古くなった設備を直す提案は、決裁者の目には、いつか起きるかもしれない損失を避けるための費用にしか見えません。2026 年 8 月、専門学校様のネットワークの提案で、当社は見積もりを削る代わりに、話の順番を組み直しました。来年度からの学校の使い方を起点にした順番です。9 月 7 日に学長にご説明し、3 つの案の真ん中の案で、対象の範囲を絞って合意をいただいています。
この学校様では、授業中にネットワークが止まる問題を調べて、すでに一部を直していました。残っていたのは、各階を数珠つなぎにした配線の組み替えと、古い機器の入れ替えです。その工事の見積もりを、学長にどうお見せするかが、8 月の課題でした。
見積もりを削る案を表にすると、大きく下がる案はありませんでした
8 月 27 日、学校の窓口の先生と、当社のネットワークの技術の担当と、オンラインで打ち合わせをしました。最初に、費用を下げる案を 1 つずつ並べて確かめています。
| 費用を下げる案 | 効き目 | 判断 |
|---|---|---|
| リースにして月々に平らにする | 総額は下がらない。月々の負担が平らになる | 支払い方の選択肢として残す |
| 防御の機器(UTM)を外す | 真ん中の案から下の案への差になる | 安全の水準が下がるので、優先は低い |
| 予備の機器を外す | 同じく、下の案への差になる | 故障したときは都度手配になり、直るまで日数がかかる |
| 今あるケーブルと機器を使い回す | ほとんど無い | ケーブルに印が無く、経路を調べて印を付ける手間が増える。集める場所が 1 階から 2 階に変わるので、配線の工事は結局要る |
| 機器の格を下げ、通販の最安値で買う | 小さい | 品質と保守の面で採らない |
| 補助金を使う | ― | 学長が乗り気でなく、採択されないおそれと申請の制限もあるので、いったん使わない |
ルーターだけを 1 台ずつ替えていく分け方も考えました。ただ、ルーターを替えても、数珠つなぎの配線が残る限り、途中の 1 か所が止まると先の階まで止まります。分けて少しずつ直す方法は、肝心な課題が残る形でした。
結論は、数字を削る方向では大きな効き目は見込めない、というものでした。
決める方には、今回の工事が「費用」に見えていました
同じ打ち合わせで、なぜ決めていただきにくいのかも話しました。学長には、今回の工事が、純粋な費用に見えている。見返りは「いつか起きる損失を避けること」だけで、それがいちばんの壁だ、という見立てを、その場の全員で共有しました。
技術の担当は、設備を買う投資との違いも挙げていました。電子黒板のような設備は、買えばそこで完結します。ネットワークは、全体の配線を見直す工事になります。学長が思い描いていた投資の形と、この工事の形が、そもそも違っていました。
止まったときの被害の見積もりも用意していました。公的な機関が公開しているデータから出した被害の額です。ただ、その額がそのまま学校の損害になるわけではありません。打ち合わせでは、先生方や事務の方が仕事を進められなくなる時間の方が、実感に近いという話になりました。
話の順番を、来年度からの使い方から始まるように組み直しました
そこで、数字を削る代わりに、提案の組み立てを変えました。
組み直す前
- 機器が古くなっている
- 止まると困るので、危険を避ける
- そのための工事と見積もり
組み直したあと
- 来年度から Google Workspace を本格的に使っていく
- そのためには、止まらず、速く、分かれたネットワークが土台として要る
- 今の不安定さ、古さ、安全の不安
- 真ん中の案を軸にした工事と見積もり
2026 年 8 月 27 日の打ち合わせで決めた組み立て
来年度から Google Workspace を本格的に使うことは、学校が決めていた方向でした。その先には、留学生に手続きを案内する仕組みや、建物ごとに分かれているファイルサーバーをまとめる話もあります。工事は、それらを載せる土台として説明することにしました。
全体像も先に見せることにしました。全体像には 4 つの建物を入れ、今回は 1 つの建物から始めます。「学校の DX のための工事です」とだけ伝えると、次の建物の工事を相談するときに、話の筋が合わなくなります。4 つの建物の全体像を先にお見せし、そのうえで最初の 1 つを決めていただく順番にしました。
