相見積もりは、合計の金額を比べる前に、同じ行がそろっているかを確かめます。仕組みやサイトを作る仕事の見積もりは、会社ごとに書き方が違います。合計だけを並べると、中身の違う物どうしを比べることになります。
当社も見積もりを出す側です。出す側から見て、比べるときにそろえていただきたい行を 7 つに絞りました。言葉の意味は、用語集の相見積もりにあります。
そろえるのは、合計の上にある 7 つの行です
比べる前に、どの会社の見積もりにも次の 7 つの行があるかを見ます。無い行は、問い合わせて埋めてもらいます。
| # | そろえる行 | 確かめること |
|---|---|---|
| 1 | 作るものの範囲 | 画面やページの数、機能の数。「一式」で済ませていないか |
| 2 | 含まれないもの | 写真や文章の用意、データの移し替え、ほかの仕組みとのつなぎ、ソフトの利用料 |
| 3 | 頼む側がすること | 資料の用意、確認の打ち合わせ、社内での確かめ |
| 4 | 数や時間の上限 | 直しの回数、打ち合わせの回数、作業の時間 |
| 5 | 作ったあとの月々の費用 | サーバー、保守、利用料。何年使う前提か |
| 6 | 支払いと解約 | 前払いか、段階ごとか。途中でやめたときの費用 |
| 7 | 作ったものとデータの持ち主 | 権利はどちらのものか。ほかの会社へ移るときの費用 |
7 つのうち、合計の金額にいちばん効くのは、2 つ目の「含まれないもの」と、5 つ目の「作ったあとの月々の費用」です。作る費用が安くても、写真の用意や月々の保守が別にかかれば、何年か使ううちに総額は入れ替わります。
「一式」の行は、中身を書き出してもらってから比べます
見積もりの行に「サイト構築 一式」のように書かれていると、何ページを、どこまで作るのかが分かりません(一式)。一式そのものが悪いわけではありませんが、相見積もりで並べるときは、中身を行に分けてもらいます。
そのままでは比べにくい
- サイト構築 一式
- システム開発 一式
- 保守 一式
分けてもらうと比べられる
- ページの数、作るページの一覧、文章と写真の用意は誰か
- 画面と機能の一覧、使う人の権限の種類、ほかの仕組みとのつなぎ
- 月に何をするか(更新、控えの取得、相談の窓口)、直しの上限
分けてもらうときは、数や時間で書けるものを数と時間で書いてもらいます。「打ち合わせ 一式」より「打ち合わせ 月 2 回、1 回 1 時間」の方が、ほかの会社の見積もりと並べられます。
当社は 2026 年 4 月に、提案書の書き方の決まりを作りました。その決まりでは、範囲を 6 つに分けて書きます。「すること」「しないこと」「別に見積もるもの」「お客様にしていただくこと」「前提」「まだ決まっていないこと」です。「一式」だけで終わる行も作りません。
2 つ目の「含まれないもの」は、当社の見積もりでも書き漏らしがありました
決まりを作る前の 2025 年に、生産の管理の仕組みの見積もりをお出ししたことがあります。顧客管理のソフトの上に仕組みを作る提案でした。見積もりには作る費用だけを書き、ソフトの利用料は「別途」とだけ書いていました。
翌年の 5 月に、その資料を読み返して気づきました。ソフトの利用料をいくらと見込むかを、どこにも示していなかったのです。決める方が見るのは合計の欄です。「別途」の 1 語では、利用料は予算に入りません。利用料を別にお伝えし、予算に入れていただく必要がある項目として、課題の一覧に書き足しました。
- 何が別途なのか(ソフトの利用料、サーバー、写真、交通費など)
- 誰に払うのか(見積もりを出した会社か、ほかの会社か)
- いくらぐらいか(目安だけでも)
- 1 回きりか、毎月・毎年かかるのか
- 合計の欄に入っていないことが、決める方に伝わるか
5 つ目の「月々の費用」は、使う年数をそろえて総額で比べます
作る費用と月々の費用は、足し方が違います。比べるときは、何年使うかを先に決め、作る費用に、月々の費用の合計を足して並べます(ランニングコスト)。
| A 社(例) | B 社(例) | |
|---|---|---|
| 作る費用 | 100 万円 | 150 万円 |
| 月々の費用 | 3 万円 | 1 万円 |
| 5 年使ったときの総額 | 280 万円 | 210 万円 |
表の金額は、説明のための例(税別)です。作る費用だけを見ると A 社が 50 万円安いのに、5 年で比べると B 社が 70 万円安くなります。月々の費用が何に対するものか(サーバー、保守、ソフトの利用料)も、行に分けてもらうと比べやすくなります。
7 つ目の「持ち主」は、合計の欄には出てきません
7 つ目は、金額の欄には出てきませんが、あとで大きな差になります。作ったものの権利がどちらのものか、ほかの会社へ移るときに費用がかかるか、サーバーやドメインの管理者の権限を渡してもらえるかです。
頼んで作ってもらった文章・写真・プログラムの著作権は、法律では、作った人や会社のものから始まります。著作権は契約で譲ることができますが、譲る契約に書いていない権利の一部は、作った側に残ると推定されます(成果物の権利)。見積もりの段階で、権利をどう扱うかを 1 行書いてもらうと、比べる材料が増えます。
ここがはっきりしないまま始めると、数年後にほかの会社へ移りたくなったとき、移る費用が高くついたり、そもそも移れなかったりします。使い続けるために要る作業を、入れた会社にしか頼めない状態は、ベンダーロックインと呼ばれます。サイト・メール・ドメインをほかの会社から引き取るときの順番は、別の記事にあります。
当社の経営ダッシュボードでは、契約が終わったら、データを CSV でお渡しし、当社の側からは消すことを、サービスのページに書いています。
金額の差は、何をするかの差であることが多いです
同じ「サイトの制作」でも、見た目を整える仕事と、問い合わせにつながるかまで考えて組み立てる仕事では、かかる手間が違います。私は会社員のころ、Web サイトの制作を、問い合わせにつながるかという見方で組み立て直す仕事に変えました。1 件の制作の金額は、100 万円ほどから 300 万円ほどになりました。手間の中身が変われば、金額は大きく変わります。
だから、合計の差を見つけたら、どの行の差なのかを探します。行の差が分かれば、高い方を選ぶか、安い方に足りない行を足してもらうかを、頼む側が決められます。
- どの会社にも、同じ要望の文書を渡す
- 7 つの行をそろえて書いてほしいと、最初に伝える
- 「一式」の行は、中身を書き出してもらう
- 「別途」の行は、誰にいくらぐらい払うのかを聞く
- 何年使う前提で総額を比べるかを決めておく
- 合計の差が出たら、どの行の差かを探す
当社は、システムの開発の見積もりを、機能の一覧の 1 行ずつで書いています。考え方は機能の一覧で説明する見積もりの記事にあります。顧客管理や見込み客の記録の仕組みはAI顧客管理マーケティングシステム構築、月々の支援の中身は AI伴走支援のページに、含まれるものと含まれないものを並べています。



