LINE の配信ツールと顧客管理(CRM)は、比べてどちらか 1 つを選ぶ道具ではありません。LINE の配信ツールはお客様と話す窓口で、顧客管理は社内で対応の記録とやることを持つ台帳です。どちらを先に入れるかは、2 つの手間を比べて決めます。記録を入力する手間と、「あの件どうなった」と探す・聞く・確かめる手間です。
2026 年 4 月 2 日に、灯油の配送をしている会社様に向けて、この比べ方で資料を作りました。翌日、この相談を進めていた方から連絡が届きました。選ばれたのはどちらの道具でもなく、QR コードで注文の変更を受け付ける方法でした。
LINE で受けた注文の変更を、メールと手作業で追っていたことが相談の始まりでした
この会社様は、個人のお宅や会社に灯油を配送しています。注文は電話と LINE で受けていました。LINE で届いた注文は、配信ツールからメールに転送されます。受付の担当の方はそのメールを見つけて中身を読み、担当者に伝え、配送の管理のソフトを手で直していました。対応が済んだかどうかの記録は、どこにも残りません。電話で受けた件は、メモか記憶に頼っていました。
お客様の番号もそろっていませんでした。配送の管理のソフトの中で、1 人のお客様に 3 種類の番号が付いていて、LINE の側とつなぐのを難しくしていました。
やり取りは 2025 年 12 月からチャットに残っていました。4 月 2 日、私はまず、そのやり取りを AI(Claude)に読ませました。時系列の経緯、関わっている人、使っているシステムと困りごとを、一覧にまとめさせています。比べる資料は、その経緯を読んでから作っています。
比べたのは、入力の手間と、探す・聞く・確かめる手間です
顧客管理を入れると、入力の手間は確かに増えます。相談の中でも、管理すること自体が手数を増やす、という心配が出ていました。資料では、この心配はもっともだと書いたうえで、顧客管理が減らすのは入力の手間ではなく、次の手間だと説明しました。
- 「あの件、今どうなっているか」を誰かに聞く
- 対応の漏れが分かって、お詫びとやり直しをする
- 担当が替わるたびに、口で引き継ぐ(属人化)
- 誰がどの件を持っているかが分からない
分かれ目は、今どちらの手間が大きいかです。探す・聞く・確かめる手間の方が大きければ、顧客管理は全体の手数を減らします。そうでなければ、入れる費用に見合わないこともある、と資料にはそのまま書きました。
LINE の配信ツール(窓口)
- 動く場所は LINE の上
- お客様へのメッセージ、属性ごとの配信、予約や問い合わせの受付
- 社内のやることの管理や、対応の記録は受け持たない
顧客管理(顧客カルテ)
- 動く場所は社内
- お客様ごとの対応の記録、担当、やることの一覧、進み具合
- LINE でお客様に配信することは受け持たない
2026 年 4 月 2 日にお送りした説明資料から
ここでいう LINE の配信ツールは、LINE 公式アカウントに、配信や受付の機能を足して使う道具のことです。
資料の中では、顧客管理を「顧客カルテ」と呼びました。この会社様の資料は、IT に詳しくない方にも分かる言葉で書くと決めていたからです。病院のカルテのように、お客様ごとのやり取りを 1 冊にまとめるもの、と言えば伝わります。
案には「今のまま」を入れ、人が来る前に始める案は勧めませんでした
比べる案は 3 つにしました。何もしない案も、比べる相手の 1 つです。
| A. 今のまま | B. LINE の配信ツールを強める | C. 顧客管理を入れる(LINE はそのまま) | |
|---|---|---|---|
| できるようになること | 変わらない | LINE の配信を細かく分けられる | 対応の記録とやることを 1 か所で持てる |
| 残る困りごと | 対応の記録と担当の問題 | 社内の対応の記録と担当の割り振り | LINE での配信は受け持たない |
| 要る人 | 今のまま | 配信ツールを運用できる人(今はいない) | 毎日記録を入れて管理する人 |
| 始めやすさ | すぐ | プランはすぐ上げられるが、運用は難しくなる | 初めの設定と、運用の決まりづくりが要る |
| 繁忙期の前に始められるか | 問題ない | 担当の方の着任の前は難しい | 着任のあとでないと難しい |