始め方にも幅を持たせました。半年から 1 年かけてゆっくり進める形もできます。ただし、ネットワークの機器は値上がりが続いているので、その点は書き添えています。
見積もりは費目ごとに分け、打ち合わせの前にお送りすることにしました
総額だけを見ると、強い印象が残ります。学長が費目ごとに確かめられることも考えました。その場で答えられる細かさまで見積もりを分けて、打ち合わせの前にお送りすることにしました。
3 つの案は、何が入っていて何が入っていないかで書き分けています(松竹梅)。
| 上の案 | 真ん中の案 | 下の案 | |
|---|---|---|---|
| 工事の範囲 | 1〜5 階 | 1〜4 階(5 階は対象外) | 1〜4 階(5 階は対象外) |
| 防御の機器 | あり | あり | なし(ルーターの設定で代わりにする) |
| 予備の機器 | あり | あり | なし |
| 狙い | 長く使える一番よい形 | 今の困りごとを直す | 予算の中に収める |
上と真ん中の差は 5 階の分で、真ん中と下の差は、防御の機器と予備の機器です。選ぶ方は、金額の差を、何をあきらめるかの差として見られます。
提案の資料は当社で作り、技術の担当とやり取りして仕上げることにしました。管理の画面のキャプチャや、故障を知らせる通知の例は、別の資料として添えます。
9 月 7 日、真ん中の案で、範囲を絞って合意をいただきました
9 月 7 日、学長室でご説明しました。8 月 27 日に決めた組み立ては、そのまま通りました。金額を大きく削る話にはならず、真ん中の案で、最初の 1 つの建物から始めることに、学長から口頭で合意をいただいています。
説明には、4 つの言葉を使いました。
| 言葉 | 今 | 工事のあと |
|---|---|---|
| 止めない | 1 階から 6 階まで数珠つなぎで、途中が切れると上の階が全部止まる | 1 か所が切れても、ほかは生きる形(スター型配線)に組み替える |
| 見える | どのケーブルがどこにつながっているかが分からない | 管理の画面で、つながっている機器と通信の量を見られる |
| 速い | 無線がつながりにくく、教室では先生が自分で有線を引いている | 各階に無線の機器を置き直す |
| 分ける | 職員用と学生用の区切りが、共有の場所への出入りまで効いていない | 職員用と学生用を分け、通すもの・通さないものを決める |
学長からは、学生用のネットワークにはそこまでお金をかけなくてよい、という強いご意見がありました。学生は、文書や表計算の練習に使う程度で、個人の情報も持っていない、というお考えです。ここで対象の範囲を 1〜4 階に絞ることになり、真ん中の案に落ち着きました。ほとんど使っていない建物は今回の対象から外し、要るときは学校で市販の無線の機器を買って置く、ということになっています。
当日は、技術の担当が体調を崩して来られませんでした。管理の画面は、技術の担当が検証用の環境で撮っておいた画像でご説明しました。学長は実際の機器で見たいとおっしゃり、次は工事のあとの実機の画面をお見せしてから、次の建物を決めていただくことになりました。
工事は 3 日ほどで、10〜11 月を目処に、遅くとも年内に行う予定です。
組み直す前と後で、変えなかったこと
組み直したのは、話の順番と見せ方です。見積もりの中身と、3 つの案の範囲は変えていません。機器も、月々の利用料が大きくかかるものは選ばず、買い切りで使えるものを中心にする方針のままです。
8 月と 9 月の議事録は、どちらも打ち合わせの録音を文字起こしして、AI に作らせました。聞き取りの誤りは、議事録の段階で直しています。9 月 7 日の議事録には、学長のご発言が文字起こしで別の言葉になっていた箇所もありました。
この学校様の 6 月の打ち合わせの準備は、2 回目の打ち合わせの前に作る準備メモの記事に書いています。補助金を使う提案の書き方は、補助金を使う前提の提案書の記事にあります。ネットワークを調べて図にし、直すところまでの仕事は、当社のネットワーク見える化です。工事の効き目と費用の釣り合い(費用対効果)の考え方は、用語集にまとめました。



