バックアップ は、取っているだけでは戻せないことがあります。戻せるかどうかを決めるのは、置き場所と、実際に戻してみたかどうかです。元のデータと同じ機械や、常につながった場所だけに置くと、元のデータと一緒に壊れます。1 つは、つながっていない場所に持ちます。
警察庁の調べでは、取っていた組織は 9 割、戻せた組織は 2 割ほどでした
警察庁は、令和 7 年(2025 年)にランサムウェアの被害に遭った企業や団体に、アンケートを取っています。バックアップについての答えは、次のとおりです。
- バックアップを取っていた
- 105件 答えた 116 件のうち
- バックアップから戻せた
- 20件 答えた 99 件のうち
- 戻せなかった理由が「バックアップも暗号化された」
- 48件 答えた 72 件のうち
出所: 警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」統計データ
取っていたのに、戻せたのは 2 割ほどです。戻せなかった理由でいちばん多いのは、バックアップも一緒に暗号化されたことでした。警察庁の報告は、攻撃者がネットワークの中を探ってバックアップを探し、復旧を邪魔するためにバックアップも暗号化することが多いと書いています。そのうえで、暗号化への対策として、つながっていない場所に置くオフラインのバックアップ を挙げています。
戻せなかった理由の 2 番目は「運用の不備」で、72 件のうち 19 件でした。機械や攻撃のせいではなく、取り方や戻し方の決め事に穴があった、という答えです。
週 1 回のバックアップでは、最大で 6 日分の仕事が戻りません
2026 年 5 月に伺った専門学校様では、先生方の資料を置くファイルサーバー を、週に 1 回、日曜にバックアップしていました。取っていないよりはずっとよい状態です。ただ、サーバーがある日いきなり壊れたときのことを考えると、週 1 回では心配が残ります。6 月の提案には、サーバーの入れ替えと一緒に、バックアップの取り方と、外から安全につなぐ方法の見直しを入れています。
週 1 回のバックアップで考えておくのは、失う日数です。日曜に取っていて、土曜に壊れたら、月曜から土曜までの 6 日分の仕事は戻りません。毎日少しずつ書き換える資料が多い職場なら、毎日取る方が合っています。逆に、ほとんど書き換えない資料なら、週 1 回でも足ります。
| 取る間隔 | 壊れたときに、最大で失う分 | 合う使い方 |
|---|---|---|
| 毎日 | 1 日分 | 毎日書き換える見積もりや帳票、共有の資料 |
| 週 1 回 | 6 日分 | 書き換えの少ない資料、過去の記録 |
| 月 1 回 | 1 か月近く | ほとんど変わらない資料。これだけに頼るのは避ける |
置き場所ごとに、守れるものが違います
同じ「バックアップを取っている」でも、どこに置くかで、守れる場面が変わります。
| 置き場所 | 機械の故障 | 誤って消した | ランサムウェア | 火事・盗難 |
|---|---|---|---|---|
| 同じ機械の中の別のフォルダ | 守れない | 守れる | 守れない | 守れない |
| 同じ建物の、常につないだ別の機械(NAS など) | 守れる | 守れる | 一緒に暗号化されることがある | 守れない |
| つないでいないときは外しておく外付けのディスク | 守れる | 守れる | 外している間は守れる | 別の場所に保管すれば守れる |
| 社外(クラウドのバックアップ、サーバー会社) | 守れる | 守れる | 過去の版に戻せる期間による | 守れる |
1 か所で全部を守れる置き場所はありません。社内の NAS に毎日取り、そのうえで、外付けのディスクか社外にもう 1 つ持つ、という組み合わせが、中小の会社では始めやすい形です。
サーバー会社の自動のバックアップにも、期限があります。当社が使ってきた共有のレンタルサーバーでは、Web とメールとデータベースの、それぞれ過去 14 日分でした。共有のレンタルサーバーの記事 にも書いたとおり、作業の前には自分でも取ります。
RAID は、ディスクの故障に備える仕組みで、バックアップの代わりにはなりません
NAS やサーバーには、RAID という、複数のディスクに同じデータを持たせる仕組みがよく使われます。ディスクが 1 本壊れても止まらずに使えるので、心強く見えます。
けれど、誤って消したファイルや、暗号化されたファイルは、RAID のすべてのディスクで同じように消え、同じように暗号化されます。RAID が守るのは「ディスクの故障」だけです。RAID の NAS を置いたうえで、別の場所にバックアップを取ります。
戻す練習で、本当に戻せるかを確かめます
WordPress の公式の更新の手順は、作業の前にバックアップを取り、それが実際にあって使えるかを確かめることを「欠かせない」と書いています。サイトに限らず、どのバックアップも同じです。
- 選ぶ戻してみるファイルやフォルダを 1 つ選ぶ。よく使う共有の資料がよい
- 別の場所に戻す元の場所に上書きせず、空いている場所にバックアップから戻す
- 開いて確かめる戻したファイルが開けるか、中身が最新のバックアップの日付のものかを見る
- 時間を測る戻すのにかかった時間を控える。全部を戻すときの目安になる
- 手順を残す誰が、どの画面で、どう戻したかを 1 枚に書いておく
練習で分かるのは、戻せるかどうかだけではありません。戻し方を知っている人が社内に何人いるか、全部を戻すと何時間かかるかも分かります。
サイトのバックアップでは、取るものが 2 つに分かれます。記事やページ、ユーザー、設定が入ったデータベースと、本体・テーマ・プラグイン・画像などのファイルです。WordPress の公式の手順も、データベースと、WordPress のフォルダの中のすべてのファイルを取るよう書いています。ファイルだけを写しても、記事は戻りません。
当社がお受けしている WordPress の毎月の保守では、更新の前に毎回バックアップを取り、取ったことを報告にも書いています。更新で崩れたときに、戻す先があるようにするためです。保守の流れは、毎月の保守の記事 に書きました。事務所の共有フォルダやファイルサーバーの置き場所の見直しは、ネットワーク見える化 の現地での状況確認から始められます。