私の見立ても書きました。本来の形は、お客様との窓口に LINE、社内の管理に顧客管理を置く組み合わせです。ただ、運用を担う方の着任は 5 月で、米の時期の繁忙期もすぐに来ます。着任のあとで、急ぐ方から 1 つずつ始めるのが現実的だ、という見立てです。
道具を入れても、動かす人がいなければ使われません。表に「要る人」と「始められるか」の行を置いたのは、そのためです。
道具を決める前に、8 つの質問をお送りしました
資料の最後には、決めるために教えていただきたいことを 8 つ並べました。答えによって、この道具にすべきだと押し付けるためのものではない、とも書き添えています。
- 対応の漏れ、確認のための聞き合い、引き継ぎの混乱は、どのくらいの頻度で起きていますか
- 理想のやることの管理ができているとしたら、どんな状態を思い浮かべますか
- 受付の窓口では、お客様の対応の記録を、今どう残して共有していますか
- 受付の窓口が顧客管理に慎重なのは、操作が難しそうだからか、入力が増えるからか、必要を感じないからか
- 5 月に着任する方には、どの業務を受け持っていただく想定ですか
- LINE を使った発信を主導できる方は、今社内にいますか
- 「何も変えなくていい」という声と、「やることの管理が課題」という声は、どこから食い違っていると思われますか
- 進めるための条件は何ですか(予算の上限、必ず解決したいこと、担当の方の確保など)
7 つ目は聞きにくい質問です。それでも入れたのは、変えたくない理由が分からないまま道具を選んでも、入れたあとに使われるかどうかが読めないからです。
目標の数字は、時間ではなく件数と割合で置きました
同じ日に、目標の数字(KPI)の案も作りました。「問い合わせへの対応の手間を限りなく減らす」という方向は、数字にしないと進み具合が分かりません。
時間は使いませんでした。対応にかかる時間は測るのが難しく、人によって差が出るからです。代わりに置いたのは、次の件数と割合です。
| 目標の数字 | 数え方 |
|---|---|
| 記録に残る形で届いた問い合わせの割合 | 顧客管理に記録された件数を、受け付けた全件数で割る |
| 対応が漏れた件数(月) | 受けたのに対応が終わらなかった件数を数える |
| 顧客管理への記録率 | 対応した件数のうち、記録が残った割合 |
| 電話以外から届いた問い合わせの割合 | 受付の経路ごとの件数を、月ごとに集める |
| 1 回目の対応が済んだ割合 | 「対応済み」に変わった件数の割合 |
今の値は、どれも話から推した値でした。表には推した値だと書き、打ち合わせで実際の値に置き換える前提にしています。
電話で注文したいお客様は、これからも電話で受けます。デジタルに慣れたお客様だけを対象にせず、電話でなければならない場面を少しずつ減らす、というのが目標の置き方でした。
翌日の連絡は、QR コードで注文の変更を受け付ける方法でした
4 月 3 日、この相談を進めていた方から連絡が届きました。QR コードで注文の変更を受け付ける仕組みの説明を詳しく聞き、それを入れたい、という内容です。いちばん無駄だと感じていた、やることの管理そのものがなくなるから、という理由でした。費用も、作る費用と通信の費用くらいで、アカウントの数に応じた月々の費用は増えないとのことでした。LINE の受付は、何でも受け付ける形から、受け付けることを絞った形に見直したい、という話も添えられていました。
QR コードで注文の変更を受ける案は、私の検討の一覧にも入っていました。ただ、比べる資料は、記録をどこに残すかの比べ方に寄っていて、記録すること自体を減らす案を同じ表に並べていませんでした。比べた 2 つの道具より、確認の作業そのものがなくなる方法の方が、探す・聞く・確かめる手間は大きく減ります。お客様の判断は、私の資料の物差しで測っても筋が通っていました。記録すること自体を減らす案も、同じ表に並べておくべきでした。
私の返事の下書きには、QR コードの入口と LINE のメニューは一緒に整理したい、と書きました。
お客様ごとの記録を 1 か所にまとめると何が変わるかは、不動産仲介の会社様の事例にもあります。今お使いの顧客管理やメールに AI をつなぐ設定は、AI伴走支援で行っています。



