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コラム

紙の作業指示書をタブレットに移した 3 週間で、現場から出た要望

この記事の要点

紙の作業指示書を画面に移したとき、現場から出た要望の多くは、操作の質問ではありませんでした。紙では書かずに済んでいた「待ち」の状態と、ノウハウの置き場所の話です。材料があっても金型が無いと始められないため、「金型待ち」を足しています。紙と並行して 3 週間ほど使い、直す項目を 13 にまとめました。発注は最初は移していません。

紙の作業指示書をタブレットに移したとき、最初の説明会で現場から出た要望の多くは、画面の操作の質問ではありませんでした。紙では書かずに済んでいた「待ち」の状態と、図面や金型に手書きしていたノウハウの置き場所の話です。

2026 年 3 月 26 日、プレス加工と金型を手がける会社様で、当社が作った作業指示の仕組みを現場の皆さんに説明しました。その場で「金型待ち」の状態を足すと決め、紙と並行して使っていただいたあとの 4 月 14 日に、直す項目を 13 にまとめています。

紙の作業指示書の流れを、上流から順に一覧に分けて画面にしました

このお客様では、作業指示書・作業日報・材料の手配を紙で回していました。このお客様では、全従業員に iPad が配られていました。仕組みは、お客様が社内で使っていた Lark(チャットと表をまとめて使える業務アプリ)の上に作り、現場はタブレットで見る形にしています。

画面は、紙が人の手から手へ渡っていた順番のまま、一覧に分けました。

作業指示が画面の上で流れる順番(説明会の時点)
  1. 生産指示数の入力事務所で、作る品番と数を入れる
  2. 材料手配の振り分け材料の手配が要るものと、すぐ現場に回せるものに分ける
  3. 材料手配待ち材料が届くまで、ここに並ぶ
  4. 作業者割り当て待ちまだ誰も持っていない作業が並ぶ
  5. 作業中「私が作業します」を押した人の一覧に移る
  6. 検品待ち・在庫計上検品で良品の数に直し、在庫に計上する

2026 年 3 月 26 日の説明会で見せた形です。このあと材料手配待ちの次に「金型待ち」を足しました。

現場の方は「私が作業します」を押して、作業を自分の一覧に移します

紙のときは、作業指示書を手に取って持っていけば、それが「この作業は自分がやる」という合図でした。画面では、「作業者割り当て待ち」の一覧から作業を選び、「私が作業します」を押します。押した作業は、その人の「作業中」の一覧に移ります。紙を持っていく動きを、ボタン 1 つに置き換えました。

図面が登録されている品番なら、作業中の画面からそのまま図面を開けます。途中で手を止めるときは「作業報告継続」、終えたら「作業報告完了」を押し、使った設備・始めた時刻と終えた時刻・数量を入れます。この記録がたまると、朝礼で「誰がどの作業を持っているか」「遅れているのはどれか」を、画面を見ながら話せます。

ヘルメットをかぶった作業着の人が、書類を持って指し棒で説明している絵

曲げのあとにプレス、のように、工程ごとに担当が替わる品番もあります。そのときは一度「作業者割り当て待ち」に戻し、次の担当の方が「私が作業します」を押して引き継ぎます。作業が誰の手元にあるかというステータスは、いつも 1 つに決まるようにしています。

説明会で出た要望は、紙では書かずに済んでいた「待ち」とノウハウの話でした

説明会は朝 9 時からの 2 時間でした。現場から出た要望と、その場でお答えしたことは次の 9 つです。

現場から出た要望 その場でお答えしたこと
1 つの作業を 2 人以上でしたときの扱い 細かく分けず、最後の数量と不良の数を結果として入れる
寸法を測った結果を残したい 今の画面には無い。品質の記録として、別に考える
加工の条件やコツを残したい(今は図面や金型に手書き) 品番・図面・工程に結び付けて残せるよう、最優先で考える
材料があっても、金型が無いと作業を始められない 「金型待ち」の状態を足す
金型がどこにあるかを、品番から引けるようにしたい 品番の一覧と保管場所の一覧を整え、担当の方が自分で直せるようにする
工程の選択肢を増やしたい 名前を増やしすぎず、番号で管理する。1 つの品番で 10 工程ほどまで
製品の写真を残したい 送れるようにはできるが、最初は機能を増やさない
発注をどうするか 発注先や必要な量の出し方がまだ人の頭の中にあるので、当面は社長が中心に行う
金型ごとのショット数と手入れの時期を管理したい まずメモと一覧を整え、そこから集計につなげる

9 つのうち 4 つは金型の話です。紙の作業指示書には金型の欄が無く、金型の置き場所や手入れの時期は、担当の方の整理と経験で回っていました。加工の条件は、図面や金型そのものに手書きされていて、消える・残らない・ほかの人と共有しにくいという声がありました。

工程の名前については、その場で「増やしすぎない」と決めています。品番ごとに工程の呼び名がばらばらだと、あとで数えられないからです。翌日に、指示書から工程の呼び名を抜き出して分類しました。その手順は工程の呼び名を 17 の分類にまとめた記事に書いています。品番や工程のような基本の一覧をマスターデータと呼びます。

「金型待ち」を足したのは、作業を始められない時間が画面に出ていなかったからです

説明会の時点の流れでは、材料が届けば「作業者割り当て待ち」に並びます。ところが、プレスは材料があっても金型が無ければ始められません。金型を取りに行く手間があり、別の拠点まで取りに行くこともあります。

