「全体で共通となる顧客管理部分を作って。これはどの機能でも同一。機能によって追加の仕様がある。(例えば経理の場合、締め日や支払い日など)会社・個人から連絡先を絞り込んで行きたい。メールも送れるようにしたい。」
2026 年 4 月 16 日、経営ダッシュボードの設計を進めていたときに、私が出した指示です。経営ダッシュボードは、営業・進行管理・マーケティング・経理・人事労務の 5 つの商品に分かれています。商品ごとに顧客の表を持たせると、同じ取引先が 5 か所に登録されます。そこで、顧客の記録は全部の商品で 1 つにし、部署ごとに要る項目だけを足す形にしました。同じ日に、案件の記録も同じ考え方で 1 つにすると決めています。
経営ダッシュボードは当社が開発したクラウドサービスで、社外の会社に導入した事例はまだありません。この記事は、設計で決めたことの記録です。
同じ取引先を部署ごとの表に持つと、どこかで食い違います
例えば、取引先の住所が変わったとき、営業の担当は自分の表を直しても、経理の表は古い住所のまま、ということが起きます。支払いの条件が経理の表にしか無ければ、営業は商談のたびに経理へ聞きに行くことになります。案件の金額も、営業の表と経理の表で別々に打てば、どちらが正しいのか分からなくなります。
部署ごとに表を持つ
- 同じ取引先が、部署の数だけ登録される
- 住所や担当者の変更が、直した部署の表にしか入らない
- 支払いの条件は経理しか知らない
- 案件の金額を、部署ごとに打ち直す
1 つの表に項目を足す
- 取引先は 1 件だけ
- 直せば、どの部署の画面にも同じ値が出る
- 部署ごとの項目は、その部署の画面に出す
- 案件の金額は 1 か所で持ち、見る画面を部署で変える
顧客は、会社と個人を同じ表に入れます。共通の項目は、会社名や個人名、業種、住所、連絡先です。連絡先は 1 社に何人でも持て、氏名・メール・電話・役職を入れます。一覧は、会社か個人か、業種、状態、最後に連絡した日で絞り込み、そこからメールを送れる設計にしました。日々の記録が参照するこうした基本の一覧を、マスターデータと呼びます。
案件も 1 件の記録にし、部署ごとに見る画面を変えます
案件については、同じ日にこう書いています。
「案件管理も共通だと思う。進行管理の場合、いくらの案件をいつまでに仕上げるか。ガントチャートがいる。経理の場合、どの案件がいくらでいつ入金されるか。営業の場合、受注前の状態管理をする。」
部署ごとに知りたいことは違いますが、見ているのは同じ 1 件の案件です。案件の名前・顧客・金額・始まりと終わりの予定日・担当は共通の項目にし、部署ごとに見る画面を変えました。
| 部署 | 案件について知りたいこと | 見る画面 |
|---|---|---|
| 営業 | 受注の前に、どの段階まで進んでいるか | 段階ごとの一覧(営業パイプライン) |
| 進行管理 | いくらの案件を、いつまでに仕上げるか | 工程表(ガントチャート) |
| 経理 | どの案件が、いくらで、いつ入金されるか | 入金予定の表 |
| マーケティング | キャンペーンやイベントの予算と期間 | キャンペーンの一覧 |
状態も、商談の段階から、受注・作業・納品・請求・入金を経て完了までを 1 本の線で持つ考え方にしました。受注したあとの請求と入金の状態の決め方は、請求の漏れと入金の遅れを見つける記事にあります。
部署ごとに要る項目は、共通の項目に足していきます
4 月 16 日に挙げた項目と、4 月 25 日に 5 つの商品の設計をそろえた版で決めた項目を合わせると、部署ごとに足す項目は次のとおりです。
| 部署 | 共通の項目に足した項目 |
|---|---|
| 経理 | 締め日と支払日、支払いの条件、与信限度額、振込先、インボイス制度の登録番号 |
| 営業 | 受注確度、担当の営業 |
| 進行管理 | 納品先の住所、検収の条件 |
| マーケティング | 流入元、見込み客の点数、育成の状態 |
どの項目を画面に出すか、入力を必ずにするか、どの順番で並べるかは、商品ごとの設定で変えられるようにしました。設計書の例では、営業の画面には流入元の項目を出さず、マーケティングの画面では流入元の入力を必ずにしています。
表を作り替えるときの決まりも 1 つ置きました。今ある項目は消さず、変えず、足すだけにすることです。先に動いていた営業の商品の記録は、そのまま残ります。
見積書は営業の中に残し、社員の記録は顧客と分けました
全部を共通にしたわけではありません。分けたままにしたものが 2 つあります。
1 つは見積書です。営業の見積書には、インボイス制度への対応、税率の扱い、PDF の出力など、営業の見積書だけの込み入った決まりがあります。経理や進行管理にも「見積」の考え方はありますが、形が大きく違います。無理に共通にすると表が込み入り、あとで直しにくくなります。経理の請求書は、もとになった見積書を指す形で十分につながると判断しました。進行管理で作業の見積もりが要るときは、別の表を作ります。
もう 1 つは社員の記録です。最初の版では、顧客の表に社員の区分も入れる案でした。4 月 25 日の版で、社員は別の表に分けると決めています。人事労務の商品は顧客の表を使いません。給与や勤怠につながる社員の情報と、取引先の情報とでは、見てよい人の範囲がそもそも違います。
あとで絞り込む項目は、自由に書ける欄に入れません
部署ごとにしか使わず、変わりやすい情報のために、自由に書ける追加の欄も 1 つ用意しました。ただし、あとで検索や集計に使う項目はそこに入れず、決まった欄を作る決まりにしています。自由に書ける欄の中身は、数えるたびに 1 件ずつ読むことになるからです。
Excel の顧客の一覧で、業種や取引の状態を「備考」の列に書いているときも同じです。あとで「製造業の取引先だけ」と絞り込みたくなった時点で、備考を読み直す作業が始まります。
顧客と案件の記録を 1 つにする前に決めること
- 部署ごとの顧客の一覧を並べ、同じ取引先が何か所にあるか数えた
- 項目ごとに、どの部署の値を正しいとするかを決めた
- 全部の部署で使う共通の項目と、部署ごとに足す項目を分けた
- 部署ごとの項目を、どの画面に出し、どこで入力を必ずにするかを決めた
- 案件の状態を、商談から入金・完了まで 1 本の線で並べた
- 共通にしないもの(見積書・社員の記録など)と、その理由を書いた
- あとで絞り込む項目に、決まった欄を用意した
- 今ある項目を消さずに足す、という決まりを置いた
1 つにする前に、同じ取引先が名前の書き方違いで何行あるかを数えておくと、まとめる手間の見当がつきます。名前の揺れをまとめる作業は名寄せと呼ばれます。社内と社外の案件を 1 枚に並べて状態を確かめた記録は、案件の一覧の記事にあります。経理の数字を会計ソフトから読む形にした理由は、経理の画面の記事にまとめました。
経営ダッシュボードは、5 つの商品から 1 つを選んで始められます。あとから商品を足しても、顧客と案件の記録は同じものを使います。法人向けのサービス会社で営業から使う場合の想定は、モデルケースに載せています。



