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コラム

概算を早く出すために、過去の案件の一覧に入れる 13 の項目

この記事の要点

過去の見積もりを探すのが担当者の記憶頼みだと、概算を出すたびに時間がかかり、引き継いだ人は探せません。2026 年 8 月 6 日に伺った建物の施工管理の会社様では、資料を移さず、工種・面積・見積金額・実行予算・利益率など 13 の項目と資料へのリンクだけを並べた案件の一覧を作る方向で話しました。概算は似た案件を引いて出し、最後は人が決めます。

概算の見積もりを早く出すには、似た過去の案件をすぐに引けることが前提です。資料の置き場所を変えなくても、案件ごとに 1 行の一覧を作り、似た案件を絞り込める項目と資料へのリンクを並べれば、探す手間は一覧の中で済みます。

2026 年 8 月 6 日に、建物の施工管理を手がける会社様の事務所に伺いました。工場や倉庫の建築から、トイレの改修のような工事まで、現場の管理を中心にされている会社です。時間がかかっている仕事を伺うと、議事録づくり、工事写真の整理、天候で日程がずれるたびの工程表の直し、と並んで、概算の見積もりと過去の資料探しが挙がりました。この記事は、そのうち見積もりと過去の案件の探し方について話したことの記録です。

電卓を持つ人のイラスト

概算は、似た過去の案件の見積もりを写し、面積の比で直していました

概算の見積もりは、次の 3 段で作られていました。

これまでの概算の作り方
  1. 似た案件を探す過去の似た物件の見積もりの Excel を探して写す
  2. 面積の比で直す参考の物件より 15% 大きければ、各科目に係数を掛ける
  3. 条件の差を足す階数や設備の違いを、担当者の経験で加える

2026 年 8 月 6 日の打ち合わせで伺った内容から

条件の違いとして挙がったのは、2 階建てか 3 階建てか、建物の中で荷を吊って運ぶホイストクレーンがあるか、照明くらいで済む倉庫か工作機械が並んで電気の容量が大きい工場か、ここ 2〜3 年の鋼材の値上がりをどう見るか、などです。どの条件でいくら足すかは、担当者の経験の中にありました。

資料はよく整理されていたのに、探すのは記憶頼みでした

共有フォルダは、実際の画面で見せていただきました。顧客ごと、案件ごとにフォルダが分かれ、案件の中は議事録・図面や提案の資料・自社の見積書・協力会社の見積書・工程表・現場の写真・実行予算や原価の資料に分かれています。完了した案件は継続の取引先のフォルダへ移す決まりもあり、期ごとに整理されていました。

それでも、目的の資料に着くには「あの案件は誰の担当だったか」を思い出してたどる必要があります。引き継いだ若手の方や別の担当の方が探せていなかったのは、次のような情報でした。

  • 特定のお客様の過去の案件
  • トイレの改修のような、特定の工事の種類の事例
  • 似た規模の工場や倉庫
  • 過去に出した概算の見積もり
  • 受注したあとに、実際に利益が出た案件
  • 図面と、それに対応する見積書
  • 過去の打ち合わせの経緯

以前に作った案件と売上の管理の仕組みもありました。担当者ごとの実績や案件ごとの利益率は出せますが、共有フォルダの見積書・図面・議事録・写真とは結び付いていません。数字は仕組みの中に、資料はフォルダの中に、と分かれていました。

資料は今の共有フォルダに残し、一覧には 13 の項目とリンクだけを入れます

共有フォルダは止めず、資料の原本を置く場所として使い続ける方向で話しました。新しく作るのは、案件ごとに 1 行の一覧です。

項目 探すときの使い道
顧客名 特定のお客様の過去の案件を並べる
案件名 一覧の中で案件を見分ける
工種 「トイレの改修だけ」のように工事の種類で絞る
建物の用途 工場・倉庫・事務所などで絞る
面積 「1,000〜1,500 平方メートル」のように範囲で絞る
受注金額 決まった金額を見る
見積金額 出した金額を見る
実行予算 受注した案件の原価の計画を見る
利益額 実際に残った利益を見る
利益率 利益が出た案件と出なかった案件を分ける
担当者 経緯を聞く相手を見つける
施工時期 鋼材などの値段が今と違う時期かを見る
共有フォルダへのリンク 資料はリンクから開いて読む

同じ資料を、フォルダと新しい仕組みの両方に置かないことが要点です。2 か所に置くと、どちらが新しいのかで迷う時間が、探す時間に置き換わるだけになります。資料の置き場所と、誰がどこへ入れるかを先に決める考え方は、道具を選ぶ前に決めたことの記事に書きました。

参考にする案件は、受注して施工まで終えたものだけにする方針で一致しました。受注した案件は実行予算で管理されていて、見積もりに対する利益率、業者ごとの支払い、工種ごとの内訳まで、同じ形の票にそろっていたからです。

