業務の道具を替える前に、データごとに「誰が・どこで入れ・どこに置き・どこへ出すか」と、その責任者を決めます。2026 年 4 月 25 日に伺った建設会社様の相談で、当社が打ち合わせの記録の最後に書き留めた点です。記録には「ツール選定より先に、データの置き場と責任者を決めないと崩れる」と書いています。
この記事では、その相談で分かったことと、道具を選ぶ前に作ったデータの表を紹介します。
案件の情報は Notion・Excel・Dropbox に分かれ、使い方は人によって違っていました
工場・倉庫・鉄骨の建物を主に手がける建設会社様です。相談のきっかけは、名刺や情報の管理のやり方を見直したい、というお話でした。
案件の管理には Notion を使っていました。ただ、一部は Excel や個別のファイルにもあり、図面や写真は Dropbox に置いていました。建築業向けの業務の仕組みも、会計ソフトも、まだ使っていませんでした。
困っていたのは、道具の数より、使い方が人によって違うことでした。
- パソコンで整理する人、スマートフォンだけで見る人、パソコンを持ち歩く人がいて、入れる細かさも更新の頻度も違う
- 担当が替わったとき、案件の経緯や残っていることが分からなくなる
- 見積もり・請求・入金が案件と結び付いておらず、どの案件でいくら回収できているかが、すぐに分からない
- Notion と Dropbox が別々で、資料を探すのに両方を行き来する
お話の中で出た「あっちを見る、こっちを見る」を減らしたい、という言葉が、相談の中心でした。
道具を選ぶ前に、データの入口・置き場所・出力先を 1 枚に書きました
Notion を整え直すのか、別の道具に移るのかは、この時点では決めていません。先に、会社で扱うデータを種類ごとに並べ、入口・置き場所・出力先・責任者を書きました。相談の内容から当社が下書きした表です。
| データ | 入口(誰が・いつ入れるか) | 置き場所 | 出力先 | 責任者 |
|---|---|---|---|---|
| 案件 | 担当が受注のときに登録する | 案件の管理の仕組み | 月次の報告・会計ソフト | 社長または仕組みの管理者 |
| 工事台帳と原価 | 現場の担当が入れる | 案件の管理の仕組み(工事台帳) | 原価の CSV・会計ソフト | 現場の担当と経理 |
| 見積書と請求書 | 担当が作る | 案件の管理の仕組み | PDF・会計向けの CSV | 担当と経理 |
| 入金 | 経理の担当が確かめてから入れる | 案件の管理の仕組み | 会計向けの CSV | 経理の担当 |
| 図面や写真などの資料 | 担当がそれぞれ置く | Dropbox(今のまま) | 案件の画面からたどる | 仕組みの管理者 |
| お客様 | 担当が名刺や商談のあとに入れる | 案件の管理の仕組み | 保守の時期の知らせ | 仕組みの管理者 |
| 会計 | 仕組みから書き出す | 会計ソフト(これから入れる) | 確定申告・月次の試算表 | 経理の担当と社長 |
表にすると、道具の役割がはっきりします。この会社様の場合、データの多くは 1 つの「案件の管理の仕組み」に置き、資料だけは Dropbox に残します。会計ソフトは、仕組みから CSV で受け取る出力先です。どの道具を選んでも、この表を満たせるかで比べられます。
- 入口担当が、受注のときにスマートフォンかパソコンで案件を登録する
- 置き場所案件の管理の仕組みに 1 件 1 行で置く。資料は Dropbox に置き、案件から結び付ける
- 出力先月次の報告と、会計ソフトに渡す CSV に書き出す
- 責任者案件のデータは、社長か仕組みの管理者が中身に気を配る
2026 年 4 月 25 日に当社が下書きした表から作成
データの種類ごとに、責任者と代理を 1 人ずつ決めることにしました
表の右端の責任者は、設計を始めるときに書面で確定する計画にしました。決め方は次のとおりです。
- データの種類ごとに、責任者 1 人と代理 1 人を決める
- 責任者は、入っている中身が正しいかに気を配り、手入れの時期を決める
- 仕組みの管理者はすべてのデータを見られるが、中身を変えるときは承認を通す
責任者が決まっていないデータは、誰も直しません。人によって使い方が違う、という困りごとも、データごとに責任者がいれば、その人が入れ方をそろえられます。責任者の考え方は、用語集のデータの責任者にまとめました。
全員に見えていた経理の資料は、役割ごとに見られる範囲を分けます
Dropbox の中は、全員がすべてのフォルダを見られる状態でした。経理の資料のように、鍵をかけたいフォルダもあると伺いました。社員が入社するとき・辞めるときに、見られる範囲を付けたり外したりする手順も、決まっていませんでした。
そこで、社長・現場の担当・経理・仕組みの管理者の 4 つの役割ごとに、見られる範囲を決めることにしました。請求・入金・原価の情報は、経理の担当と社長だけが見られるようにします。入社と退職のときの手順も、あわせて決めます。
もう 1 つ、Notion そのものが、特定の社員の方の個人のアカウントで作られている可能性がありました。その場合は、会社のアカウントへの移し方も決める必要があります。次の打ち合わせで確かめることにしました。役割ごとに見られる範囲を決めることを、閲覧権限の設定と呼びます。
今の Notion の中身と Dropbox の資料は、捨てずに引き継ぎます
道具を替えるときに、今あるデータを捨てると、過去の案件を調べられなくなります。この件では、次の形で引き継ぐ計画にしました。
- Notion の中身は CSV で書き出し、新しい形に合わせて取り込む
- Dropbox のフォルダは動かさない。フォルダの名前を案件の番号にそろえ、案件の画面から 1 回押せば開けるようにする
Dropbox のフォルダを動かさないのは、現場の方が慣れた置き場所を変えないためです。結び付ける仕組みの方を、今の置き場所に合わせます。
社内で仕組みを直せる人を育てることも、最初から範囲に入れました
Notion を最初に作ったのは、社内でパソコンに強い若手の社員の方でした。ただ、それ以上どう直せばよいかが分からない、という状態でした。会社としては、この方を社内の仕組みの管理者にしたい、という考えをお持ちでした。
道具を入れても、直せる人が社内にいなければ、また使い方がばらばらに戻ります。当社は、最初の形を作ることと、社内でその形を直せる人を育てることを、同じ計画に入れることを提案しました。
道具を選ぶ前に決めること
- 会社で扱うデータを、種類ごとに書き出した
- データごとに、誰がいつ入れるか(入口)を決めた
- データごとの置き場所を、1 か所に決めた
- データの出力先(報告・会計ソフト・知らせ)を決めた
- データごとに、責任者と代理を 1 人ずつ決めた
- 役割ごとに見られる範囲と、入社・退職のときの手順を決めた
- 今あるデータを、どう引き継ぐかを決めた
- 社内で仕組みを直す人を決めた
この表があれば、道具の候補を同じものさしで比べられます。案件の進み具合や工事の数字を 1 画面に集める仕組みは、当社の経営ダッシュボードで用意しています。社内の仕組みを AI と作りながら、直せる人を育てていく進め方は、AI伴走支援のページにあります。工事ごとの原価を記録する台帳は、用語集の工事台帳にまとめました。



