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コラム

初めての商談の前に、相手の会社を AI に調べさせて確かめる手順

この記事の要点

商談の前の下調べは、AI に相手の会社の公式サイトと公的な法人の情報を読ませ、事実・推測・未確認を分けた報告にさせます。人は、出典の新しさと、公的な登録と公式サイトの食い違いを確かめ、未確認の項目を当日に伺う質問に変えます。報告の推測を、相手の会社の評価として当日に話すことはしません。

商談の前の下調べは、AI に相手の会社の公式サイトと公的な法人の情報を読ませ、報告にまとめさせています。報告の中では、事実・推測・未確認を分けて書かせます。私が見るのは、出典の新しさと、公的な登録と公式サイトの食い違いです。未確認の項目は、当日に伺う質問に書き換えます。

2026 年の 3 月から 5 月にかけて、この形の報告を 5 社分作りました。業種は、コーチング、結婚相談所、フォークリフトの販売と整備、再生可能エネルギーの投資、リフォームです。手順は、その報告の作りと、使ってみて足した決まりから書いています。

虫眼鏡を持って調べ物をする人のイラスト

商談の前の下調べの流れ
  1. 範囲を決める打ち合わせで決めたいことから、調べる項目を選ぶ
  2. AI に調べさせる公式サイトと公的な法人の情報を読ませ、出典と取った日を 1 行ずつ付けさせる
  3. 書き分ける事実・推測・未確認を、報告の中で分けて書かせる
  4. 照らす公的な登録と公式サイトを人が見比べ、食い違いを書き出す
  5. 質問に変える未確認と食い違いを、当日に伺う質問の一覧にする

1. 調べる項目は、打ち合わせで決めたいことから選びます

報告の項目は、毎回同じではありません。どの打ち合わせでも調べるのは、正式な社名、所在地、代表者、事業の中身です。そこに、打ち合わせの目的に合わせた項目を足します。

打ち合わせの目的 足す項目
初めての顔合わせ 公式サイトと SNS の更新の様子、外部の認定や登録
研修のご提案 社員の方の職種の構成(推定)、AI が使えそうな業務
システムのご相談 今使っているソフト、そこからデータを書き出せるか
サイトの作り直し 同じ地域の同業の会社のサイト、SNS の使い方

システムの相談では、相手の会社のことだけでなく、今使っているソフトも調べます。社会保険労務士の事務所様の場合は、打ち合わせの日までに、事務所のクラウドのソフトを調べてありました。そのソフトには、外のシステムとつなぐための公開の仕様(API)がありませんでした。CSV でデータを書き出す機能はあるので、書き出して取り込む形が現実的だ、というのが調べた結論でした。

2. 出典の URL と取った日を、報告の末尾に 1 行ずつ付けさせます

報告の末尾には、出典の一覧を付けさせます。1 行ごとに、URL、出典の種類、信頼できる度合い、取った日を書かせます。フォークリフトの会社様の報告では、出典は 7 つでした。相手の会社の公式サイトが 3 つ、県の登録制度と社会福祉法人のページが 2 つです。残りの 2 つは、業界紙の記事と、企業の情報をまとめたサイトでした。

信頼できる度合いは、相手の会社が自分で出している情報をいちばん上に置き、情報をまとめたサイトは下に置きます。取った日を書かせるのは、公式サイトにも古いページが残っているからです。この報告には、ブログの最新の記事が調べた日の 2 日前だったことまで書かれていました。発信が続いている会社だと読み取れます。

3. 事実・推測・未確認は、報告の中で書き分けさせます

AI は、分からないところを、もっともらしい推測で埋めることがあります(ハルシネーション)。そこで当社の報告では、推した内容には「推測」、確かめられなかったことには「未確認」と、その場で書かせています。

フォークリフトの会社様の報告では、登記の設立の年とは別に、創業の年が「推測」と書かれていました。主なお客様の層も、サイトの記事の傾向から推した内容で、やはり「推測」でした。資本金と従業員数は、公式サイトにも企業のデータベースにも載っておらず、「未確認」のまま残っています。

報告の中の書き分け(フォークリフトの会社様の報告から)

事実

  • 正式な社名と所在地(公式サイト)
  • 事業の中身と許認可の番号(公式サイト)
  • 県の登録制度への登録(県のページ)

推測

  • 創業の年(設立の登記より前)
  • 主なお客様の層(記事の傾向から)

未確認

  • 資本金
  • 従業員数
  • 年間の売上

報告の最後には「調べきれなかったこと」の節を置かせます。この会社様の報告では、資本金、従業員数、売上のほか、Facebook 以外の SNS の様子が入っていました。

