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コラム

稼働率・遅れ・納期遵守率の計算式を、画面より先に決めた理由

この記事の要点

同じ「稼働率」でも、式が違えば出る数字が変わります。経営ダッシュボードの進行管理では、稼働率を「記録した作業時間÷(日数×8 時間×人数)」と決めました。遅れは「期限を過ぎて終わっていない件数」、納期遵守率は「期限までに納めた割合」です。計画の工数が入っていなくても出る式で、休みの日まで 8 時間に数える弱さがあります。

画面に稼働率が出ても、それが何を何で割った数字かを誰も説明できなければ、会議では使えません。経営ダッシュボードの進行管理は、案件と作業の進み具合を集める商品です。2026 年 5 月に、この商品で出す 3 つの数字の計算式を、1 行ずつ書いて決めました。稼働率・遅れの件数・納期遵守率です。

先に式を決めたのは、同じ名前の数字でも、式が違えば出る値が変わるからです。稼働率だけでも、少なくとも 3 通りの式が考えられました。どれを選ぶかで、計画の工数が入っていない現場で数字が出るかどうかまで変わります。経営ダッシュボードは当社が開発したクラウドサービスで、社外の会社に導入した事例はまだありません。この記事は、設計の段階で決めたことの記録です。

3 つの数字の計算式を、それぞれ 1 行で書きました

数字 計算式 この式にした理由
稼働率 期間内に記録した作業時間の合計 ÷(期間の日数 × 8 時間 × 期間内に作業を記録した人数) 作業ごとの計画の工数が入っていなくても、作業の記録があれば出る
遅れの件数 期限の日を過ぎていて、状態が「完了」でも「取り消し」でもない件数 遅れたか、遅れていないかの 2 つで判断できる
納期遵守率 期間内に期限がある完了した案件のうち、納めた日が期限の日以前の件数 ÷ その案件の件数 × 100(小数第 1 位まで) 終わった案件だけを比べるので、まだ作業中の案件に左右されない

式を 1 行で書くと、何を数えていないかもはっきりします。稼働率には休みの日の考えが入っていませんし、納期遵守率には、期限を過ぎてまだ終わっていない案件が入っていません。この 2 つは、あとの節で説明します。

数字を集める道具をダッシュボード、目標の手前で日々追う数字を KPI と呼びます。KPI は、式まで決めてはじめて、毎週同じものさしで比べられます。

稼働率は、計画の工数ではなく、記録した作業時間から出す式にしました

稼働率の式は、次の 3 つから選びました。

稼働率の式として比べた 3 つの案

作業ごとの実績 ÷ 計画

  • 作業ごとに、実際の時間を計画の時間で割る
  • 作業単位で細かく見られる
  • 計画の時間が入っていない作業は計算に入らない
  • 計画を入れる習慣が無いと、画面に「データ不足」が並ぶ

記録した時間 ÷ 期待する時間(採用)

  • 期間内に記録した作業時間を、日数 × 8 時間 × 人数で割る
  • 作業の記録さえあれば、いつでも出る
  • 計画の入力に頼らない
  • 休みの日も 8 時間に数えるので、低めに出る

始めた作業 ÷ 全部の作業

  • 手を付けた作業の数を、全部の作業の数で割る
  • 計算は簡単
  • 人がどれだけ働いたかではなく、進み具合の数字になる
  • 稼働率という名前と意味が合わない

2026 年 5 月の設計で比べた内容です。

最初に考えたのは、作業ごとに「実際にかかった時間 ÷ 計画の時間」を出して平均する式でした。作業ごとに細かく見られる、よくある式です。ただ、製造の現場では、作業ごとに計画の時間(工数)を入れる習慣がまだ無いことが多く、計画が空の作業は計算に入りません。使い始めの画面に「データ不足」ばかり並べば、見る人は画面を開かなくなります。

そこで、計画の入力に頼らず、作業の記録だけで出せる式を選びました。現場の方が日々の作業時間を記録していれば、稼働率はいつでも出ます。経営ダッシュボードは、現場の方の入力をスマートフォンのチャットで受け、項目をできるだけ少なくする作りです。入れる項目を増やさずに出せる式であることも、選んだ理由の 1 つです。

選んだ式の弱いところは、休みの日まで 8 時間に数えることです

期待する時間は「期間の日数 × 8 時間 × 人数」です。この式は、土日や祝日、有給休暇、短い時間の勤務を考えません。休みの日も、1 人 8 時間の作業があるものとして数えます。

例えば、5 人が平日の 5 日間に毎日 8 時間ずつ作業を記録したとします。記録した時間は 200 時間です。この週を土日を含む 7 日で計算すると、期待する時間は 7 × 8 × 5 で 280 時間になり、稼働率はおよそ 71% と出ます。全員が毎日 8 時間働いていても、100% にはなりません。逆に、残業の多い週は 100% を超えます。数字は記録ではなく、式の動きを示すための例です。

この弱さは承知のうえで選びました。使う方向けの説明資料に式をそのまま書き、「休みの日も 8 時間に数えている」と分かるようにすることにしています。次の段階で考える項目には、次の 4 つを挙げました。

