決めたことの記録には、結論のほかに、そのときの状況・比べた案・採らなかった理由・まだ仮か確定かを書きます。結論しか残っていないと、半年後に「なぜそうしたのか」を誰も答えられず、同じ議論をやり直すことになります。
この記事では、当社が設計の判断を残すときの書き方を、工程表の部品を選んだ記録を例に紹介します。あわせて、会議の宿題の残し方と、最後の会議の結論が記録に残っていなかった失敗も書きます。
結論だけが残り、「なぜ」が残っていないことに気づき、決まりを作りました
2026 年 3 月 24 日、当社の記録の残し方を見直しました。そのとき分かったのが、判断の結果は残っているのに、背景が残っていないことです。どの案を比べ、なぜ採らなかったのかは、私の頭の中にしかありませんでした。
そこで、大事な判断は、背景・比べた案・採らなかった理由まで書いて残す決まりにしました。あわせて、案件が終わったときに、うまくいった理由・うまくいかなかった理由・次に生かすことを振り返りのノートに書く決まりも作っています。
1 件の判断を 1 枚にし、状況・選択肢・決めたこと・結果・確かめ方を書きます
設計の判断は、1 件 1 枚の記録にしています。ソフトウェアの開発で使われる「アーキテクチャ決定記録(ADR)」の形を、当社用に整えたものです。
| 章 | 書くこと |
|---|---|
| 見出しの情報 | 番号・題・状態(確定・仮に決めた・承認待ち など)・決めた日・決めた人 |
| 状況 | なぜ今、決める必要があるのか |
| 比べた案 | 案ごとに、中身・よいところ・弱いところ・かかる手間 |
| 決めたこと | 選んだ案と、選んだ理由 |
| 結果 | よくなること・悪くなること・ほかに影響すること |
| 影響する範囲 | 作り・運用・安全・速さへの影響 |
| 確かめ方 | 決めたことが働いているかを、何で確かめるか |
| 関係する記録 | 前提になった記録、影響を受ける記録 |
いちばん大事なのは、「悪くなること」を書く欄です。どの案にも弱いところがあります。弱いところを承知で選んだと書いておけば、あとでその弱さが表に出たとき、見落としではなかったと分かります。決めたことの記録の考え方は、用語集の意思決定の記録にまとめました。
例: 工程表を画面に出す部品を、自分で作るか、公開の部品を使うか、買うかで比べました
2026 年 5 月 5 日、経営ダッシュボードの進行管理で、工程表(ガントチャート)を画面に描く部品を決めました。工程表に要るのは、作業の帯、作業どうしのつながりの矢印、ドラッグでの調整、区切りの印の 4 つです。
自分で描く
- 見た目を思いどおりにできる
- ほかの部品に頼らない
- 作るのに 5 日以上かかる
- つながりの矢印の計算と、ドラッグの調整が大仕事になる
公開の部品を使う(採用)
- MIT ライセンスで公開されている部品
- つながりの矢印・ドラッグ・日週月の切り替えが最初からある
- 1 日ほどで入れられる
- 色を当社の見た目に合わせる手間と、年に 1〜2 回の更新の手間がかかる
有料の部品を買う
- 機能が多く、使われている例も多い
- 毎年のライセンスの費用がかかる
- 経営ダッシュボードの料金に見合わない
- 使わない機能が多い
2026 年 5 月 5 日の記録から作成
選んだのは、公開の部品(Frappe Gantt)です。記録の「悪くなること」の欄には、更新に付いていく手間と、色を合わせる手間を書きました。ドラッグでの調整は、最初は見るだけにし、次の段階で保存できるようにする、とも書いています。こうしておけば、あとで「なぜドラッグで直せないのか」と聞かれても、記録を開けば答えられます。
記録には「仮に決めた」の状態も書き、変えたときは前の版を残します
5 月 5 日に書いた記録のいくつかは、状態を「仮に決めた・社長の承認待ち」としました。決めた人と承認する人が違うときに、どこまで決まっているかを記録の頭で分かるようにするためです。
同じ日、稼働率の計算式の記録では、先に書いていた書類と、すでに動いている仕組みの計算が違っていることが分かりました。このときは、仕組みの方を正しいとして書類を直しました。前の版の式は消さずに「採らなかった案」として残し、直した理由を書いています。計算式の中身は、稼働率と納期遵守率の計算式の記事に書きました。
打ち合わせの宿題には、ボールを持つ人と期限を書きます
お客様との打ち合わせでは、議事録の最後に宿題の表を付けます。機械の製造と据え付けを手がける会社様との打ち合わせでは、次の形の表にしました。
| ボール | すること | 期限 |
|---|---|---|
| 共同 | システムで欲しいところを、部署ごとに洗い出す | 次の月の末 |
| お客様の設計の部署 | 設計の部署の要望を確かめる | 次の打ち合わせまで |
| 当社 | 概算の見積もりに向けて、要点を具体にする | 次の打ち合わせまで |
| お客様の担当の方 | 役員会で進み具合を報告する | 2 日後 |
「ボール」は、次に動く番の人です。お客様の側か当社の側かが一目で分かり、止まっている宿題を見つけやすくなります。次の打ち合わせの始めにこの表を上から読めば、終わったものと残ったものが分かります。議事録の書き方は、用語集の議事録とネクストアクションにもまとめています。
最後の会議の結論が、手元の記録に残っていなかったことがあります
失敗もあります。同じ会社様から 2026 年 5 月にご相談をいただき、5 月 26 日に過去の記録を読み直しました。前の年の提案のあと、役員会で検討していただく予定になっていました。ところが、その役員会で何が決まったかが、当社の手元の記録にありませんでした。
宿題の表は残っていても、最後の会議の結論が無ければ、話をどこから再開すればよいかが分かりません。読み直した記録の最後には、再開するときに最初に確かめることを 3 つ書きました。
- 最後の会議で何が決まったか
- そのときに心配されていたことが、今どうなっているか
- 進めるうえで要る社内の体制が、整ったかどうか
会議の結論は、1 行でもその日のうちに記録に足しておく必要があります。止まった案件ほど、この 1 行が無いと再開できません。
記録を書き終えたときに見直す 8 つの点
- なぜ今決める必要があったか(状況)を書いた
- 比べた案と、それぞれの弱いところを書いた
- 選んだ理由と、選んだ案の悪くなることを書いた
- 仮に決めたのか、確定したのか、承認待ちかを書いた
- 決めたことが働いているかを、何で確かめるかを書いた
- 変えたときは前の版を消さず、変えた理由を足した
- 会議の宿題に、ボールを持つ人と期限を書いた
- 会議の結論を、その日のうちに記録に足した
決めた理由が残っていれば、担当が替わっても、同じ議論をやり直さずに済みます。当社のAI伴走支援では、毎月の打ち合わせで AI に任せる作業を決め、当社が設定した内容を御社に納品します。



