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コラム

過去の提案書を AI に読ませ、次の提案書の下書きを作る手順

この記事の要点

提案書は AI にゼロから書かせず、書く前に 1 枚の設計表を作り、会社の情報・過去の提案書・今回の打ち合わせの記録を読ませて下書きを作らせます。下書きは人が読んで作り直すかを決め、最後に社内の言葉・数字・事実を、言葉の検索と頭からの読み直しで確かめます。どのくらい時間が短くなるかは、当社では測っていません。

提案書の下書きは、書く前に作る 1 枚の設計表と、3 つの材料(会社の情報・過去の似た提案書・今回の打ち合わせの記録)を AI に渡して作らせます。AI にゼロから書かせることはしていません。下書きは人が読んで、直すか作り直すかを決めます。送る前には、社内の言葉・数字・事実を、言葉の検索と頭からの読み直しで確かめ、送るかどうかは私が決めます。

2026 年 9 月のある提案では、提案書を 3 つの版まで作り直し、そのうち 2 本は送りませんでした。下の 6 つの手順の中に、そのときの記録を交えています。

提案書の下書きを作る 6 つの手順
  1. 材料をそろえる会社の情報、過去の似た提案書、今回の打ち合わせの記録
  2. 設計表を作る誰が決めるか、何が伺えていないかを 1 枚にまとめる
  3. 骨組みを決める見出しの並びを先に決め、AI には中身を埋めさせる
  4. 下書きを読む人が読み、直すか、作り直すかを決める
  5. 点検する社内の言葉・数字・事実を、検索と読み直しで確かめる
  6. 採点して送る弱いところを書き残してから、送る版を決める

1. 会社の情報・過去の似た提案書・打ち合わせの記録の 3 つを AI に渡します

  • 会社の情報(何をしている会社で、何を提供しているか)
  • 過去の似た提案書
  • 今回のお客様について分かっていること(打ち合わせの議事録、メールのやり取り)

金属加工の会社様の研修(2026 年 5 月)の教材にも、提案書を AI にゼロから書かせるとうまくいかないので、会社の情報、過去の似た提案、お客様ごとの情報を渡すと書きました。

3 つ目の材料は、打ち合わせの記録です。当社は議事録とメールの経緯をお客様ごとのフォルダに置いているので、AI にそのフォルダを読ませれば足ります。記録の残し方は 商談の記録の記事 に書きました。

過去の提案書には、お客様の社名と金額が入っています。どの AI サービスに読ませてよいかを、先に社内で決めておきます。この記事でも、例に出す提案書は社名と金額を伏せています。過去の資料を探して AI に読ませる仕組みは、RAG と呼ばれます。研修の中でこの形を組んでみた例が、建設会社様の AI研修です。

2. 本文を書く前に、決める方や予算がどこまで伺えているかなど 7 つの項目を 1 枚の表にします

本文を書く前に、次の 7 つを 1 枚の表に書きます。

項目 書くこと
伺えていること 決める方・判断の基準・予算・期日などが、どこまで伺えているか。100 点で数える
似た案件の結果 過去の似た案件が、決まった理由と決まらなかった理由
決まるまでの道筋 誰が決めるか、誰の了承を経て決まるか
ほかの選択肢 他社に頼む・自分たちでやる・何もしないと比べたときの理由
決めるときの不安 お客様が決めるときに心配すること、それを小さくする方法
金額の出し方 金額の根拠と、見せる順番
次に決めること 次の打ち合わせで決めていただくこと

1 行目の「伺えていること」が 60 点に届かないときは、AI は提案書を書くのをいったん止め、もう一度伺うことを私に提案する決まりです。決める方や予算が分からないまま書くと、誰に向けた提案書なのかが定まらないためです。

実際の設計表の例を 2 つ、社名と金額を伏せて書きます。

  • 2026 年 7 月、ある製造業の会社様: 約 68 点。打ち合わせでお会いしたのは現場の責任者の方で、最終的に決める方は別にいる可能性が高いと分かりました。決める方・判断の基準・期日などは仮の値と書き、次の訪問で確かめる項目に回しました
  • 2026 年 9 月、別の会社様: 70 点。予算と期日は 0 点で、まったく伺えていませんでした。確かめたい項目を一覧にし、提案書と一緒にお尋ねする形にしました

「似た案件の結果」の欄には、まだ書けることが多くありません。過去の案件の決まった・決まらなかったの記録が、まだ社内にたまっていないためです。そのときは「初回」と書き、案件が終わったら結果を残します。

3. 見出しの並びは人が先に決め、AI には中身を埋めさせます

見出しの並びは、AI に任せずに先に決めます。先の研修の教材では、その会社様の提案書の骨組みを、会社の紹介・過去の似た実績・提案の内容・概算の費用・納期・品質の保証の順に置き、AI には中身を埋めさせる形にしました。

当社の提案書は、決まったひな形から作ります。2026 年 9 月 24 日の提案書は、いつもの AI研修のスライドをひな形にして作りました。スライドごとに、当日に話す内容のメモも書かせます。2026 年 9 月 30 日の打ち合わせで使った提案書は 17 ページで、1 時間の打ち合わせの中で、どのページを何分で話すかまで決めてから臨みました。

4. 下書きを人が読み、提案の形そのものが合っていなければ作り直します

下書きを読んで、直せば済むのか、作り直すのかを決めます。2026 年 9 月のある提案では、次のように 3 つの版を作りました。

日付(2026 年 9 月) 版 どうしたか
24 日 研修 1 回とフォローを一括にした案 打ち合わせで、研修より、続けて相談できる支援を望まれていると分かった。送らなかった
28 日 月 1 回か月 2 回の打ち合わせを選ぶ案 社内の振り返りで、何をしてもらえるかが伝わらないと分かった。送らなかった
30 日 できることを機能ごとに分けて並べた案 当日の打ち合わせで使った

