現場の方に数字や状態を自由に打ってもらうと、同じ答えがばらばらの形で入り、月末に集計する人が読み替えることになります。答えの形は、入れる人の注意に任せるより、聞き方の側で先に決めておく方が確かです。
2026 年 5 月に、経営ダッシュボードの進行管理で、現場の方がスマートフォンのチャットで答える質問の流れを 8 本決めました。工数の記録、進み具合の報告、納品の確認などです。この記事は、そのときに選択肢について決めたことの記録です。経営ダッシュボードは当社が開発したクラウドサービスで、社外の会社に導入した事例はまだありません。
自由に打ってもらうと、同じ答えがいくつもの形で入ります
作業時間を自由に打ってもらうと、例えば「2」「2 時間」「2h」「120 分」のように、同じ答えがばらばらの形で入ります。全角と半角が混ざると、表計算ソフトで数えたときに別の答えとして扱われることもあります。状態も同じです。「作業中」「進行中」「対応中」が同じ意味かどうかを、集計する人があとから決めることになります。
進行管理のチャットでは、自由に書く欄を最後の手段にしました。答えの多くをボタンから選んでもらい、ボタンにできない答えだけを打ってもらいます。
自由に打ってもらう
- 同じ答えが、単位や書き方の違いで何通りにも入る
- 全角と半角が混ざり、数えるときに分かれる
- 状態の呼び名が人によって変わる
- 集計する人が、あとから読み替える
選んでもらう
- 答えの形が、ボタンの数だけに決まる
- 数字は刻みと範囲を、入れる前に決めておける
- 状態の名前が、集計の名前と同じになる
- 選べない答えだけを、最後に打ってもらう
全部を選択肢にしたわけではありません。案件を新しく登録するときの案件名と顧客名は、打ってもらう質問のままです。予算は数字で入れてもらい、単位の「万円」を入力欄の横に出しています。予算は空のままでも先へ進めます。
決めた質問と選択肢
8 本の流れのうち、工数の記録・進み具合の報告・納品の確認で使う質問を並べると、次のとおりです。
| 質問 | 答え方 | 選択肢と範囲 |
|---|---|---|
| どの作業の時間を記録するか | 候補から選ぶ | 終わっていない作業(30 件まで) |
| 作業時間 | ボタンか数字 | 0.5・1・2・4・8 時間。数字なら 0.25 時間刻みで 24 時間まで |
| 進み具合 | ボタン(省略できる) | 0・25・50・75・100% |
| 案件の状態 | ボタン | 制作中・社内レビュー・顧客レビュー・納品済・完了・保留 |
| 止まっている理由 | ボタン(省略できる) | 素材未着・仕様変更・機材トラブル・外注遅延・その他 |
| 納品物の確認 | ボタン | 確認済み・確認中 |
| お客様の受け取りの確認 | ボタン | 取得済み・後ほど確認 |
数字は、刻んだボタンと、受け付ける範囲で聞きます
作業時間のボタンは、0.5・1・2・4・8 時間の 5 つです。ボタンに無い時間は数字でも入れられますが、受け付けるのは 0.25 時間(15 分)刻みで、0 より大きく 24 以下の数字だけです。1 日の作業時間として 24 を超える数字は、打ち間違いとして受け付けません。入れるときに止めておけば、月末に集計表を見て直す手間がかかりません。
進み具合は 0・25・50・75・100% の 5 段階にしました。進み具合の質問は省くこともでき、省いたときは作業に記録されている今の値をそのまま残します。刻みを粗くすると、45% と 50% の違いは記録に残りません。その代わり、作業の区切りで押す人が数字を考える時間は短くなります。どの細かさにするかは、その数字を何に使うかで決めます。
こうした範囲の決まりは、システムの側でも確かめます。画面のボタンだけに頼らず、保存する前に数字の範囲を確かめる仕組みを入力チェックと呼びます。
状態の選択肢は、集計に使う名前と 1 対 1 にしました
案件の状態は、制作中・社内レビュー・顧客レビュー・納品済・完了・保留の 6 つから選んでもらいます。この 6 つは、システムが持っている状態の一覧と完全に同じにしました。選んだ答えがそのまま状態の記録になり、集計のときに読み替える必要がありません。
