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コラム

中小企業白書 2026 の数字で見る、業務の見直しで最初に手を付ける場所

この記事の要点

2026 年版の中小企業白書では、紙や口頭が中心の「段階 1」の事業者が 15.4% でした。デジタルの道具に移りつつある「段階 2」は 57.3% です。設備投資の前に業務プロセスを見直した事業者は 71.1% で、見直しの中身でいちばん多いのは「業務フローの可視化・見直し」です。当社が 3〜4 月に行った見直しも、仕事の流れと呼び名を書き出すところから始めています。

2026 年 4 月 24 日、2026 年版の中小企業白書が閣議決定されました。この記事では、白書の中から業務の見える化にかかわる数字を、図の番号つきで読みます。デジタル化の段階、設備投資の前の業務プロセスの見直し、管理会計の取り組みの 3 つです。最後に、当社が 3〜4 月にお客様と社内で行った見直しと照らし合わせます。

数字は、白書に載っている図から写しました。図の調査は、どれも帝国データバンクの「令和7年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」です。

デジタル化の段階は「段階 2」が 57.3%、紙と口頭が中心の「段階 1」が 15.4% でした

デジタル化の取組段階(中小企業白書 2026 第1-1-31図)
段階 1
15.4% 紙や口頭による業務が中心
段階 2
57.3% デジタルツールを使う業務に移りつつある
段階 3
24.5% 業務の効率化やデータの分析に取り組んでいる
段階 4
2.8% ビジネスモデルの変革や競争力の強化に取り組んでいる

出所: 中小企業庁『2026 年版 中小企業白書』第1-1-31図(p.32)。回答した事業者は 12,215。

いちばん多いのは段階 2 で、6 割近くを占めます。道具は入ってきているものの、まだ業務の効率化やデータの分析には届いていない段階です。紙や口頭が中心の段階 1 も、15.4% あります。

段階 2 から段階 3 に進むには、道具を入れるだけでは足りません。入れた道具に、比べられる形でデータがたまっている必要があります。人によって書き方が違う、項目がそろっていない、といった状態では、データはあっても分析に使えません。

設備投資の前に業務プロセスを見直した事業者は 71.1% でした

白書は、成長に向けた設備投資をした事業者に、投資の前に何をしたかを聞いています(第2-2-6図)。業務プロセスの見直しに「取り組んだ」と答えた事業者は 71.1% でした。白書では、業務プロセスの見直しを「業務を効率化するために、現在の業務の状況を明らかにし、業務の改善策を検討・実行する一連の取組」としています。

見直したかどうかで、今の設備の稼働率を比べた図もあります(第2-2-8図)。

設備投資の前の業務プロセスの見直し 稼働率 75% 以上 25% 以上 75% 未満 25% 未満
取り組んだ(4,179 の事業者) 37.1% 41.3% 21.6%
取り組んでいない(1,573 の事業者) 31.6% 41.8% 26.6%

見直した事業者の方が、稼働率 75% 以上の割合が 5.5 ポイント高く、25% 未満の割合が 5.0 ポイント低くなっています。白書は「設備投資を実施する前に業務プロセス見直しに取り組むことが、設備稼働率の向上につながる可能性がある」と書いています。言い切ってはいません。見直した会社と見直さなかった会社を比べた数字で、見直したから上がったと確かめたものではないからです。

見直しの中身でいちばん多いのは「業務フローの可視化・見直し」でした

業務プロセスの見直しの具体的な内容(中小企業白書 2026 第2-2-9図)

稼働率 75% 以上の事業者(1,545)

  • 業務フローの可視化・見直し 57.6%
  • 従業員の再配置や業務分担の見直し 46.9%
  • 業務作業時間の把握 43.4%
  • 設備導入に伴うレイアウトや動線の見直し 41.1%
  • 不要・重複・属人化業務の洗い出し 28.9%

稼働率 25% 未満の事業者(896)

  • 業務フローの可視化・見直し 51.2%
  • 従業員の再配置や業務分担の見直し 39.3%
  • 業務作業時間の把握 36.7%
  • 設備導入に伴うレイアウトや動線の見直し 23.5%
  • 不要・重複・属人化業務の洗い出し 25.3%

出所: 中小企業庁『2026 年版 中小企業白書』第2-2-9図(p.90)。複数回答。業務プロセスの見直しに取り組んだ事業者のうち、稼働率が 75% 以上と 25% 未満の事業者の回答。

どちらの事業者でも、いちばん多いのは「業務フローの可視化・見直し」です。仕事がどの順番で、誰から誰へ流れているかを書き出すことが、見直しの入口になっています。稼働率の高い事業者は、ほとんどの項目で回答の割合が高く、とくに「レイアウトや動線の見直し」で差が大きく出ています。

「不要・重複・属人化業務の洗い出し」は、どちらでも 3 割に届きません。特定の人にしか分からない仕事(属人化)を洗い出すのは、流れを書き出すより手間がかかる作業です。

