2026 年 7 月 28 日、プレス加工と金型を手がける会社様で、品質の記録の状況を確かめました。記録の用紙はそろっているのに、ほとんど書かれていませんでした。当社は、記録を作業の流れの中に入れる形で進めています。品質マニュアルを AI に読ませて、記録に当たる項目を一覧にしました。検査の値は作業の画面から別の窓で入れられるようにし、数量の数え方も見直しています。
このお客様は、ISO 9001(品質の仕組みの国際規格)の認証を目指しています。品質マニュアルなどの書類はできあがり、「運用して記録を残す」段階に入っていました。当社は、作業と検査の記録を残す仕組みの側を手伝っています。
用紙はそろっていたのに、品質の記録はほとんど書かれていませんでした
記録の用紙は作ってありました。ただ、作業を回すことで手いっぱいの現場では、作業とは別に用紙を探して書く時間が取れません。
兆しは前からありました。3 月の現場説明会で、作業指示を紙からタブレットに移したとき、現場の方から「寸法を測った結果をどこかに残したい」という要望が出ていました。そのときの画面には寸法を入れる欄が無く、品質の記録として別に考えることにしています。5 月の打ち合わせでは、目指す形も話しています。記録を紙や Excel でばらばらに持たず、仕組みを回せば記録・集計・報告の資料が自然に出る状態です。
作業指示を画面に移したときの記録は紙の作業指示書をタブレットに移した記事にあります。
品質マニュアルを AI に読ませ、記録に当たる項目だけを一覧にしました
最初にしたのは、どんな記録を残すことになっているかの一覧づくりです。お客様の品質マニュアルと管理の要領は、社内の Wiki にまとめてありました。当社の社内スタッフが、これを AI(Claude)に読ませ、品質の記録に当たる項目だけを抜き出させて一覧にしています。
一覧を作る途中で、マニュアルに書いた手順や言葉と、実際の現場のやり方が違う箇所が出てきました。書類を作った時期と、仕組みが変わった時期がずれているためです。違いは、一覧を作りながら 1 つずつつぶしていく進め方にしました。マニュアルを実際に合わせるのか、やり方をマニュアルに合わせるのかは、AI ではなく社内で決めることです。
書くべき品質記録が一覧になっていれば、記録が書かれていない理由を、記録ごとに分けて考えられます。「用紙が無いから」なのか、「書く時が無いから」なのかです。
記録の種類ごとに、残すときと入れ方を決めました
当社が作っている生産の管理の画面では、品質に関わる記録を次のように残す形にしています。
| 記録 | 残すとき | 画面の上での入れ方 |
|---|---|---|
| 検査の実測の値(曲げの角度など) | 作り始め・作っている途中・作り終わり | 作業の状態に関係なく、別の窓を開いて入れる |
| 作業の数量 | 作業を止めたとき・終えたとき | 完了した数を入れる(カウンターの差はやめる方向) |
| 金型のショット数 | 作業の記録を入れるたび | 入れた数量が、使った金型に積み上がる |
| 設備の止まりとエラー | 止まったとき | 止まりの記録を、その作業に結び付けて入れる |
| 不具合と品質のクレーム | 見つかったとき・届いたとき | 品番から入り、専用の画面で入れる |
| 測定器 | 測ったとき | 測定器は別の台帳で持ち、どの測定器で測ったかを記録に付ける |
どれも、作業の記録と同じ画面から入れられることを目指しています。用紙を探しに行く手間を減らすためです。
検査の値は、作業の画面とは別の窓で、いつでも入れられるようにしました
検査には、作り始めの製品を測る初物、途中の製品を測る中物、作り終わりの製品を測る終物があります。初物は作業を始める前、中物は作業中、終物は作業が終わったあとです。
