AI に写真や紙を読ませる仕組みは、実物で試すまで、どこまで読めるかを約束できません。だから最初の提案では、本番まで作る案とは別に、試す段階だけの案を見積もります。試す段階(PoC)で確かめたことが、本番に進むかどうかを決める材料になります。
2026 年 3 月 23 日に、この形の提案書をお出ししました。ご紹介をいただいた、大型のプレス機を使う会社様です。この記事では、その提案書の組み方と、試す段階で確かめることを書きます。
社長が毎日、目で読んで手で計算していた作業の相談でした
この会社様では、2 台のプレス機ごとに、生産の予定を書いた掲示板(かんばん)を使っています。毎日その掲示板を目で読んで品番と数量を書き写し、金属の重さを社長が手で計算していました。
ほかの方にはできない作業で、時間もかかります。ご要望は次の 3 つでした。
- 掲示板の写真から、品番と数量を自動で読み取りたい
- 読み取った内容を Excel に落とし、計算式で処理したい
- 金属の重さが、自動で出るようにしたい
当社の案は、スマートフォンで掲示板を撮ると、AI が品番・数量・色分け・状態の印を読み取る形です。品番ごとの金属の種類と重さの台帳と照らして、重さは「数量 × 1 個あたりの重さ」で出します。写真の文字を読む技術は、OCR と呼ばれます。
案は 2 つ、本番まで作る案と、試す段階だけの案にしました
見積もりには、2 つの案を並べました。
本番まで作る案
- 試す段階(2 週間)
- 仕組みを作る(3 週間)
- 現場で試して直し、使い方を説明する(1 週間)
- 読み取りの AI の利用料と保守は月々
試す段階だけの案
- 実物の写真で、読み取りの正確さを確かめる
- 品番の台帳をそろえる
- 結果の報告と、動く試作を渡す
- 結果を見て、本番に進むかを決める
2026 年 3 月 23 日にお出しした提案書から。金額は伏せています
試す段階だけの案を別にしたのは、読めるかどうかが分からないまま、全体の金額を決めていただくのは無理があるからです。掲示板には、色分けや状態の印があります。写真の撮り方でも、読みやすさは変わります。試してみて読めなければ、本番の作り方そのものが変わります。
お客様の側から見ても、試す段階で止められる形なら、最初の負担は小さく済みます。
試す段階で確かめたいことは、4 つあります
試す段階は、本番を作る前に「作ってよいか」を決めるための期間です。確かめることを先に決めておかないと、ただの試作で終わります。提案書に書いたのは、読み取りの正確さの検証と品番の台帳の整理でした。私はそこに、毎日の手間と、読み違えたときの直し方を足して見ています。
| 確かめること | 確かめ方 | 結果で変わること |
|---|---|---|
| 読み取りの正確さ | 実物の写真を数枚読ませ、人が読んだ結果と照らす | 本番に進むか。正確さとして約束できる値 |
| 品番の台帳 | 品番ごとの金属の種類と重さが、そろっているかを見る | 台帳を整える手間を、本番の範囲に入れるか |
| 毎日の手間 | 撮って、読ませて、直すまでの時間を測る | 社長以外の方に任せられるか |
| 読み違えたときの直し方 | 読み違えた箇所を、人が見つけて直せるかを試す | 確認の画面を、本番にどう組み込むか |
提案書の効果の欄には、今の作業の時間と、狙いの時間を並べました。ただ、どちらも試す前の見込みの値です。注記として、読み取りの正確さは試す段階で測り、約束できる値はそのあとに決めると書いています。
本番の流れでも、最後に人が確かめる手順を残しました
本番の使い方は、次の 5 つの手順にしました。
- 撮る朝、2 台のプレス機の掲示板をスマートフォンで撮る
- 読むAI が品番・数量・色分け・状態の印を読み取る
- 照らす品番の台帳と照らし、金属の種類と 1 個の重さを引く
- 出す品番・数量・重さを Excel に書き出す
- 確かめる必要に応じて、人が読み取り結果を確かめて直す
最後の「確かめる」を外さなかったのは、AI の読み違いが、そのまま重さの計算に入るからです。どのくらい直す手間がかかるかは、試す段階で測ります。
品番ごとの重さの台帳は、計算の土台です。この台帳のように、仕組みの中で繰り返し使う基本の情報は、マスターデータと呼ばれます。台帳がそろっていなければ、AI がいくら正確に読んでも、重さは出ません。
月々の費用と補助金は、確かめる前提を添えて書きました
本番まで作る案には、作る費用とは別に、月々の費用も書きました。読み取りに使う AI の利用料と、保守の費用です。作ったあとにもかかる費用を最初から並べておかないと、比べるときに作る費用だけが目に入ります。
補助金を使える可能性も、表にして載せました。ただ、補助金の申請の条件を満たすかどうかは、別に確かめる必要があると書き添えています。制度の条件は、会社の規模や対象の経費で変わるからです。
効果の欄、補助金の欄、正確さの欄のどれにも、「確かめてから決める」ことを書きました。提案書の中で、まだ確かめていない数字が、約束のように読まれないようにするためです。
次にお願いしたのは、現場を見ることと、写真を数枚いただくことでした
提案書の最後には、次の 3 つを書きました。
- お打ち合わせで、現場の掲示板と品番の台帳の作りを見せていただく
- 2 台の掲示板の写真を、数枚ずついただく
- お打ち合わせのあとに、試す段階に進むかを決めていただく
写真をいただくのは、試す段階の前でも、読み取りの難しさの見当がつくからです。手書きの癖や色の数は、写真を見れば分かります。
見積もりの有効期限は、2026 年 4 月 30 日までとしました。
試す段階の成果物は、続けるか止めるかを決める材料です
試す段階で渡すのは、読み取りの正確さを確かめた報告と、動く試作です。報告は、上の表の 4 つに答える形にするのが、続けるかどうかを決めやすい形です。
試す段階で読めないと分かれば、そこで止めるのも 1 つの結論です。続けるなら、報告で分かったことを本番の見積もりに反映します。
AI に任せたい作業が読み取りや計算のときは、当社の AI伴走支援でも、小さく試してから設定します。部品加工の会社で、見積もりの下書きから AI に任せていく場合の想定は、モデルケースに載せています。