4. 公的な登録と公式サイトの食い違いは、当日に確かめます

正式な社名と所在地は、公的な登録でも確かめます。法人番号は法人ごとに付いた 13 桁の番号で、国税庁の法人番号公表サイトでは、社名・所在地・法人番号が公表されています。経済産業省の gBizINFO では、政府が持っている法人の情報を、社名や法人番号から引けます。

リフォームの会社様の報告では、gBizINFO の登録の住所と、公式サイトの所在地が、別の市になっていました。登記の住所と、実際にお店を構えている場所が違うのは、珍しいことではありません。ただ、同じ名前の別の会社という場合もあります。報告には「同じ法人かを確かめる」と書かせ、当日に伺う項目に入れました。グループの別のサイトは、開こうとすると拒まれて中が読めず、ここも伺う項目になりました。

5. 未確認の項目は、当日に伺う質問に書き換えます

報告をそのまま打ち合わせに持って行くことはしません。未確認と食い違いを、当日の質問に書き換えた表を手元に置きます。

報告での書き方 当日に伺うこと
従業員数: 未確認 今回の件に関わる方は何名で、どんな仕事をされていますか
主なお客様: 推測 いちばん多いのは、どんなお客様ですか
業務の管理: 公開情報に手がかりなし 案件やお客様の記録は、今は何に残していますか
今のソフト: CSV で書き出せる 移したいデータは、何年分・何件くらいありますか
登録の住所: 公式サイトと別の市 本店と、今の事務所の場所を教えていただけますか

最初の打ち合わせで伺うことを 1 枚にまとめたものは、ヒアリングシートと呼ばれます。下調べの表は、そのシートの空欄を先に埋めておく役目です。

報告の推測は、当日の会話で相手の会社の評価として話しません

リフォームの会社様の報告には、「弱みの推定(公式情報外)」という節がありました。少人数のため、同時に受けられる工事の件数に限りがあるのではないか、といった内容です。こうした推測は、提案の組み立てを考える材料にはなります。それでも、当日に相手の会社の弱みとして口にすることはしません。公開の情報から推しただけの評価は、相手の方から見れば、何も知らないのに決めつけている話です。

報告に AI が書いた「研修で取り上げられそうな場面」も、同じ扱いです。当社の AI秘書作成研修では、秘書に任せたい仕事を御社に伺い、作るものを 1 つ選びます。報告の案は伺い方を考える材料で、題材そのものではありません。

報告は社内の記録として、お客様ごとのフォルダに置きます。推測や未確認の書き込みが入った報告を、提案書や配布の資料に貼り付けることはしません。

報告を作るのは AI、出典を開いて確かめるのは人です

AI に任せているのは、ページを開いて読み、項目ごとにまとめ、出典を並べるところまでです。代表者のお名前と肩書き、正式な社名は、いただいた名刺と公式サイトで照らしてから、提案書や見積書に書きます。報告を作る作業は AI の方が速く進みます。時間がかかるのは、報告を読み、大事な事実の出典を開き直す人の側です。

当社の AI伴走支援では、月 2 回の打ち合わせで御社の業務を伺い、AI に任せる作業を毎月 1 つずつ設定します。商談の前の下調べも、その候補の 1 つになります。

よくあるご質問

商談の前の下調べに、どのくらい時間をかけていますか?
時間は測っていません。AI が報告を作り終えるまでより、人が報告を読んで出典のページを開き直す方に時間を使っています。
AI が調べた内容を、提案書にそのまま書いてもよいですか?
正式な社名・所在地・代表者のお名前は、いただいた名刺、公式サイト、法人番号公表サイトで確かめてから書きます。「推測」「未確認」と書かれた項目は提案書に書かず、打ち合わせで伺います。
公開されている情報が少ない会社は、どう調べますか?
法人番号公表サイトで正式な社名と所在地を確かめ、公式サイトに載っている範囲を読みます。資本金や従業員数のように公開されていないことは、未確認のまま当日に伺う項目に回します。
下調べには、どの AI を使っていますか?
Claude に Web のページを開かせて報告を作らせています。報告の項目と、出典の一覧の形は、社内で決めたひな形に合わせています。

出典・参考にした資料

  1. 国税庁 法人番号公表サイト「法人番号とは」
  2. 経済産業省「gBizINFO(Gビズインフォ)」

この記事を書いた人

小野 隆士ドットシンク株式会社 代表取締役

システム開発会社の会社員、Web 制作の個人事業主、不動産営業、Web 制作会社の役員を経て、CRM 事業を軸にドットシンク株式会社を起業。自社の営業と事務の仕事に AI を使い、そのやり方を AI研修と AI伴走支援でお客様の会社に持ち込んでいます。デジタル庁 デジタル推進委員(2024 年 7 月任命)。

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