打ち合わせのたびに要望が増える相談では、全部を一度に作る前提をやめ、お客様が「これだけでも効く」と言う部分から作ります。要望を全部入れた見積もりは、金額も期間もふくらみ、何から使い始めるのかが見えなくなります。
2026 年 4 月 7 日、社会保険労務士の事務所様との打ち合わせで、この決め方をしました。事務所の代表の方は、20 社ほどの顧問先を受け持っています。この記事では、増えた要望の扱いと、最初の範囲が決まった順番を書きます。
画面の見本を見ていただいた打ち合わせで、要望が 2 つ増えました
それまでに伺っていた話をもとに、当社は打ち合わせの前に画面の見本(モックアップ)を作って持って行きました。顧問先・従業員・申請の 3 つの軸で探せる画面です。この探し方は、好評でした。
そのうえで、打ち合わせでは次の話が出ました。
| 出た話 | 中身 | 扱い |
|---|---|---|
| 育児休業と産休の管理 | 予定日を仮に入れ、実際の日が決まったら予定を確定に変える。延長はチェックを入れるだけにしたい | 詳しく伺った |
| 病気で休む方の給付の申請 | 同じ方に、1〜2 か月ごとに何度も申請が出る | 新しく増えた |
| 建設業の現場ごとの労災保険の手続き | 工事の始まりと終わり、延長、書類の種類ごとの管理 | 新しく増えた |
| 助成金の申請 | 期限がとても厳しい。手続きは 1 年近く続く | 期限の厳しさを確かめた |
| 年に 1 回の業務 | 今月することを一覧にしたい。カレンダーで見たい | 強いご要望 |
画面の見本を見ると、使う場面を思い出して、要望が出てきます。要望が増えること自体は、打ち合わせがうまく進んでいる印です。困るのは、増えた要望を全部、最初の範囲に入れてしまうことです。
最初の範囲は、代表の方の言葉と、いちばん大事な機能で決めました
最初に作る範囲を決めるとき、軸にしたのは 3 つです。
- これだけでも入れる意味がある、とお客様が考えている部分はどこか
- いちばん大事な機能は何か(この事務所様では、期限の前の知らせ)
- いちばん手間がかかっている業務はどれか
代表の方は、進み具合が分かるだけでも入れる意味がある、とお考えでした。いちばん大事な機能は、期限の前の知らせだと確かめました。1 週間前の知らせと、2 か月ごとの決まった申請の知らせです。そして、担当の方が休んでいても、ほかの方が状況を見られることです。
この 3 つの軸を重ねると、最初の範囲は「業務ごとの期限と担当が一目で分かり、期限の前に知らせが届くこと」になりました。打ち合わせの記録にも、最も大事な要件として、そのとおりに書いています。
伺った要望
- 育児休業・産休の予定の管理
- 病気で休む方の給付の申請
- 建設業の現場ごとの労災の手続き
- 助成金の申請
- 年に 1 回の業務とカレンダー
最初に作る範囲
- 業務ごとの期限と担当の一覧
- 期限の前の知らせ
- 担当の方が休んでも状況が分かる画面
- ほかの業務は、手間の重いものから順に足す
全部の業務を一度に仕組みにするのではなく、手間の重い業務から順に仕組みにする方針も、打ち合わせで決めました。どの業務から足すかは、範囲(スコープ)を詰めるときに決めます。
表計算の管理をやめたい理由は、代表の方の言葉で確かめました
今の管理は、表計算のファイルでした。やめたい理由として代表の方が挙げたのは、ファイルが壊れるおそれと、特定の方しか分からなくなることです。
この理由は、最初の範囲の決め方にもつながっています。壊れるおそれをなくすには、データを 1 か所に置いて守ること。特定の方しか分からない状態をなくすには、担当の方が休んでも、ほかの方が状況を見られること。どちらも、最初の範囲に入れました。
年に 1 回だけの業務は、月ごとに絞り込んで「今月すること」を一覧にする形を考えました。カレンダーで見たいという強いご要望には、同じ期限の情報をカレンダーの形でも見せる作りが考えられます。
使う場所と守りの条件も、範囲と一緒に決めました
範囲と同じ打ち合わせで、使う場所の条件も確かめました。
- 事務所の中だけでなく、クラウドで使えること
- 個人の情報を多く扱うので、守りを固めること。接続できる場所を絞る方針にした
- 今使っている社会保険労務士向けのソフトとの、データのやり取りを考えること
最後の 1 つは、範囲を広げるかどうかに関わります。データのやり取りが難しければ、最初の範囲は、事務所の中で完結する形にします。
見積もりの形と、次の打ち合わせの進め方も決めました
打ち合わせの最後に、見積書を作る方向で合意しました。費用は、初めに作る費用と、使い続ける月々の費用(ランニングコスト)の 2 本立てです。
次の打ち合わせには、当社の技術の担当が同席することにしました。最初の範囲を作るのに、どの業務の情報をどう持つかを詳しく伺うためです。見積もりの前に、作る側が直接伺っておくと、見積書を出したあとの行き違いが減ります。
増えた要望は、捨てずに「あとで足す」一覧に残します
新しく出た要望は、最初の範囲に入れなかっただけで、捨てたわけではありません。打ち合わせの記録に、業務ごとに中身を書き残しました。手間の重い業務から順に足すとき、その記録が次の要件定義の材料になります。
範囲を決めるときにいちばん効いたのは、代表の方ご自身の「これだけでも」という言葉でした。こちらが範囲を絞ろうとすると、削られたように受け取られがちです。お客様の言葉で範囲を決めれば、最初に作るものが、お客様の判断として残ります。
現場の数字や期限を 1 画面に集める仕組みは、当社の経営ダッシュボードでも同じ考え方です。決まった手順の作業を AI に任せる相談は、AI伴走支援でお受けしています。



