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コラム

事務所の Wi-Fi を来客用と業務用に分ける方法と、分けると変わること

この記事の要点

来客用を業務用と分けると、来客のスマートフォンやパソコンから、社内のパソコン・共有フォルダ・複合機が見えなくなります。共通のパスワードを貼り出さずに、来客ごとにアカウントを出して使える時間を区切る形にもできます。ただし、利用規約の画面やアカウントの発行は、市販の小型のルーターではできないことが多く、機器の入れ替えが要ります。

事務所の Wi-Fi を来客用と業務用に分けると、来客のスマートフォンやパソコンから、社内のパソコン・共有フォルダ・複合機が見えなくなります。共通のパスワードを壁に貼り出さずに、来客ごとにアカウントを出し、使える時間を区切る形にもできます。ただし、つなぐ前の利用規約の画面や、来客ごとのアカウントの発行は、市販の小型のルーターではできないことが多く、機器の入れ替えが要ります。

クリニックの例は当社が作った想定のモデルケースで、当社が実際に行った工事ではありません。

業務用の Wi-Fi を来客に使わせて、事務室のコピー機のファイルが来客のパソコンから見えた例があります

総務省は「公衆Wi-Fi提供者向け セキュリティ対策の手引き」(令和 7 年 2 月版)で、飲食店や小売店、宿泊施設、医療機関、教育機関など、来た人に Wi-Fi を出す人に向けて、対策をまとめています。

手引きには、次のような例が載っています。あるホテルが、費用を抑えるために、業務に使っているネットワークで宿泊客に Wi-Fi を出しました。数日後、事務室のコピー機に保存されたファイルが宿泊客のパソコンから見えると、宿泊客から知らせがありました。業務用と宿泊客用のネットワークが、きちんと分かれていなかったためです。

手引きは、業務に使っているネットワークで、来た人向けの Wi-Fi を出すことは避けるよう書いています。来た人の端末から、業務用のパソコンなどに入られるおそれがあるからです。

もう 1 つの例は、カフェの Wi-Fi につないでいた利用客が、知らない人にパソコンの中のファイルをのぞかれたというものです。同じ Wi-Fi につないだ端末どうしが、互いに通信できる設定のままでした。来客用の Wi-Fi では、業務用の機器だけでなく、ほかの来客の端末も見えないように設定します。

分けると、来客の端末から社内のパソコン・共有フォルダ・複合機が見えなくなります

来客用と業務用を、分けていない場合と分けた場合

分けていない

  • 来客の端末から、社内のパソコン・共有フォルダ・複合機が見えることがある
  • 共通のパスワードを貼り出すと、一度知った人がずっとつなげる
  • 来客どうしの端末が、互いに見えることがある
  • 誰に Wi-Fi を使わせたかが、あとから分からない

分けた

  • 来客の端末から、社内のパソコン・共有フォルダ・複合機が見えない
  • 来客ごとにアカウントを出し、使える時間を区切れる
  • 来客どうしの端末も、見えない設定にできる
  • つなぐ前に会社名入りの利用規約の画面を出し、アカウントを出した相手が分かる

アカウントの発行と利用規約の画面は、機器が対応している場合にできます。業務用と分けることと、来客の端末どうしが見えないようにすることは、来客用の Wi-Fi を出すなら機器にかかわらず設定しておきます。

分け方には、配線ごと別にする方法と、同じ配線のまま設定で分ける方法があります

総務省の手引きは、分け方を 2 つ挙げています。1 つは、配線や機器ごと別のネットワークを作る方法です。もう 1 つは、VLAN などの技術で、同じ配線の中に別のネットワークを作る方法です。

分け方(手引きの呼び方) どう分けるか
物理分離 来客用のネットワークを、機器や配線ごと業務用と別に作る
論理分離 VLAN などの技術で、同じ配線の中に別のネットワークを作る

VLAN は、配線を分けずに、1 つのネットワークを用途ごとに分ける仕組みです。来客用から業務用のパソコンが見えないようにするのは、ファイアウォールの設定です。インターネットの回線を業務用と来客用で共用する場合も、手引きは、パケットフィルタやファイアウォールなどで分離を確実にするよう書いています。

気をつけたいのは、Wi-Fi の名前を分けただけで、分けたつもりになることです。1 台のアクセスポイントから、社内用と来客用のように、名前の違う Wi-Fi を出せます(名前は SSID と呼びます)。名前が 2 つあっても、その先のネットワークが同じなら、来客用からも社内のパソコンが見えてしまいます。名前ごとに、つながる先のネットワークまで分けます。

来客用では、つなぐ前の利用規約の画面、来客ごとのアカウント、使える時間も決めます

来客用の Wi-Fi では、分けることのほかに、誰に、どれだけの時間使わせるかを決めます。

  • つなぐ前の利用規約の画面: カフェの Wi-Fi のように、つなぐと最初に利用規約の画面(会社名やロゴ入り)が出て、同意してから使う形です。総務省の手引きでは、つなぐと決まった画面を先に出すこの仕組みを、キャプティブポータルと呼んでいます。手引きは、提供者と利用の条件(利用時間など)を、来た人に分かりやすく伝えるよう書いています
  • 来客ごとのアカウント: 受付で来客ごとにアカウントを出します。共通のパスワードを貼り出すと、一度知った人がずっとつなげますが、アカウントなら来客ごとに区切れます
  • 使える時間: 1 回につなげる時間を区切ります。手引きも、1 回あたりの利用時間を制限することは、来客用の Wi-Fi の不正な利用を防ぐのに有効だとしています

