最初に作る機能は、困りごとの中で「起きると取り返せないもの」から選びます。工場や倉庫の建築を手がける建設会社様の業務システムで、2026 年 5 月 19 日に要件を書き直し、最優先の機能を入れ替えました。4 月の 1 版では見積・請求を最優先にしていましたが、2 版ではスマートフォンでの簡易登録と通知を最優先にしています。
この記事では、入れ替えた理由と、2 版で決めた運用の決まりを紹介します。4 月の最初の相談で決めたデータの置き場所と責任者の話は、道具を選ぶ前に決めたことの記事に書きました。
1 版と 2 版で、最優先を入れ替えました
1 版(2026 年 4 月 25 日)
- 最優先は見積・請求・原価・会計連携
- Dropbox は案件から 1 回でたどる形と、まとめての検索
- 保守の時期の知らせを、独立した機能にする
- 職人さんの管理は無い
2 版(2026 年 5 月 19 日)
- 最優先はお客様の記録・案件・タスク・通知・スマートフォンの簡易登録
- 見積・請求は 3 段目に回す
- Dropbox は案件から 1 回でたどる形だけにする
- 職人さんの管理と LINE での連絡を 2 段目に足す
要件定義書の 1 版と 2 版の変更の表から作成
1 版は、最初の相談で伺った「見積・請求・入金まで会社として見えるようにしたい」というお話を中心に書きました。4 月 30 日に 2 回目の打ち合わせをしたあと、困りごとの順番を並べ直して 2 版を書いています。
2 版では、いちばん怖いのは電話で受けた案件の登録漏れだと書きました
この会社様は 6 名ほどで、実際には 3 名を中心に仕事が回っています。情報は 7 か所に分かれていました。
| 情報 | 置いていた場所 |
|---|---|
| お客様 | Notion・電話帳・メール・記憶 |
| 案件 | Notion・メール・電話のメモ・口頭 |
| 工事の予定 | 予定を共有するカレンダーのアプリ |
| 図面や資料 | Dropbox |
| 職人さんへの連絡 | LINE・電話 |
| FAX | 紙のまま、または人ごとに管理 |
| 対応の状況 | 口頭・記憶・個人のメモ |
Notion については、会社の中で「40 点」という評価でした。スマートフォンで使いにくい、案件を登録するまでの手数が多い、期限を過ぎたものを知らせてくれない、という理由です。
2 版には「案件登録漏れが怖い」という項目を立てました。電話を受ける件数が多く、電話の最中か直後に登録しないと、案件そのものを忘れてしまうおそれがあります。建築の仕事では、連絡が遅れると信頼を失い、失注やお客様が離れることにつながります。見積もりの書き方は後から直せますが、忘れた案件は取り返せません。最優先を入れ替えたのは、このためです。
簡易登録は、お客様の名前・内容・担当・期限の 4 つだけで登録できる形にしました
簡易登録で決めたのは次のことです。
- スマートフォンのホームの画面から、1 回押せば登録の画面が開く
- 入れるのは、お客様の名前・内容・担当・期限の 4 つだけでよい
- 「折返し」「見積依頼」「現地確認」「職人連絡」などの定型のボタンで、種類を選べる
- スマートフォンの音声入力で、内容を話して入れられる
- まず仮に登録し、詳しいことはあとから足す
登録のときは、詳しいことが分からなくてかまいません。まず「案件がある」ことを記録するのが目的です。仮の登録を許さず、全部の欄を埋めないと登録できない形にすると、電話の直後には使われません。素早く登録するための入口を、簡易登録と呼んでいます。
担当と期限は必ず入れ、止まった案件はシステムから知らせます
お話の中で、「誰かがやらないといけない」状態が起きている、という言葉がありました。担当が決まらないまま、案件が止まってしまう状態です。2 版では、次の形にしました。
| 起きていること | システムでの扱い |
|---|---|
| 担当が決まっていない | 「担当なし」として一覧に出す |
| 期限が決まっていない | 期限が無いことを知らせる |
| 対応が止まっている | 止まった案件を、担当に知らせる |
| 担当が休みや不在 | 代わりの担当と、引き継ぎを表示する |
人の記憶に頼らず、システムの側から催促する形です。止まった案件や、見積もりを出したあとのフォローの時期を知らせることを、フォローの通知と呼んでいます。
作る順番を 3 段に分け、見積・請求は 3 段目にしました
| 段 | 目的 | 作るもの |
|---|---|---|
| 1 段目 | 案件の抜け漏れを防ぐ | お客様の記録・案件・タスク・簡易登録・通知・対応の履歴・Dropbox へのリンク |
| 2 段目 | 受注のあとの工事と職人さんを管理する | 工事の予定と進み具合・工事のカレンダー・職人さんの管理・LINE で送る文面・職人さんの返事の記録 |
| 3 段目 | 見積・請求に広げる | 見積もり・請求・FAX の記録・外の道具との連携・売上と案件の分析 |
見積・請求を後に回した理由は、見積もりの作り方が社内でまだ決まっていなかったからです。決まっていないやり方をシステムにすると、システムに合わせてやり方を決めることになります。先に案件・お客様・工事の流れを整え、その記録を使って見積もりを作る方が安全と考えました。段に分けて少しずつ広げる進め方を、段階的な導入と呼びます。
初めは外したものもあります。FAX を自動で読み取る機能、Dropbox からの完全な移行、職人さん全員へのアプリの配布です。職人さんの多くは LINE を使っているので、まず LINE で送る文面と URL で届けることにしました。
道具を入れる前に、運用の決まりを 8 つ決めました
システムの機能だけでは、登録漏れは減りません。使い方の決まりも 2 版に書きました。
- 電話を受けたら、詳しいことが決まっていなくても簡易登録する
- 案件には必ず担当を入れる
- 案件には必ず次の対応を入れる
- 毎朝、期限を過ぎたものと担当が無いものを見る
- 見積もりを出したら、フォローの日を入れる
- 工事の予定は、案件と結び付ける
- 職人さんへの依頼は、返事の状況を記録する
- 終わった案件は、お客様の記録に履歴として残す
決まりと並べて、測る数字も決めました。登録された案件の数、担当なしのタスクの数、期限を過ぎた件数、止まっている案件の数、見積もりのあとのフォローの割合、登録にかかる時間などです。登録にかかる時間は、スマートフォンの簡易登録が現場で使える速さかどうかを確かめるための数字です。
最初の範囲を決めるときの点検表
- 困りごとを、起きると取り返せないものと、あとで直せるものに分けた
- 電話を受ける人など、実際に入力する人から話を聞いた
- 情報が今どこに置かれているかを、種類ごとに書き出した
- やり方がまだ決まっていない業務を、最初の範囲から外した
- 最初の範囲で入れる項目を、最小限にした
- 担当と期限を必ず入れる形にした
- 道具と一緒に、使い方の決まりを書いた
- うまくいっているかを測る数字を決めた
要件を書く作業の考え方は、用語集の要件定義にまとめています。当社のAI伴走支援では、毎月の打ち合わせで御社の業務を伺い、AI に任せる作業を 1 つずつ決めます。案件や工事の数字を 1 画面に集める仕組みは、経営ダッシュボードで用意しています。