選択肢は、画面に出す言葉と、システムの中で使う値を分けて持ちます。例えば画面の「納品済」は、中では別の短い値で記録します。2 つの対応を表にしておくと、画面の言葉を言い換えたくなったときも、過去の記録と集計は崩れません。進行管理の質問の決まりにも、「選択肢の値と画面の言葉の対応をそろえる」を入れています。
「まだ」の答えを用意し、そのときは次の段階に進めません
納品の確認では、はい・いいえの 2 択にしませんでした。納品物の確認は「確認済み」と「確認中」、お客様から受け取りの確認を得たかは「取得済み」と「後ほど確認」から選びます。はい・いいえだけだと、確かめ終わっていないときに押すボタンがありません。
- 案件を選ぶ進行中の案件の一覧から、納品する案件を選ぶ
- 納品物を確かめる確認中を選ぶと納品の記録だけを残し、案件は確認の段階のまま
- 受け取りを確かめる後ほど確認を選ぶと、案件は納品済まで進む
- 完了にする取得済みを選んだときだけ、案件を完了まで進める
2026 年 5 月の進行管理の設計から
「確認中」を選んだ案件は、状態が進まないまま一覧に残ります。誰がまだ確かめていないかが一覧で分かるので、あとで確かめに行けます。逆に「はい」しか選べない作りだと、まだ確かめていない案件まで納品済みとして数えられてしまいます。
候補の一覧からは、終わったものを外します
どの作業の時間を記録するかは、候補の一覧から選んでもらいます。一覧に出すのは、まだ終わっていない作業と取り消していない作業だけで、30 件までです。終わった作業が候補に残っていると、似た名前の作業を押し間違える相手が増えます。案件が 1 件も無いときは、空の一覧ではなく「案件なし」と出します。
候補は、選ぶたびにシステムから取り出します。作業の名前を打ってもらう形にすると、同じ作業が何通りもの名前で記録されます。作業や品番の基本の一覧(マスターデータ)が整っていれば、候補から選ぶだけで名前がそろいます。
自由に書く欄は、最後に任意で置きます
進み具合を報告する流れでは、止まっている理由を選択肢で聞いたあと、最後に「メモがあれば入力してください」という任意の欄を置きました。理由の選択肢には「その他」を入れてあり、当てはまらないときは「その他」を選んでメモに書いてもらいます。
1 つの流れは 4〜7 問までとし、最後に入力した内容を並べて見せる確認の画面を置きます。確認の画面で間違いに気づけば、保存する前に直せます。チャットで入力する形にした理由は、記録を 1 つにまとめた記事とチャット入力の用語の説明にあります。
選択肢は画面に書き込まず、会社ごとに変えられる設定にしました
質問の文と選択肢は、画面のプログラムに書き込まず、設定の表に持たせました。1 つの選択肢ごとに、画面に出す言葉、中で使う値、次に進む質問を持ちます。会社ごと・質問ごとに選択肢を変えられるので、工程や状態の呼び名が会社によって違っても、同じ仕組みのまま合わせられます。
設計書に載せた例では、マーケティングで見込み客の流入元を聞く質問の選択肢を、Google 広告・Meta 広告・展示会やイベント・紹介・その他の 5 つにしています。選択肢を足すときは、集計の側に同じ値の行き先があるかを先に確かめます。
選択肢を作るときの点検
- 自由に打ってもらう質問を、選べない答え(名前など)だけに絞った
- 数字の質問に、ボタンの刻みと、受け付ける範囲を決めた
- 状態の選択肢が、集計に使う名前と 1 対 1 になっている
- 画面の言葉と、中で使う値の対応を表にした
- まだ決まっていない答え(確認中・後ほど)を用意した
- まだの答えのときに、状態を進めない決まりにした
- 候補の一覧から、終わったもの・取り消したものを外した
- 「その他」と、任意のメモの欄を最後に置いた
- 1 つの流れの質問の数を、7 問までに収めた
Excel の台帳でも、同じ考え方が使えます。「データの入力規則」で入力値の種類を「リスト」にすると、セルには一覧の中の値しか入りません。状態や担当者の列から始めると、表記ゆれが減ります。
経営ダッシュボードの導入では、御社の項目に合わせた設定を当社が行います。工場で使う場合の想定は金属加工の工場のモデルケースにあります。現場の画面のログインを数字だけで入れる形にした理由は、ログインの記事にまとめました。



