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コラム

社長を名乗るメールで送金を頼まれたときに、止まれる社内の決まり

この記事の要点

社長を名乗るメールが、会社が公開しているアドレスに届き、SNS のグループを作らせて、そこで送金を頼む詐欺が起きています。警察庁は 2026 年 2 月 13 日の注意喚起で、送金のルールを社内で確かめ直すよう呼びかけています。社長からの指示でも、決めた別の連絡の方法で本人に確かめるまでは送金しない、という決まりを、社長が先に決めて社内に伝えます。

社長を名乗るメールが、会社が公開しているアドレスに届きます。「新しいプロジェクトのため」と SNS のグループを作らせ、そのグループの中で、会社の口座の残高を聞き、送金を頼みます。警察庁は、2026 年 2 月 13 日の注意喚起で、この「ニセ社長詐欺」への注意を呼びかけました。

防ぐ決まりの中心は 1 つです。社長からの指示に見えても、決めた別の連絡の方法で本人に確かめるまでは、送金しない。この決まりを、社長が自分で先に決め、社内に伝えておきます。

電話をかける怪しい人のイラスト

2026 年 2 月の警察庁の注意喚起は、SNS のグループに誘い込む手口でした

警察庁の注意喚起が説明している流れは、次のとおりです。

ニセ社長詐欺の流れ(警察庁の注意喚起から)
  1. メールが届く社長などを名乗るメールが、インターネットで公開されている会社のアドレスに届く。実在する社長名や会社名が使われる
  2. グループに誘う業務をよそおい、SNS のグループを作らせ、招待用の QR コードを返信させる。振込の権限を持つ担当者を入れるよう指示することもある
  3. 残高を聞くグループの中でやりとりし、会社の口座の残高を答えさせる
  4. 送金させる「事業資金が至急必要だ」「取引先への支払いを代行してほしい」などと、指定した口座に送金させる

出所: 警察庁 SOS47 のニセ社長詐欺の注意喚起(2026 年 2 月 13 日)

注意喚起は、実在する社長名や会社名が使われるため、気がつきにくいのが特徴だとしています。対策として挙げているのは 3 つです。社内で情報を共有すること、送金のルールを確かめ直すこと、SNS のグループの利用を指示されたら注意することです。

IPA(情報処理推進機構)は 2026 年 1 月に「情報セキュリティ 10 大脅威 2026」を公表しました。組織への脅威の 10 番目に、ビジネスメール詐欺 が入っています。

当社も、経営者の勉強会で話すために、公式の資料を調べ直しました

当社は 11 月に、経営者の勉強会で、AI による情報漏えいと詐欺について話す予定です。それに合わせて、2026 年 9 月に公式の資料を調べ直しました。公式の資料をたどると、だまし方は変わっても、注意喚起が勧める対策は、社内の決まりと確かめの手順に集まっています。

AI を使えば、それらしい文面を作る手間は小さくなります。文面の不自然さだけで見分けようとせず、確かめる決まりに頼ります。

送金の前に止まれる決まりを、社長が先に決めます

送金の前に止まれる、社内の決まり
  • 社長からの送金の指示は、メールや SNS だけでは受けない
  • 決めた別の連絡の方法(社内で決めた電話番号など)で、本人に確かめてから送金する
  • メールに書かれた電話番号やアドレスには、確かめの連絡をしない
  • 急ぎを理由に、確かめを飛ばさない。社長自身がこれを決めておく
  • 新しい振込先や、いつもと違う振込先は、2 人で確かめる
  • SNS のグループを作るよう指示されたら、送金の話の前に止まって相談する
  • 口座の残高を聞かれても、確かめが取れるまでは答えない

いちばん大事なのは、「急ぎでも確かめる」を社長自身が決めておくことです。担当の方が止まれないのは、「社長の指示を疑ってよいのか」と迷うからです。社長が先に、自分の名前の指示でも確かめが取れるまでは送金しない、と決めて伝えておけば、担当の方は迷わずに止まれます。