  • 営業日のカレンダーを使い、休みの日を外す
  • 作業ごとに、計画の工数と実際の工数を並べて見る(予実管理)
  • 7 日と 30 日の平均を出し、日ごとの上下をならす
  • 遅れを「遅れそう」と「遅れた」の 2 段に分ける

遅れは「期限を過ぎて、終わっていない件数」の 1 つだけにしました

遅れの件数は、期限の日を過ぎていて、状態が「完了」でも「取り消し」でもないものを数えます。期限の日の当日は、まだ遅れに数えません。

「遅れそう」と「遅れた」の 2 段に分ける案も考えましたが、採りませんでした。2 段にすると、「遅れそう」をどう判断するかという、もう 1 つの式が要ります。まず、遅れたか、遅れていないかの 2 つで十分に判断できると考えました。

取り消した案件を外したのは、期限が過ぎたまま「取り消し」になった案件を遅れに数えると、いつまでも件数が減らないからです。

納期遵守率は、終わった案件だけを分母にしています

納期遵守率の分母は「期間内に期限がある、完了した案件」です。分子は、そのうち納めた日が期限の日以前のものです。割った値に 100 を掛け、小数第 1 位までで出します。

この式には、読み方の注意が 2 つあります。

1 つ目は、期限を過ぎてまだ終わっていない案件が、分母に入らないことです。遅れたまま作業が続いている案件が多くても、納期遵守率は下がりません。納期遵守率は、遅れの件数と並べて見るものです。

2 つ目は、分母が 0 件のときです。期間内に期限がある完了した案件が 1 件も無ければ、式では 0% と出します。0% は「全部遅れた」とも読めるので、画面に出すときに件数を添えるかどうかは、式と一緒に決めておく点です。

式を決めるときに確かめたこと

数字の計算式を決めるときに確かめること
  • 分母に何を入れ、何を入れないかを 1 行で書いた
  • 計画や記録が空のときに、計算から外すのか、0 として数えるのかを決めた
  • 休みの日や短い勤務の扱いを決めた
  • 取り消し・保留の案件の扱いを決めた
  • 期限の当日を、遅れに入れるかどうかを決めた
  • 割合を何桁で丸めるか、どの丸め方にするかを決めた
  • 前の週と比べるときの期間の区切りを決めた
  • 分母が 0 件のときの出し方を決めた

前の週と比べるときは、7 日前から今日までと、14 日前から 7 日前までを比べています。丸め方は、表計算ソフトとプログラムで結果がずれることがあります。Excel の ROUND 関数は 5 を切り上げますが、プログラムの言語によっては、ちょうど 5 のときに偶数の側へ丸めるものがあります。画面の数字と Excel で出した数字を突き合わせる会社では、どちらの丸め方にそろえるかも決めておきます。

計算式は、数字を見る人向けの説明にもそのまま書きます

式は設計の書類にだけ残すものではありません。使う方向けの説明資料にも、稼働率は「期間内の作業時間の合計 ÷(日数 × 8 時間 × 人数)」と書くことにしました。数字を見た社長が「なぜ低いのか」と思ったとき、式が手元にあれば、休みの日を数えているからだと自分で気づけます。

稼働率と納期遵守率の一般的な意味は、用語集にまとめています。工場で使う場合の想定は金属加工の工場のモデルケースに、営業の数字の想定は法人向けサービス会社のモデルケースにあります。経営ダッシュボードの導入では、どの数字を集めて、どう計算するかを最初に伺います。

よくあるご質問

稼働率が 100% を超えることはありますか?
この式では超えることがあります。1 日 8 時間より多く作業を記録した日があれば、期待する時間より記録した時間の方が長くなるからです。残業の多い週は 100% を超えて表示されます。
土日や祝日、有給休暇の日はどう数えていますか?
今の式では、休みの日も 1 人 8 時間の作業があるものとして数えるため、休みを含む期間の稼働率は低めに出ます。営業日のカレンダーを使って休みの日を外す形は、次の段階で考える項目にしています。
計画の工数と実際の工数を比べる数字は出ますか?
今の稼働率は、記録した作業時間だけで出す式です。作業ごとに計画の工数と実際の工数を比べる数字は、計画を入れる習慣が現場に根づいてから足す項目にしています。
自社で使う数字の計算式も、一緒に決めてもらえますか?
経営ダッシュボードの導入では、最初にどの数字を集め、どう計算するかを御社と決めます。どの数字から始めるかは、30 分の無料相談でお伺いします。

関連事例

出典・参考にした資料

  1. Microsoft サポート「ROUND 関数」
  2. Python ドキュメント「組み込み関数 round()」

この記事を書いた人

小野 隆士ドットシンク株式会社 代表取締役

システム開発会社の会社員、Web 制作の個人事業主、不動産営業、Web 制作会社の役員を経て、CRM 事業を軸にドットシンク株式会社を起業。自社の営業と事務の仕事に AI を使い、そのやり方を AI研修と AI伴走支援でお客様の会社に持ち込んでいます。デジタル庁 デジタル推進委員(2024 年 7 月任命)。

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