2026 年 7 月 29 日、従業員 70 名ほどの金属加工の会社様を訪ね、業務の仕組みを実際の画面で見せていただきました。生産管理のパッケージのほかに、社内の技術者の方が長年かけて作り、1 人で直してきた Access の業務システムが 15〜20 ありました。材料の発注や、案件ごとの材料の発注日・納期・入荷をつなぐ記録を担っています。社内のほかの誰も、中を触れません。
このような仕組みは、作り直す前に確かめることがあります。いくつあって、それぞれ何の仕事を担っているか。ほかの仕組みと何の番号でつながっているか。止まったら、何の仕事が止まるか。最初の訪問で、私が確かめたのはこの順番です。
Access の業務システムは、作った方の技術は高いのに、中を誰も触れない状態でした
作った技術者の方の腕は、たいへん高いと伺いました。必要な仕組みを、必要なときに Access で作ってきた結果が、15〜20 の仕組みです。一方で、中身はほかの誰にも分からない状態でした。
Access は 2024 年版に上げて使い続けています。ただ、版を上げても、直せる人が 1 人という状態は変わりません。後継者がいないことを、会社も経営のリスクと考えていました。仕事のやり方や仕組みが特定の人にしか分からない状態を属人化と呼びます。
最初の訪問で確かめたことを、確かめた順に並べます
| 確かめたこと | この会社様で分かったこと |
|---|---|
| どんな仕組みが、いくつあるか | 生産管理のパッケージ 1 つ(10〜20 年使い、3 年前に Windows の更新に合わせて入れ替え)と、Access の仕組みが 15〜20 |
| それぞれ何の仕事を担っているか | Access は材料の発注の管理と、案件ごとの材料の発注日・納期・入荷の記録。生産管理のパッケージは工程の状況と実働の時間 |
| 誰が直せるか | Access は、作った技術者の方 1 人 |
| どの版で動いているか | Access は 2024 年版に上げてある |
| 現場の記録がいつ入るか | 紙の作業票のバーコードを読み取り、半日ほど遅れて生産管理に入る |
| 仕組みに入っていない情報は何か | 受注の前の引き合いと商談は Excel で別に管理。材料費の情報は生産管理のパッケージに無い |
| ほかの仕組みと何でつながっているか | 生産管理の番号と売上の伝票の番号がつながっていない |
最後の行は、表の中でいちばん重い発見でした。次の節で説明します。
この順番にしたのは、作り直すかどうかを決める材料が、上から順にそろうからです。何がいくつあるかが分からないまま、1 つの仕組みの話を深く聞いても、全体の中での重さが分かりません。
番号がつながっていないと、製品ごとの本当の利益が見えません
この会社様では、見積もりから売上まで、情報が途中で形を変えていました。
- 見積もり材料費と加工費(表面処理を含む)に分けて出す
- 受注単価 1 本にまとめて受ける。お客様からは「一式」で注文が来ることもある
- 生産社内では部品ごとに生産管理の番号で動く。材料費の情報は載っていない
- 売上売上の伝票の番号で計上する。生産管理の番号とはつながっていない
2026 年 7 月 29 日の訪問で伺った内容から作成
見積もりのときは材料費と加工費に分かれているのに、受注のときに単価 1 本になります。同じ単価でも、製品によって材料費の割合は 5% から 70% まで違うと伺いました。材料費の割合を見ないまま、工程の時間だけで生産性を比べると、実態とずれます。
さらに、生産管理の番号と売上の伝票の番号がつながっていないので、受注から生産、売上までを 1 本でたどれません。製品ごとの本当の利益率が見えていない、というのが訪問で伺った状況です。製品から材料、工程、出荷までをたどれることをトレーサビリティと呼びます。この会社様では、材料の側のたどる記録は Access が担い、売上の側とはつながっていない状態です。
Access の仕組みを作り直すときも、この番号のつながりをどうするかは避けて通れません。1 つの仕組みを置き換えるだけでは、番号の切れ目は残ります。
Access の版と、パソコンの OS のサポートの期限も確かめます
この会社様は 2024 年版に上げていましたが、古い版のまま使っている会社もあります。Microsoft の公式のページによると、Access 2016 と 2019 のサポートは 2025 年 10 月 14 日に終わりました。同じ日に Windows 10 のサポートも終わりました。サポートが終わった版には、セキュリティの更新が届きません。
Access の業務システムは、Access そのものの版と、動かしているパソコンの OS の両方に支えられています。どちらかがサポートの期限を過ぎていれば、作り直すかどうかとは別に、急いで手を打つ話になります。期限の考え方は用語集のサポート終了に、Access の一般的な説明はMicrosoft Accessにまとめました。
作り直す前に、中身を書き出すところから提案しました
この日、私は今後の進め方の 1 つをお話ししました。Claude Code などの AI で今の Access の中身を読み解き、ほかの仕組みに移す手伝いをすることです。最初にするのは、作り直しではなく、中身の書き出しです。
Access の中では、長年動いてきた計算や決まりがあります。そのうち使っている人も意識していないものは、作り直しのときに落ちやすいので、作り直しを先にしませんでした。15〜20 の仕組みには、作った方が仕事に合わせて足してきた決まりが積み重なっています。画面だけを見て作り直すと、その決まりは画面に出てきません。
書き出すのは、次のようなものです。
- テーブルと項目の一覧(何のデータを、どんな項目で持っているか)
- 画面とボタンの一覧(誰が、いつ、何のために開くか)
- 集計や計算の式と、その中の決まり
- どこからデータを取り込み、どこへ書き出しているか
- 止まったら、何の仕事が止まるか
AI に読ませるときは、取引先や個人の情報が入ったデータを外し、テーブルの形・画面・集計の式といった仕組みの部分から渡します。作った方がいるうちに、書き出したものが合っているかを、その方に確かめていただけるのがいちばんです。
作り直す前に確かめること
- 仕組みがいくつあり、それぞれ何の仕事を担っているかを一覧にした
- 仕組みごとに、直せる人が誰かを書いた
- Access などのソフトと、パソコンの OS の版とサポートの期限を確かめた
- ほかの仕組みと、何の番号でつながっているか(つながっていないか)を書いた
- 止まったときに困る順に、仕組みを並べた
- 作った方がいるうちに、中身の書き出しを一緒に始めた
- AI に読ませるデータから、取引先や個人の情報を外した
業務のシステムを作る前に何を決めるかは、社長が書いた在庫アプリの要件を読んだ記事に書きました。AI と作った社内システムの機能の整理は、メニューを 7 つの分類に組み直した記事にあります。当社のAI伴走支援では、月 2 回の打ち合わせで御社の業務を伺い、AI に任せる作業を毎月 1 つずつ設定します。数字を 1 画面に集める仕組みは経営ダッシュボードで用意しています。



