会員の健康の記録を預かるサイトには、ほかの会社と同居する共有のレンタルサーバーではなく、専用のサーバー を提案しました。2026 年 6 月、紹介制のクリニック様に出した提案です。会員一人ひとりの検査の結果や、来院ごとの方針を記録する仕組みでした。
健康の情報は、漏れたときに国への報告が要る情報です。完全紹介制のクリニック様にとって、情報が漏れることは、紹介のつながりそのものを止めかねません。ただ、サーバーの選び方より先に決めることがあります。どこまでの情報を預かるかです。
会員の体の記録を預かる仕組みだったので、漏れたときの影響から考えました
提案した会員サイトでは、会員が自分の検査の結果を、時間を追ってグラフで見られます。看護師やスタッフが記録を入れ、医師が方針のコメントを書きます。会員になれるのは、紹介を受けた方だけです。
こうした健康の情報は、個人情報保護法で配慮が要る情報として扱われることがあります。個人情報保護委員会の案内では、配慮の要る個人情報を含むデータが漏れた場合は、委員会への報告が義務になっています。例として、社員の健康診断の結果を含むデータが漏れた場合が挙がっています。
だから、サーバーを選ぶ前に、漏れたときの影響から考えました。ふつうの会社のサイトなら、共有の レンタルサーバー で足りることが多くあります。このサイトは、同じ考え方では選べませんでした。
共有のサーバーと専用のサーバーでは、同居する相手と、説明のしやすさが違います
共有のレンタルサーバー
- 1 台のサーバーを、ほかの会社と分け合う
- ほかの会社のサイトが攻撃や障害を受けると、巻き添えになることがある
- CPU やメモリなどを、ほかの会社と分け合う
- 会員に「ほかの会社と相乗り」と説明することになる
専用のサーバー(提案)
- そのクリニック様だけの環境
- ほかの会社の影響を受けにくい
- CPU・メモリ・保存の場所を、1 社で使う
- 会員に「当院専用の環境で管理している」と説明できる
提案では、サーバーの保守・運用・障害の監視をサーバー会社が受け持つ型の、法人向けの専用のサーバーを選びました。クリニック様にも当社にも、サーバーそのものの管理の手間を増やさないためです。契約は、クリニック様の名義で直接契約していただく形と、当社経由で手配する形の両方を選べるようにしました。
専用のサーバーは土台で、守る仕組みは別に作ります
サーバーを専用にしただけでは、安全にはなりません。提案した仕組みでは、次のことを仕組みの側で作ることにしました。
| 決めたこと | 中身 |
|---|---|
| 通信 | サイトとのやり取りは、すべて HTTPS で暗号化する |
| 保存するデータ | 保存するデータも暗号化する |
| 見られる範囲 | 会員は自分の記録だけを見られ、ほかの会員の情報は一切見られない。スタッフは役割ごとに見られる範囲を分ける |
| 記録 | 誰が、いつ、どの記録を見たかを残す(監査ログ) |
| バックアップ | 決まった間隔で取り、戻す手順を作る |
会員が、ほかの会員の記録を見られない作りにするのは、当たり前に聞こえます。ただ、アドレスの番号を 1 つ変えると、ほかの人の画面が開いてしまう、という作りの誤りは、仕組みの側でしか防げません。サーバーを専用にしても、ここは別に作ります。
サーバー会社・当社・クリニック様で、受け持ちを分けました
専用のサーバーにすると、誰が何を見るかを決めておかないと、隙間ができます。提案では、受け持ちを 3 つに分けました。
| 受け持つ人 | 受け持つこと |
|---|---|
| サーバー会社 | サーバーの土台(OS など)の保守、障害の監視 |
| 当社 | 会員サイトの仕組みの作りと運用、守る仕組み(暗号化・見られる範囲・記録)の設計 |
| クリニック様 | 預かる情報の持ち主として、誰に見せるかと、会員への説明 |
情報の持ち主は、クリニック様です。サーバーの契約の名義をクリニック様にする形を選べるようにしたのも、そのためです。持ち主の名義になっていれば、運用を引き継ぐ相手が替わっても、情報と契約はクリニック様の手元に残ります。
サーバーを選ぶ前に、預かる情報の範囲を決めます
提案の段階で、確定していないことも残しました。どの検査の項目を預かるか、です。預かる情報の範囲によって、求められる守り方の水準が変わります。だから、守り方の水準は、預かる情報が決まってから確定することにしました。
- どの情報を預かるか(検査の項目・コメント・写真など)
- 誰が入れ、誰が見られるか(本人・看護師・医師・管理者)
- 漏れたときに、誰に、何を報告することになるか
- どれだけの期間、残すか
- 院内のほかの仕組み(電子カルテなど)とつなぐか
- サーバーの契約の名義を誰にするか
預かる情報を絞れば、守る範囲も小さくなります。この提案でも、院内の電子カルテとその場でつなぐことは、最初の段階の外にしました。
共有のレンタルサーバーで足りる仕組みと、そうでない仕組みの見分け方は、共有のレンタルサーバーの記事 にも書いています。事務所のネットワークや、情報を扱う社内のルールづくりは、ネットワーク見える化 でお受けしています。