管理会計に取り組んでいる事業者は、約 6 割でした

白書では、決算書の作成とは別に、経営の意思決定のために原価管理や採算管理などに取り組むことを管理会計と呼んでいます(第2-2-40図)。

管理会計の取り組み 割合
大いに取り組んでいる 19.1%
ある程度取り組んでいる 42.5%
あまり取り組んでいない 20.4%
ほとんど取り組んでいない 18.1%

取り組んでいる事業者は合わせて 61.6% です。取り組みの有無で、2019 年から 2024 年の付加価値額の変化率(中央値)を比べた図もあります(第2-2-41図)。取り組んでいる事業者は 20.3%、取り組んでいない事業者は 16.4% でした。ここでも白書は「一概にはいえないが」と断っています。

白書の数字を読むときに気をつけていること

  • 調べた相手を確かめる。第2-2-6図・第2-2-8図・第2-2-9図は、成長に向けた設備投資をした事業者だけの回答です。中小企業全体の割合ではありません
  • 「取り組んだ」が何を足したものかを確かめる。白書の注では、「大いに取り組んだ」と「ある程度取り組んだ」を合わせて「取り組んだ」としています
  • 比べた数字を、効果と読み替えない。取り組んだ会社と取り組まなかった会社の違いには、取り組み以外の理由も入ります
  • 提案書や社内の資料に使うときは、図の番号とページを添える

当社が 3〜4 月に行った見直しも、流れと呼び名を書き出すところから始めました

白書の項目と、当社が 2026 年 3〜4 月にお客様と社内で行ったことを並べました。

白書の項目(第2-2-9図) 当社が行ったこと
業務フローの可視化・見直し 3 月 26 日、プレス加工の会社様で、紙の作業指示書が人から人へ渡る順番を書き出し、その順番のまま画面の一覧に分けた
業務作業時間の把握 同じ仕組みで、作業の報告に、使った設備・始めた時刻と終えた時刻・数量を入れる形にした
不要・重複・属人化業務の洗い出し 3 月 27 日、同じ会社様の指示書 133 件から工程の呼び名を抜き出すと 97 通りあり、17 の分類にまとめた
(社内)業務の状況を明らかにする 4 月 20 日、当社の社内と社外の案件 47 件を 1 枚の一覧にし、状態が分からない 15 件を「要確認」とした

どれも、新しい道具を入れる前の作業です。流れと呼び名と状態がそろって、はじめて画面に並ぶ数字が比べられるものになります。段階 2 から段階 3 に進むときに、避けて通れない作業です。社内の案件の一覧の話は47 件の案件を 1 枚の一覧にした記事に、手順を書き出す話は休日の登録の手順書の記事に書きました。

白書の項目を自社に当てはめる

業務の見直しを始める前に確かめること
  • 受注・作業・請求など、業務ごとに今どの段階かを当てはめた
  • 仕事がどの順番で、誰から誰へ渡るかを書き出した
  • 作業にかかっている時間を、記録から出せるかを確かめた
  • 同じものに違う呼び名が付いていないかを確かめた
  • 特定の人にしか分からない仕事を書き出した
  • 原価や採算を、決算書とは別に見ているかを確かめた

当社の経営ダッシュボードは、現場の方がスマートフォンのチャットで入力した数字を、1 画面に集めるクラウドサービスです。業務の流れの書き出しから AI に任せる作業を決める進め方は、AI伴走支援のページにあります。DXや業務プロセスの見直しの言葉の意味は、用語集にまとめています。

よくあるご質問

白書の数字は、どんな会社を調べたものですか?
この記事で取り上げた図は、帝国データバンクの「令和7年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」の結果です。デジタル化の段階と管理会計の図は、12,215 の事業者の回答です。業務プロセスの見直しの図は、成長に向けた設備投資をした 6,926 の事業者の回答です。
業務プロセスを見直せば、設備の稼働率は上がりますか?
白書も「一概にはいえないが」と断ったうえで、つながる可能性があると書いています。見直した事業者の方が稼働率の高い割合が多い、という比べ方で、見直したから上がったと確かめたものではありません。
自社がどの段階かは、どう判断すればよいですか?
白書の定義では、段階 1 は紙や口頭が中心の状態です。段階 2 はデジタルの道具を使う業務に移りつつある状態、段階 3 はデジタル化で業務の効率化やデータの分析に取り組んでいる状態です。業務ごとに違うことも多いので、受注・作業・請求などの業務ごとに当てはめてみると分かりやすくなります。
管理会計とは、決算書とは違うのですか?
白書では、決算書の作成とは別に、経営の意思決定のために原価管理や採算管理などに取り組むことを管理会計と呼んでいます。

出典・参考にした資料

  1. 中小企業庁「中小企業白書」(2026 年版の閣議決定 2026 年 4 月 24 日)
  2. 中小企業庁「2026 年版 中小企業白書(HTML 版)」

この記事を書いた人

小野 隆士ドットシンク株式会社 代表取締役

システム開発会社の会社員、Web 制作の個人事業主、不動産営業、Web 制作会社の役員を経て、CRM 事業を軸にドットシンク株式会社を起業。自社の営業と事務の仕事に AI を使い、そのやり方を AI研修と AI伴走支援でお客様の会社に持ち込んでいます。デジタル庁 デジタル推進委員(2024 年 7 月任命)。

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