2026 年 10 月 1 日に、ネットワークを担当する提携パートナーと打ち合わせをしたときも、来客ごとにアカウントを出して時間で区切る形は、市販の小型のルーターではできず、機器の入れ替えが要るという話になりました。言葉の意味は用語集の ゲスト Wi-Fi にまとめています。

来客がいつどこにアクセスしたかの記録は、プライバシーにかかわります。手引きは、トラブルのときの通信の状況を把握するなど、目的に照らして必要最小限の範囲で記録するよう書いています。何を残すかは、利用規約の文面と合わせて決めます。

クリニックの待合室の想定では、診療時間の外に機器を入れ替えて、お客様用と業務用を分けます

当社は、クリニックの待合室を例に、来客用と業務用を分ける進め方をモデルケースにしています。これは前提を置いた想定で、当社が実際に工事をしたクリニックの話ではありません。効果も、当社では測っていません。

前提は、次のとおりです。

  • スタッフ 10 名ほどの診療所。待合室が 1 つ、診察室が 3 つある
  • Wi-Fi は市販の小型のルーター 1 台で、お客様用と業務用を兼ねている
  • 待合室の Wi-Fi のパスワードを、壁に貼り出している
  • 受付と診察室では、電子カルテなどの業務の機器を使っている
  • 工事は、診療時間の外に行える

この前提で、当社は次の順に進めることを想定しています。

  1. 当社がクリニックに伺い、ルーターの設定、配線、待合室と診察室の電波の状況を確かめる
  2. お客様用と業務用を分けた構成と、つなぐ前に出す利用規約の画面の文面の案をご提案する
  3. 配線の工事が要る場合は、提携する工事会社が通り道を確かめ、金額が決まる
  4. 診療時間の外に機器を入れ替え、お客様用と業務用を分けて設定する
  5. お客様用から実際につないで、業務用の機器が見えないことを確かめてから引き渡す。受付でのアカウントの発行のしかたも説明する

市販の小型のルーターでは、利用規約の画面やアカウントの発行ができないことが多く、その場合は機器の入れ替えが要ります。電子カルテなどの業務の機器は、メーカーの保守の範囲を確かめてから設定を変えます。モデルケースの詳細は、クリニックのモデルケース に載せています。移転に合わせて、会議室と来客用の Wi-Fi を整える 士業の事務所のモデルケース もあります。

ネットワーク見える化では、来客用から社内の機器が見えないことを実際につないで確かめてから引き渡します

当社の ネットワーク見える化 で来客用と業務用を分けるときは、次の順に進めます。

段階 当社がすること
現地での状況確認 当社が伺い、配線の経路、電波の状況、ルーターや防御機器のつながり方、ネットワークの分け方を、設定まで確かめる
ご提案 直した後の構成と、来客用の Wi-Fi の形(利用規約の画面・アカウント・時間の区切り)をご提案する
工事と設定 提携する工事会社が配線を施工し、当社が社内用と来客用を分けて、来客用から社内のパソコンや共有フォルダが見えないように設定する
確かめてから引き渡す 来客用から実際につないで、社内の機器や共有フォルダに入れないことを確かめる。ネットワーク図と設定の情報をお渡しする

料金は、状況確認とご提案のあとにお見積もりします。引き渡しのあと 1 か月の不具合対応は、料金に含めています。対応しているのは、愛知県を中心とした東海地方です。

用途ごとにネットワークを分けた実例として、専門学校様で教員用・学生用・来客用に分けた記録を 授業中にネットワークが止まる専門学校の記事 に書いています。

よくあるご質問

市販のルーターの来客用の機能では、足りませんか?
市販の機器にも、来客用の Wi-Fi を出す機能を持つものがあります。ただ、つなぐ前に利用規約の画面を出すことや、来客ごとのアカウントの発行は、市販の小型のルーターではできないことが多く、その場合は機器の入れ替えが要ります。今の機器で何ができるかは、設定を開いて確かめます。
来客用と業務用で、インターネットの回線まで分ける必要がありますか?
回線は分けなくても、ネットワークは分けられます。総務省の手引きは、回線を共用する場合は、パケットフィルタやファイアウォールなどで、業務用と来客用の分離を確実に行うよう書いています。
分けたかどうかは、どうやって確かめますか?
来客用の Wi-Fi に実際につないで、業務用のパソコン・共有フォルダ・複合機などが見えないかを試します。当社のネットワーク見える化では、来客用から社内の機器が見えないことを、引き渡しの前に実際につないで確かめます。
来客用と業務用を分ける費用は、何で変わりますか?
今の機器で足りるか、配線の工事が要るかで変わるため、当社が状況を確かめてご提案したあとにお見積もりします。配線の工事が要る場合は、提携する工事会社の現地調査で金額が確定します。
来客がいつ何を見たかの記録は、残したほうがよいですか?
総務省の手引きは、アクセスの記録はプライバシーにかかわるため、トラブルのときの通信の状況を把握するなど、目的に照らして必要最小限の範囲で記録するよう書いています。何を残すかは、利用規約の文面と合わせて決めます。

関連事例

出典・参考にした資料

  1. 総務省「無線LAN(Wi-Fi)の安全な利用(セキュリティ確保)について」(「公衆Wi-Fi提供者向け セキュリティ対策の手引き(令和7年2月版)」を掲載)

この記事を書いた人

小野 隆士ドットシンク株式会社 代表取締役

システム開発会社の会社員、Web 制作の個人事業主、不動産営業、Web 制作会社の役員を経て、CRM 事業を軸にドットシンク株式会社を起業。自社の営業と事務の仕事に AI を使い、そのやり方を AI研修と AI伴走支援でお客様の会社に持ち込んでいます。デジタル庁 デジタル推進委員(2024 年 7 月任命)。

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