の値と、いくつかのセルで数が合いませんでした。AI には、合わないセルを 1 つずつ、前の値・数え直した値・原因の見立てを並べて報告させました。原因は 3 種類で、端数の丸め方の違い、原本では 0 件なのに 2 と入っていた値(入力の誤りとみられるもの)、手作業で数えたときに 1 つの選択肢が漏れていたもの、でした。

どちらの値を採るかは、AI ではなく私が決めました。原本から数式で数えた値を正とし、数式を前の資料に合わせて固定の数字に書き換えることはしない、という方針です。前に作った報告の資料の数字は、直す候補として一覧にしました。

数え直した値を人に回すときの書き方は、AI が書いたまとめを回す前に直したことの記事に、自由記述の分け方は自由記述を AI で分類する記事に書きました。全角と半角の違いは用語集の全角と半角に、値の比べ方は突き合わせにまとめています。集計の表を毎月作り直す作業を AI に任せたい場合は、AI伴走支援で、表の作りを調べるところから一緒に進めます。

よくあるご質問

書き方の揺れは、全部 AI にそろえさせてかまいませんか?
全角と半角、前後の空白、末尾の句点のような、意味の変わらない違いは任せてかまいません。「月1」と「1か月に1回」のように、まとめるかどうかで数が変わるものは、件数を付けた一覧にして人が決めます。
そろえ方の一覧を、Excel のシートに置くのはなぜですか?
どの書き方をどの区分に数えたかを、あとから誰でも確かめられるからです。回答が増えて新しい書き方が出たときも、一覧に 1 行を足せば、集計の数式は変えずに済みます。
前の集計と数が合わないときは、どちらの値を使えばよいですか?
合わないセルを 1 つずつ書き出し、原因を確かめてから決めます。当社のときは、端数の丸め方の違い、入力の誤りとみられる値、手作業の数え漏れが原因でした。原本から数え直した値を正とするかどうかは、集計の責任者が決めます。

この記事を書いた人

小野 隆士ドットシンク株式会社 代表取締役

システム開発会社の会社員、Web 制作の個人事業主、不動産営業、Web 制作会社の役員を経て、CRM 事業を軸にドットシンク株式会社を起業。自社の営業と事務の仕事に AI を使い、そのやり方を AI研修と AI伴走支援でお客様の会社に持ち込んでいます。デジタル庁 デジタル推進委員(2024 年 7 月任命)。

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