2026 年 6 月、物流の倉庫を運営されている会社様から、勤怠の集計のご相談をいただきました。その倉庫では、預かっている荷物を守る決まりで、Wi-Fi も新しい機器も入れられません。スマートフォンでの打刻も、現場の方には慣れない操作です。
そこで当社は、打刻は今の機械のままにし、機械にたまった記録を USB などで事務所に持ち帰って集計する形を提案しました。インターネットに常につながっていることを前提にしない設計です。ここでは、その形に決めるまでの考え方を書きます。
紙のタイムカードの集計に、社長が 1 日かけても終わっていませんでした
いちばん時間がかかっていたのは、打刻ではなく、その後の集計でした。打刻は、月額で借りているタイムカードの機械で行っています。ところが、その機械からは記録を取り出せず、集計の機能もありません。紙のタイムカードを見ながら、社長がご自身で全部を手で起こしていました。1 日かけても終わらない、と伺っています。
集計したものは、給与の計算をする会社と税理士に、決まった形の Excel で渡しています。人が毎月増えている会社なので、このままでは集計の手間も増え続けます。
倉庫には、Wi-Fi も新しい機器も入れられません
ふつうなら、クラウドの勤怠のサービス(SaaS)と、スマートフォンや打刻の端末で考えるところです。この倉庫では、それができない理由が 3 つありました。
| 制約 | 伺った内容 |
|---|---|
| Wi-Fi と機器 | 預かっている荷物を守るための決まりで、社内の Wi-Fi も新しい機器も入れられない。施設の電波も自由には使えない |
| 現場の方の慣れ | 40〜50 代の方が中心で、スマートフォンでの打刻に慣れない方が多い。紙のタイムカードの機械に慣れている |
| 衛星のインターネット | 打ち合わせで話には出たが、倉庫の決まりと合うかは別の話 |
1 つ目の制約は、通信の手段を変えても動きません。つなげられるかどうかを決めているのは、電波の強さではなく、荷物を預けている会社との約束だからです。
社長ご自身の言葉も、方向を決めました。「機械の中に記録して、USB などで回収して、ダウンロードしてまとめて集計するのが、一番現実的」というものです。
常につながる前提をやめ、記録を機械にためて後で集める形にしました
常につながる前提
- 打刻の端末が、その場でクラウドに記録を送る
- 倉庫の中に Wi-Fi か、電波の使える端末が要る
- 現場の方に、新しい端末の操作を覚えてもらう
- つながらない場所では、打刻そのものができない
記録を機械にためて後で集める
- 打刻は今の機械のまま。現場の操作は変わらない
- 記録は機械の中にためておく
- 事務所の人が、USB などで記録を持ち帰る
- 通信が要るのは、事務所で集計する段だけ
ネットワークの側から見ると、つながる場所を事務所に寄せた設計です。倉庫の中には、Wi-Fi も通信の機器も足しません。インターネットにつながるのは、記録を持ち帰ったあとの、事務所のパソコンと集計の仕組みだけです。
記録をためて、あとでまとめて送る考え方は、工場のセンサーの仕組みでも使いました。ネットが切れている間は機器の側にためておき、つながってから送る決まりです(センサーのデータを受け取る口の記事)。
オフラインで動く仕組み は、記録を集めるまでに時間の差が出ます。打刻した瞬間に、事務所で誰が出勤しているかは分かりません。この会社様の困りごとは月ごとの集計なので、その差は問題になりにくいと考えました。
打刻の機械に触らずに始められる、集計の自動化から始める順番にしました
提案では、3 つの段に分けました。
- 集計の自動化今の紙や Excel の記録を取り込み、残業・深夜・休憩を計算して月の集計表を出す。打刻の機械は変えない
- 機械から吸い上げる打刻の機械の機種を確かめ、USB などで記録を取り込めるかを試してから作る
- 渡す形で出す給与の計算をする会社と税理士が決めた形で、CSV を出す
2026 年 6 月の提案の形。機械から記録を取り出せるかは、機種を確かめてから決める
最初の段は、打刻の機械にも、今の契約にも、現場の操作にも触りません。1 か月分の実際の記録で、集計が楽になったかを確かめてから、次の段に進むか決められます。
2 つ目の段は、機械から記録を取り出せるかにかかっています。借りている機械のメーカーと機種は、伺った時点では分かっていませんでした。取り出せるかを先に確かめてから作る順番にしたのは、そのためです。
集計したものは、給与の計算をする会社と税理士が決めている形で、CSV のファイルにして出します。社長が毎月作っている Excel の転記を、なくすためです。
電波が使えない現場の仕組みを考えるときに、先に確かめること
- Wi-Fi や機器を入れられない理由は、技術か、決まりか
- 記録が集まるまでの時間の差が、業務で困らないか
- 記録を持ち帰る人・機器・回数を決められるか
- 持ち帰る機器の中身を、使ったあとに消す手順があるか
- 現場の方の操作を、今と変えずに済むか
- つなげる場所を、事務所など決まった場所に寄せられるか
倉庫や工場、病院のように、電波や機器の持ち込みに決まりがある現場は少なくありません。そうした決まりは、会社の 情報セキュリティの方針 や、取引先との約束から来ています。つながる前提の仕組みを無理に入れるより、つながる場所を限る方が、決まりにも現場の慣れにも合うことがあります。
事務所や工場のネットワークを、どこまで広げ、どこで区切るかは、配線と機器を調べるところから考えます。当社の ネットワーク見える化 は、現地で配線と機器のつながりを確かめるところから始めます。