画面の上では始められる状態なのに、実際には始められない。この食い違いがあると、「作業者割り当て待ち」に並んでいる作業に本当に手を付けられるのか、一覧を見ても分からなくなります。そこで、材料手配待ちと作業者割り当て待ちの間に「金型待ち」を置きました。

4 月 14 日の見直しで、ここはもう一段細かくなりました。材料を手配したら入荷の予定日を入れて「金型待ち」に移し、作業の一覧の左側に入荷の予定日を出す形です。入荷までは基本的に 8 日ほど、と担当の方から伺っています。

紙と並行して使った後に、直す項目を 13 にまとめました

4 月 14 日に、担当の方 3 名からお話を伺い、直すことを 13 項目にまとめました。種類で分けると次のとおりです。

種類 出たこと
数字が合わない・消えた 作業の手配が消えて、翌日に戻っていたことがある。在庫の計上に、完了の数が反映されていない
流れの順番 作業のあとに「作業後一覧」を置き、そこから在庫の計上か検品に分ける
知らせ 作業後一覧に入ったら、事務の担当の方にチャットで知らせる。外注に出すものも同じ
図面 品番が同じなのに図面が開けないものがある。図面があるかを確かめるボタンを付ける
担当 自分以外の人も作業者に入れたい。誰がした作業かを後から追いたい
材料 入荷の予定日を入れたい

1 行目の 2 つは、使い方の要望ではなく、画面の数字が実物と合わないという話です。こうした食い違いが続くと、現場の方は紙の方を信じるようになり、画面に入れる理由がなくなります。5 月の打ち合わせでは、入れた直後は入っている完了の数が、時間をおいて 0 に書き換わる不具合が見つかり、調べる項目に入りました。数字の食い違いは、1 回の見直しで片付くものではありません。同じ打ち合わせでは、タブレットの画面に図面を開くボタンが出ていなかったので、ボタンを足しています。

最初は移さなかったのは、発注と写真と寸法の記録です

全部を一度に画面へ移すと、現場の方が覚えることも、数字が合わないときに調べる場所も増えます。このお客様では、最初は次の 3 つを移していません。

  • 発注: 発注先・材料・必要な量の出し方が、まだ人の頭の中にありました。全員が同じように発注できる状態ではないため、当面は社長が中心に行い、発注の履歴がたまってからデータにする順番にしました
  • 写真: 送れるようにはできますが、最初の形に入れると画面が増えるので、後に回しました
  • 寸法の記録: 品質の記録として、検査のやり方と一緒に考えることにしました。測った値を品番と工程に結び付けて残せば、品質の記録にもそのまま使えます

移さないと決めるのは、作業指示に限りません。機械の製造と据え付けを手がける別のお客様(従業員 85 名ほど)の例もあります。お中元とお歳暮の送り先の管理は、顧客管理のシステムに入れず、Excel のまま残すと決めました。個人か会社か、金額の段階、送り方と項目が込み入っているうえ、件数は 100 件ほどで、システムに入れるとかえって手間が増えるからです。

紙から画面に移す前に、決めておくこと

作業指示を紙から画面に移す前に確かめること
  • 紙が誰から誰へ、どの順番で渡っているかを書き出した
  • 材料・金型・検品など、作業を始められない「待ち」の状態が抜けていない
  • 工程の呼び名を増やしすぎないよう、番号か分類で選ぶ形にした
  • 紙と並行して使う期間と、見直しの日を決めた
  • 画面から開きたい図面などの資料が、品番ごとに登録されている
  • 最初は移さない業務を決め、現場に伝えた
  • 数字が合わないと言われたときに、誰が調べるかを決めた

当社の経営ダッシュボードでは、作業の区切りに、スマートフォンのチャットで工程と数量を入れる形を用意しています。金属加工の工場のモデルケースは想定の例です。今の紙の流れのどこから画面に移すかは、30 分の無料相談で、御社の作業指示書を見ながら一緒に決めます。

よくあるご質問

紙の作業指示書は、画面に移したらすぐにやめた方がよいですか?
このお客様では、紙と並行して使い始め、説明会の 19 日後に見直しの日を置きました。画面の数字が実物と合うと確かめられるまでは、紙を残しておく方が安全です。
タブレットは全員分が要りますか?
このお客様では、全従業員に iPad が配られていました。少なくとも、作業する場所で作業の一覧と図面を開ける端末が要ります。
1 つの作業を 2 人以上でしたときは、どう記録しますか?
人ごとに細かく分けず、最後の数量と不良の数を結果として入れる形にしました。誰が作業したかを後から追いたいという声は見直しの日に出たため、直す項目に入れています。
工程ごとに担当が替わる品番は、どう引き継ぎますか?
前の工程の担当が作業を一度「作業者割り当て待ち」に戻し、次の担当が「私が作業します」を押して引き継ぎます。紙の指示書を手渡していた動きを、画面の上で置き換えた形です。

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この記事を書いた人

小野 隆士ドットシンク株式会社 代表取締役

システム開発会社の会社員、Web 制作の個人事業主、不動産営業、Web 制作会社の役員を経て、CRM 事業を軸にドットシンク株式会社を起業。自社の営業と事務の仕事に AI を使い、そのやり方を AI研修と AI伴走支援でお客様の会社に持ち込んでいます。デジタル庁 デジタル推進委員(2024 年 7 月任命)。

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