部署をまたぐ仕事の流れを図にすると、手配が二重になったり漏れたりする場所が見えます。今回の例では、その多くが、部署から部署へ書類や連絡が渡るところでした。この記事では、業務フロー図の描き方の手順と、ある会社様の流れを図にして見えたことを紹介します。
例にするのは、機械の製造と据え付けを手がける会社様(従業員 85 名ほど)です。生産と工程の管理の仕組みづくりのご相談で、会社の中で作った業務の流れの資料と、部署の関係の図をいただきました。2026 年 5 月 26 日に、これを当社で読み直して整理しています。
受注から請求まで、7 つの部署がかかわっていました
この会社様の仕事には、営業・設計・電気・管理・工務・工場・補修のサービスの 7 つの部署がかかわります。受注のあとは営業が中心になり、設計・管理・電気・工務へ同時に指示が出ます。製造は、工場で作る・外に頼む・社内で作る・重機を手配する、の 4 つの道に分かれて同時に進みます。
部署が多く、道が分かれるほど、誰が何を持っているかが見えにくくなります。流れを図にする前に、まず部署と道の数を数えました。
受注の直後に、営業から 8 種類の書類が出ていました
| 段 | 主にする部署 | 出る書類 |
|---|---|---|
| 引き合い | 営業・工務・技術 | 調査と点検の結果 |
| 見積もり・提案 | 営業 | 見積の依頼書・見積書・見積の台帳 |
| 受注 | 営業 | 受注カード・注文の明細書・重機の依頼書・工事の依頼書・製作の依頼書・宿泊の確認表・作業の指図書・業務の依頼書 |
| 段取り | 技術・管理・工務 | 注文の明細書の送付・宿泊と作業員の手配 |
| 製作・部品の手配 | 倉庫・外注先 | 部品と道具の確認 |
| 工事 | 工務・現場 | 作業の日報 |
| 報告・請求 | 営業 | 報告書・請求書 |
受注の段だけで、営業から 8 種類の書類が出ます。それぞれが別の部署や外注先に渡り、そこで次の手配が始まります。作業の指図書は Excel で作り、紙で配っていました。どの書類が、いつ、誰に渡ったかは、書類を持っている人にしか分かりません。
業務フロー図は、部署ごとの帯・仕事・分かれ道・受け渡しを描き分けます
当社が業務フロー図を描くときの手順は、次の 5 つです。業務の流れを描く記法として国際的に使われている BPMN(業務プロセスの表記の規格)の主な要素を、手で描ける形にしたものです。
- 帯に分ける誰がするかで、部署・お客様・システムごとに横の帯(レーン)を分ける
- 仕事を置く仕事を順に置き、1 つずつ「人がする」か「システムが自動でする」かを書く
- 分かれ道を描く判断で道が分かれるところはひし形にし、どの条件でどちらへ進むかを矢印に書く
- 受け渡しを描く部署から部署へ渡る書類や連絡は、点線の矢印にして、渡すものの名前を書く
- 始まりと終わりを置く流れがどこで始まり、どこで終わるかを必ず置く
当社の業務フロー図のひな形(2026 年 5 月 4 日)から作成
いちばん大事なのは 4 つ目の受け渡しです。部署の中の仕事は、その部署の人がよく知っています。部署から部署へ渡るところは、渡す側も受ける側も「相手がやっているはず」と思いやすく、誰の仕事でもない隙間になります。
2 つ目の「人がする」「自動でする」の区別も、図の使い道を決めます。システムに任せられる仕事がどこかを、図の上で見つけられるからです。
図にして見えたのは、部署の間の受け渡しで起きる二重の手配と漏れでした
いただいた資料から、困りごとを部署の間の受け渡しごとに並べ直しました。
| 受け渡し | 起きていたこと |
|---|---|
| 営業から管理・工務へ | 作業の指図書が出ないまま、部品の手配が混乱することがある |
| 部署の間の段取り | 段取りが人に頼っていて、手配が二重になったり漏れたりする |
| 設計がかかわる案件 | 人や重機の手配まで設計が受け持ち、ほかの部署から見えない |
| 現場 | 現場の責任者を誰にするかの決まりがあいまい |
| 営業から経理へ | 請求書の出し忘れや、支払いの条件の変更が経理に伝わらない |
| 手配の状況の問い合わせ | 手配の状況と納期が見えず、問い合わせが多い |
6 つのうち 5 つは、部署の間の受け渡しの話です。1 つの部署の中のやり方を直しても、受け渡しが見えなければ、二重の手配と漏れは減りません。
金額の小さい案件の管理が担当ごとに任されていて、会社として全体を見られない、という話もありました。案件ごとの記録の付け方が人によって違うと、図に描いた流れのとおりに仕事が進んでいるかを確かめられません。
案件の状態の言葉は、営業と生産の 2 本に分けて決まっていました
業務フロー図ができると、案件の状態の言葉を、図と合わせて見直せます。この会社様では、営業の段階と生産の段階を、もともと分けて決めていました。
| 段階の種類 | 状態の言葉(順番どおり) |
|---|---|
| 営業(5 段) | 見積もりのオーダー、見積もり提出済み、高確率、内定、受注 |
| 生産(8 段) | 案件の内容を入力済み、図面を作成中、部品を手配中、入荷済み、製作中・製作済み、組立の決定・資材と人員がそろった、工事完了、請求済み |
状態の言葉は、図の上の仕事の区切りと 1 対 1 に対応させます。そうすると、状態を見れば、今どの帯(部署)が案件を持っているかが分かります。当社が作った画面の見本では、状態を進めるときに、決めた項目を入れないと先に進めない形にしています。状態の決め方は、用語集のステータス管理にまとめています。
描き終えた業務フロー図の点検
- かかわる部署・お客様・外注先・システムを書き出した
- 部署ごとに、その仕事をしている人から話を聞いた
- 各段で出る書類と、渡す相手を書き出した
- 仕事ごとに「人がする」か「自動でする」かを書いた
- 判断の分かれ道に、条件を書いた
- 部署から部署への受け渡しを、点線の矢印で描いた
- 始まりと終わりを置いた
- 図の区切りと、案件の状態の言葉を対応させた
業務フロー図は、システムを作る前の地図です。部署の帯で分けて描くと、どの受け渡しを画面に移せば手配の漏れが減るかを話し合えます。描き方の用語は、業務フロー図・スイムレーン・BPMNにまとめました。案件の状態と進み具合を 1 画面に集める仕組みは、当社の経営ダッシュボードで用意しています。