補正の決まりが担当ごとに違うままだと、探す仕組みを作っても答えがそろいません

似た案件を探す仕組みは、フォルダの構成がすでに決まりとして働いているので作れる、というのが当社の見立てでした。難しいのは、その先の補正です。面積が増えたら何 % 足すのか、階数でいくら足すのか。この決まりが担当者ごとに違うと、人が使っても AI が使っても、答えがそろいません。

明文化が要るものとして、その場で挙げたのは次の 9 つです。

概算の補正で、書いて決めておくこと
  • 面積が増減したときの補正の率
  • 階数による加算
  • ホイストクレーンを付けるときの加算
  • 工場の設備や電気の容量による加算
  • 鋼材などの市況の変動の反映の仕方
  • 屋根・外壁・内装ごとの計算の仕方
  • 新しいお客様と継続のお客様の価格の付け方
  • 確保すべき最低の利益率
  • 似た案件として採用する条件

この 9 つを社内の基準の表にする過程そのものに、価値があると考えています。担当者ごとの判断の違いが、表を作る話し合いの中で見えてくるからです。過去の見積もりを並べれば、担当者による足し方の違いを数字で確かめられます。仕事のやり方が 1 人の頭の中にしかない状態(属人化)をほどく作業でもあります。

最初から全部を自動にせず、似た案件を探して参考の金額を出すところから

最初から見積もりを自動で出す仕組みは目指さない、という点も確かめ合いました。順番は次の 3 段です。

段階 すること
1 段目 共有フォルダの中を探す。過去の案件や似た案件を引き出す。顧客ごと・工種ごとの一覧と、フォルダへのリンクの一覧を作る。議事録を探せるようにする
2 段目 案件の一覧を整える。見積金額・実行予算・利益率を一覧にする。概算の参考の金額を出す。担当者ごと・顧客ごとの実績を見る。引き継ぎに使う
3 段目 今ある案件と売上の管理の仕組みとつなぐ。顧客ごとの記録、工程の管理、教育や手順書、定期点検の時期の知らせ、お客様と資料を共有する画面に広げる

概算見積もりの金額を最後に決めるのは、積算と施工の経験を持つ担当者です。似た案件を並べて参考の金額を出すところまでを仕組みに任せ、決める仕事は人に残します。

もう 1 つ、毎回同じ答えが欲しいものは、AI に聞くより仕組みにする方が確かだ、という話もしました。聞き方の揺れで答えがぶれるからです。一覧の 13 の項目は、毎回同じ答えが欲しい側に入ります。

一覧に入れる案件の範囲と、項目を入れる時期を先に決めます

  • 一覧に入れる案件の範囲(受注した案件だけか、いつからの案件か)を決める
  • 似た案件を絞り込む項目を先に決め、あとから足す項目と分ける
  • 資料の原本は今の置き場所に残し、一覧にはリンクだけを置く
  • 項目を誰がいつ入れるか(受注のとき、完了のとき)を決める
  • 補正の決まりを、担当者で話し合って基準の表にする

社内と社外の案件を 1 枚の一覧に並べたら、状態の分からない案件が見つかった当社の記録は、案件の一覧の記事にあります。資料に AI で答えさせる前のフォルダの整え方は、フォルダと資料の整理の記事にまとめています。社内の資料や数字を探せる仕組みづくりを手伝う形は、AI伴走支援で扱っています。

よくあるご質問

過去の資料を、新しい仕組みに全部移す必要はありますか?
この会社様では移さない方向で話しました。共有フォルダの資料はそのまま原本として残し、新しく作るのは 13 の項目とフォルダへのリンクを並べた一覧だけです。同じ資料を 2 か所に置かないので、どちらが新しいかで迷いません。
失注した案件の見積もりも、一覧に入れた方がよいですか?
この会社様では、似た案件を探して参考にする対象を、受注して施工まで終えた案件だけにする方針で一致しました。受注した案件には実行予算と、実際の利益の記録が残っているからです。失注した見積もりを何に使うかは、目的を決めてから別に考えます。
AI に過去の見積もりを読ませれば、概算は自動で出せますか?
最初から自動にはしない方がよいと考えています。補正の決まりが担当者ごとに違うままだと、AI もどれを採ればよいか決められないからです。まずは似た案件を探して参考の金額を並べるところまでにし、金額を決めるのは積算と施工の経験がある担当者です。
一覧の項目は、あとから足せますか?
足せます。ただ、似た案件を絞り込むのに使う項目は、最初に決めておく方が楽です。あとから足すと、それまでの案件の分をさかのぼって埋める作業が出るからです。

この記事を書いた人

小野 隆士ドットシンク株式会社 代表取締役

システム開発会社の会社員、Web 制作の個人事業主、不動産営業、Web 制作会社の役員を経て、CRM 事業を軸にドットシンク株式会社を起業。自社の営業と事務の仕事に AI を使い、そのやり方を AI研修と AI伴走支援でお客様の会社に持ち込んでいます。デジタル庁 デジタル推進委員(2024 年 7 月任命)。

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