確かめるときは、メールに書かれた電話番号ではなく、社内で前から知っている番号にかけます。メールの中の連絡先は、だます側が用意したものかもしれないからです。

会社のアドレスでメールを受ける人がすることも、決めておきます

警察庁の注意喚起では、こうしたメールは、インターネットで公開されている会社のアドレスに届きます。だから、最初にメールを読む人が、どう動くかも決めておきます。

社長を名乗るメールが届いたときの動き方
  1. 返信しないメールに返信せず、QR コードも読み取らない
  2. 社長に確かめる社内で前から知っている電話番号で、本人に確かめる
  3. 社内に伝える同じメールが、ほかの人にも届いていないかを伝える
  4. 記録を残す届いたメールを消さずに残し、届いた日時を書き留める

社内に伝える文面も、前もって用意しておくと早く動けます。たとえば「社長の名前で、SNS のグループを作るよう求めるメールが届いています。返信せず、QR コードも読み取らないでください」のような短い文です。

メールの設定で減らせる部分と、減らせない部分があります

会社のドメインを名乗る偽のメールは、送信元の認証の設定で、受け取った側が見分けやすくなります。SPF や DMARC などの設定です。会社のドメインを守るために、設定しておく価値があります。

ただ、無料のメールのサービスから、社長の名前を名乗って送られてくるメールは、この設定では止まりません。表示の名前を社長の名前にするだけなら、誰でもできます。だから、メールの設定と送金の決まりを組み合わせます。

守り方 減らせること 減らせないこと
送信元の認証の設定 会社のドメインを名乗る偽のメール 無料のメールのサービスから、社長の名前で届くメール
送金の決まり(別の方法で本人に確かめる) 文面がどれだけそれらしくても、送金の前で止まれる 決まりを知らない人が、勝手に送金すること
社内での情報の共有 手口を知っている人が増え、早く気づける 共有した情報を読んでいない人

最後の行のために、決まりは社員全員に伝えます。経理の担当の方だけでなく、会社の公開のアドレスを読む人、社長の秘書役の人も、最初にメールを受け取る人だからです。

情報を守る社内のルールと担当者を決める体制づくりは、ネットワーク見える化 の中でお受けしています。偽のサイトに誘うメールの手口は、フィッシングメールの用語のページ にもまとめています。

よくあるご質問

本物の社長からの急ぎの指示だったら、困りませんか?
本物の社長なら、決めた方法で確かめれば、すぐに確かめが取れます。急ぎを理由に確かめを飛ばさない、と社長自身が先に決めておくことが大事です。社長が決めていれば、担当の方は迷わずに止まれます。
送信元のアドレスを見れば、偽物と分かりますか?
分かることもありますが、それだけには頼りません。警察庁の注意喚起では、実在する社長の名前や会社の名前が使われるため、気がつきにくいとされています。アドレスの見た目ではなく、別の連絡の方法で本人に確かめることを決まりにします。
SNS のグループに入ってしまったら、どうしますか?
警察庁の注意喚起は、トークの画面などに通報の機能があれば通報し、速やかにグループから退出するよう書いています。送金してしまったときは、すぐに振込先の銀行と警察に連絡します。
メールの設定で防げませんか?
会社のドメインを名乗るメールの一部は、送信元の認証(SPF・DKIM・DMARC)の設定で見分けやすくなります。ただ、無料のメールのサービスから社長の名前で送られてくると、この設定では止まりません。だから、送金の決まりと組み合わせます。

出典・参考にした資料

  1. 警察庁 SOS47「法人を対象とした詐欺(ニセ社長詐欺)に注意」(2026 年 2 月 13 日)
  2. IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」

この記事を書いた人

小野 隆士ドットシンク株式会社 代表取締役

システム開発会社の会社員、Web 制作の個人事業主、不動産営業、Web 制作会社の役員を経て、CRM 事業を軸にドットシンク株式会社を起業。自社の営業と事務の仕事に AI を使い、そのやり方を AI研修と AI伴走支援でお客様の会社に持ち込んでいます。デジタル庁 デジタル推進委員(2024 年 7 月任命)。

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