送らなかった 2 本は、お客様のフォルダの古い版の置き場所に移してあります。何を変えたかを後から追えるようにするためです。

作り直すと決めたのは、どちらも提案の形そのものが合っていないと分かったときです。言い回しを直すだけでは、合わない形は直りません。2 本目のときの社内の振り返りは、営業の作業を AI と人に分ける記事 の「何でもできます」の話と同じものです。

30 日の朝には、金額の見せ方も何度か直しました。ある項目は、単品で頼まれた場合の金額を一度上げてから、高すぎると判断して元に戻しています。このときに決めたのが、単品の金額は、単品で頼まれたら実際にその金額でお受けする金額にするということです。比べるためだけの金額を並べると、お客様に誤解を与えるからです。

5. 送る前に、社内の言葉・数字・事実を、言葉の検索と頭からの読み直しで確かめます

送る前の点検は、言葉の検索と、頭からの読み直しの 2 つで行います。

検索では、すべてのスライドの本文・表・話す内容のメモを、社内でしか使わない言葉の一覧で調べます。全ページを画像にして、表のはみ出しや重なりがないかも見ます。

この点検を決まりにしたのは、2026 年 7 月に、AI が下書きした提案書の見出しに社内の言葉が残った失敗があったからです。経緯は AI の確認の手順の記事 に書いています。

読み直しでは、検索では見つからないものを探します。9 月 30 日の朝は、私の「確認した上で必要であれば修正して」という指示で、AI に全ページの本文とメモを頭から読み直させ、次の 3 つを直しました。

  • 社内の打ち合わせで出た話を、お客様が話したことのように書いていた
  • 送っていない前の版の金額が、話す内容のメモに残っていた
  • お客様のデータの出どころを、確かめないまま書いていた

数字と制度は、元の情報で確かめます。制度の名前・率・期日は、省庁などの公式の情報で確かめてから書きます。AI が、存在しない補助金の名前を推測で書いたことがあるからです。

システムを作る提案では、金額の根拠を、機能の一覧の行数から積み上げて説明する形にしています。AI が作る部分より、人が実際に動かして確かめ、直す部分に時間がかかるためです。機能が 1 行でも増えたら、金額を確かめ直してから作り始めます。

提案書を送る前に確かめること(当社の点検)
  • 本文・表・話す内容のメモまで、社内でしか使わない言葉が残っていないか
  • 送らなかった前の版の金額や言い回しが残っていないか
  • お客様の発言として書いたことが、本当にお客様の言葉か
  • 制度の名前・率・期日を、公式の情報で確かめたか
  • 金額の根拠を、機能の一覧などで説明できるか
  • 全ページを画像にして、表のはみ出しや重なりがないか

6. 9 つの項目で採点し、80 点に届かなければ直してから出します

最後に、決めた 9 つの項目で提案書を採点します。100 点のうち 80 点に届かなければ、直してから出す決まりです。9 月 30 日の提案書は 84 点でした。

項目 配点 自己採点
お客様の理解 15 13
課題の整理 15 11
解決策の具体さ 15 13
進め方 10 9
費用と範囲 10 9
効果の説明 10 6
リスク 10 9
決めやすさ 10 9
次にすること 5 5
合計 100 84

配点に対していちばん低いのは「効果の説明」でした。作業の時間が何割減るといった数字は、裏付けがないので書いていません。その代わりに、項目ごとに「できるようになること」を書きました。点を上げるために、根拠のない数字を足すことはしません。

AI エージェントが作業を進めるところは、AI基礎研修 の第 2 部で、私が画面で操作して実演します。板金・部品加工の会社のモデルケース(想定)では、過去の見積書を読ませて下書きを作らせる研修を組んでいます。

よくあるご質問

過去の提案書を AI に読ませるとき、社名や金額はどうしますか?
社内で使う AI に読ませるときは、社名と金額が入ったままです。そのため先に、どの AI サービスに何を入れてよいかを社内で決めます。入力した内容が AI の学習に使われない契約や設定かも確かめます。社外の人が読む資料(この記事など)に例として使うときは、社名と金額を伏せます。
設計表の「伺えていること」が足りないときは、どうしますか?
100 点で数えて 60 点に届かないときは、本文を書かずに、もう一度伺う項目を一覧にします。決める方や予算が分からないまま書くと、誰に向けた提案書なのかが定まらないためです。
どのくらい時間が短くなりますか?
当社では測っていません。分かっているのは、下書きを読んで作り直すかを決めることと、送る前の点検には、人の時間がかかるということです。
AI基礎研修で、提案書づくりを扱えますか?
AI基礎研修は決まった形の研修で、第 1 部で AI の基礎(セキュリティの基礎を含む)を話し、第 2 部で AI エージェントを実演します。提案書を題材に選ぶ形ではありません。

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この記事を書いた人

小野 隆士ドットシンク株式会社 代表取締役

システム開発会社の会社員、Web 制作の個人事業主、不動産営業、Web 制作会社の役員を経て、CRM 事業を軸にドットシンク株式会社を起業。自社の営業と事務の仕事に AI を使い、そのやり方を AI研修と AI伴走支援でお客様の会社に持ち込んでいます。デジタル庁 デジタル推進委員(2024 年 7 月任命)。

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