数字を並べただけのダッシュボードは、見て終わりになります。開いた人が「で、今日は何をすればいいのか」と思ったら、画面の役目は果たせていません。2026 年 3 月 29 日、経営ダッシュボードの前身の設計を、状況を報告するだけの画面から、行動を促す画面に改めました。
この記事では、そのときに足した 5 つのことと、利用者を 4 つの層に分けて見せる中身を変えた考え方を紹介します。
機能を並べただけの要件を、「誰が今日何をするか」から書き直しました
同じ 3 月 29 日の午後、私は要件そのものの見直しを指示しました。それまでの要件は、顧客の管理・案件の管理・日報……と、作る機能を並べただけのものでした。機能の重なりと、誰が何を見られるかのあいまいさという課題もありました。
書き直しでは、利用者を 4 つの層に分けました。
| 層 | 見る期間 |
|---|---|
| 経営層 | 長期 |
| マネジメント層 | 中期 |
| 現場層 | 短期 |
| システムの管理者 | 設定と管理 |
層ごとに見る期間は違っても、画面に向ける問いは共通です。「今日、何をすべきか」。画面は、この問いに答えるためにある、と決めました。要件も、機能の一覧ではなく、利用者ごとの使い方の筋書きと業務の流れから書き直しています。ほかに、末端の入力が全体を動かすこと、誰でも使える簡単さ、楽しさの仕掛けを生かすことも、設計の考え方に入れました。
同じ日の夜、ダッシュボードに足す 5 つのことを決めました
その夜、ダッシュボードの強化の方針を出しました。「見える化」の目的は、見た人の行動が変わることです。数字を出すだけでは足りず、異常に気づかせ、次の行動を示す必要があります。
状況を報告する画面
- 今月の売上や件数を並べる
- すべての数字を同じ強さで出す
- 見た人が、何がまずいかを自分で探す
- 次に何をするかは、見た人に任される
行動を促す画面
- 何日も動きがない案件を知らせる
- 目標まであといくら・残り何営業日かを出す
- 次に打つ手(フォローの時期など)を添える
- 異常は目立たせ、正常は地味に出す
2026 年 3 月 29 日の指示の記録から作成
足したのは次の 5 つです。
- 放っておかれた案件を知らせる。 何日も動きがない案件を、警告として出します。動きが止まった案件は、誰かが気づくまで止まったままになるからです。こうした案件を放置案件と呼んでいます
- 目標までの残りを出す。 「今月あといくら、残り何営業日」と並べます。月末に達成率を見ても、打てる手は残っていません。月の途中で、1 日あたりいくら積めばよいかを見せます。これを目標達成ペースと呼びます
- 次に打つ手を添える。 フォローの時期など、次の行動を一緒に出します
- 赤・黄・緑で状態を示す。 事務所の大きな画面でも、まずいところが一目で分かるようにします
- 異常は目立たせ、正常は地味にする。 正常な数字まで目立たせると、異常が埋もれます
5 つ目は見た目の話に見えますが、画面の役目にかかわる決まりです。すべてが同じ強さで並ぶ画面では、目は何も止まりません。用語集の赤黄緑の表示にも、使い方をまとめました。
次に対応する日を記録に入れておくと、「今日すること」の一覧が作れます
画面に「今日すること」を出すには、その材料が記録に入っている必要があります。同じ日の要件では、次の 2 つを決めていました。
- 顧客への対応の記録に「次に対応する日」があれば、その日を過ぎたものを、まだ済んでいないこととして一覧に出す
- 入金の遅れ、期限を過ぎた対応、日報の出し忘れなどを、通知の一覧にまとめ、急ぎの度合いと件数が分かる形で出す
放っておかれた案件も、次に対応する日を過ぎた対応も、記録に日付が入っていれば仕組みが拾えます。逆に、次の日付を入れる欄が無ければ、仕組みは何も知らせられません。「今日すること」を画面に出したいなら、入力の側に「次にすること」と「その日付」を入れる欄を用意します。
画面を作る前に、層ごとの「今日すること」を書き出します
- 画面を見る人を層に分け、それぞれが見る期間を決めた
- 層ごとに、画面で答えたい「今日すること」を書き出した
- 何日動きがなければ知らせるかの日数を、仮に決めた
- 目標から実績を引いた残りと、残りの営業日を出せる
- 記録に「次にすること」と「その日付」の欄がある
- 赤・黄・緑に変わる条件を決めた
- 正常な数字は、目立たせずに置いた
画面の見た目を決めるのは、最後で構いません。先に、誰が・今日・何をするための画面かを決めると、出す数字と目立たせる数字が自然に絞れます。当社の経営ダッシュボードでは、導入の最初に、誰がどの数字を見て何を判断するかを伺います。画面に集める数字の考え方は、用語集のダッシュボードにまとめています。