検査の入力を「作業中」の画面にだけ置くと、作業を始める前の初物や、終えたあとの終物を入れる場所がありません。そこで、検査の入力は作業の状態に関係なく、別の窓で開いて入れる形にしました。iPad の画面に作業の項目と検査の項目を全部並べると入りきらない、という理由もあります。入力は別の画面で開き、作業の記録に 1 行足す方式です。
初物の検査の一般的な意味は、用語集の初物検査にまとめています。
数量はカウンターの差ではなく、完了した数を入れる形に変えることにしました
それまでは、プレス機のカウンターの始めの値と終わりの値を入れ、その差を作った数にしていました。この数え方では、不良になった分も同じ数に混ざります。
そこで、カウンターの値を入れるのをやめ、完了した数を入れる方向に決めました。入れた数は、金型のショット数にも積み上げます。
カウンターの差で数える(これまで)
- 作業の始めと終わりに、カウンターの値を入れる
- 差を作った数にする
- 不良になった分も同じ数に混ざる
- 入れる数字が 2 つある
完了した数を入れる(これから)
- 作業を終えたときに、完了した数を入れる
- その数を金型のショット数にも積み上げる
- 完了した数が良品だけか、不良を含むかを決めておく
- 入れる数字は 1 つ
2026 年 7 月 28 日の打ち合わせで決めた方向です。完了した数の中身は、お客様と決める段階です。
残っているのは、完了した数が良品だけの数なのか、不良を含む数なのかを決めることです。これを決めないまま入れ始めると、良品の割合も、金型のショット数も、人によって違う意味の数字になります。3 月の説明会の時点では、検品のときに「完了数変更」で良品の数に直す流れにしていました。数え方を変えるときは、この検品の流れも一緒に見直します。
測定器は別の台帳で持ち、どの測定器で測ったかを記録に付けます
寸法や角度の値は、どの測定器で測ったかが分からないと、あとで値を信じてよいか判断できません。測定器が正しく測れる状態かどうかを確かめる日(校正の日)が過ぎていたと分かったとき、その測定器で測った記録だけを見直す必要があるからです。
当社の画面では、測定器を別の台帳で持ち、検査の記録に「どの測定器で測ったか」を付ける形にしています。測定器の管理の考え方は、用語集の計測器管理にまとめました。
紙で書くか画面で入れるかは、現場の手が空くかどうかで決めます
品質の記録を、画面で入れるか紙で書くかは、7 月 28 日の時点でまだ決まっていません。当面は紙が現実的という見立てで、お客様に確かめていただいています。紙にするなら、記録の一覧から画面で入れる分を外す作業が出ます。
私は、どちらにするかより先に、何を・いつ・誰が書いて・どこに置くかの一覧を作るようにしています。一覧があれば、紙から画面へは 1 つずつ移せます。品番と工程の呼び名をそろえておくと、紙の記録でも、あとから品番ごとに集め直せます。工程の呼び名のそろえ方は工程の呼び名を 17 の分類にまとめた記事に書きました。
品質の記録を作業の記録に組み込む前に確かめること
- 品質マニュアルなどから、残すことになっている記録を一覧にした
- 一覧とマニュアルを照らし、実際のやり方と違う箇所を洗い出した
- 記録ごとに、残すとき(作業の前・中・後)を決めた
- 検査の値を、作業の状態に関係なく入れられる場所を作った
- 作った数が、良品だけの数か、不良を含む数かを決めた
- 測定器の台帳を作り、記録にどの測定器かを付ける形にした
- 紙で書くか画面で入れるかと、紙の記録の置き場所を決めた
作業の記録と品質の記録が同じ画面に集まれば、品番から、いつ・誰が・どの金型と測定器で作って測ったかをたどれます(トレーサビリティ)。当社の経営ダッシュボードは、現場の入力をスマートフォンのチャットで受け、集計を自動で作るクラウドサービスです。工場で使う場合の想定は金属加工の工場のモデルケースにあります。品質の記録のうち、どれから作業の流れに入れるかは、30 分の無料相談で、今の用紙を見ながら一緒に決めます。



