当社は、システム開発の見積もりを、機能の一覧の 1 行ずつで説明します。1 行の金額を決めるのは、AI がプログラムを書く時間ではなく、人が動かして確かめ、直す時間です。権限の種類と、ほかのサービスとのつなぎは別に数え、打ち合わせとやり取りの分は別の行で示します。機能が 1 行でも増えたら、着手の前に金額を確かめ直します。
この形は、2026 年 9 月 15 日の社内の打ち合わせで決めました。題材は、建設の会社様にお出ししていた、工事の写真から写真の台帳を作るシステムの見積もりです。
作業の日数で書いた見積もりを、機能の行で書き直しました
9 月 10 日にお出しした最初の見積書は、作業の日数で書いていました。行は、台帳のひな形を読み解く作業、写真を並べる仕組みを作る作業、現場の監督のパソコンに入れる作業などです。それぞれに、何日かかるかを付けていました。
15 日の打ち合わせで、これを機能の一覧の行で説明する形に変えました。お客様が「なぜこの金額なのか」を、機能の一覧を見ながら確かめられるようにするためです。機能の一覧そのものが、見積もりの根拠になります。あとで要望が増えたときも、「この行が増えたので、この金額です」と説明できます。
作業の日数で書く
- 行は、作業の名前(読み解く・作る・入れる)
- 1 行ごとに日数を付ける
- 日数が妥当かは、お客様からは確かめにくい
- 要望が増えたとき、どの日数が増えるのかが見えにくい
機能の行で書く
- 行は、画面でできること(写真を選ぶ・並べ替える・印刷する)
- 1 行ごとに金額を付ける
- お客様が、要る行と要らない行を選べる
- 要望が増えたら、増えた行の分だけ見積もりが変わる
機能の一覧は、聞き取りのあとに AI で出し、社内で確かめます
機能の一覧は、聞き取りのあとに AI で出し、社内で確かめてから見積もりに使います。ご発注までに、お客様に見ていただく場面は 3 つあります。見積もり、触れる試作、仕様を確かめる打ち合わせです。
- 聞き取り欲しいものを伺う
- 機能の一覧AI で機能の一覧を出し、社内で確かめる
- 見積もり機能・画面・権限の数と、ほかのサービスとのつなぎの有無から出す
- 試作画面の見本を作り、触っていただく
- 仕様の確認当社の技術の担当も入り、機能・画面・権限の一覧を確かめる
- ご発注行が増えていれば、見積もりを出し直してから
写真の台帳のシステムでは、小さく始める版と広げる版で、行は同じでも中身が違うところがありました。
| 機能の行 | 小さく始める版 | 広げる版 |
|---|---|---|
| 工事を選ぶ | あり | あり |
| 工事に写真を上げる | あり | あり |
| 台帳の写真を、ドラッグで並べ替える | あり | あり |
| 台帳を確かめて印刷する | あり | あり |
| 誰が登録したかの記録 | 社内で共通の入り口 1 つと、記録した人を社員の一覧から選ぶ | 監督ごとにログインする |
| 社員の登録(使う人の管理) | あり | あり |
写真の並べ替えは、最初は広げる版だけに入れていました。打ち合わせで、ドラッグでの並べ替えは作るのが難しくないと分かり、小さく始める版にも入れています。
1 行の金額を決めるのは、人が動かして確かめる時間です
プログラムを書くのは、AI(Claude Code)です。ここは速く進みます。時間がかかるのは、出来上がったものを人が実際に動かし、思いがけない操作を試し、直したあとにもう一度確かめるところです。当社の経営ダッシュボードを作ったときも、いちばん時間がかかったのは、動かしてみて初めて分かる不具合の確かめでした。
AI がすること
- 画面と処理のプログラムを書く
- 動きを確かめるテストを書いて流す
- 見つかった不具合を直す
人がすること
- 実際に画面を操作して、使う人の手順で動くかを見る
- 思いがけない順番や入力を試す
- 直したあとに、同じ手順でもう一度確かめる
- お客様の言葉と画面の言葉が合っているかを見る
1 行の金額は、この人の側の時間で決めています。AI が書くから安くなる、と思われがちですが、確かめる時間はなくなりません。お客様にも、このことを見積もりの説明の中でお伝えします。
打ち合わせとやり取りの分は、別の行で示します
機能の行のほかに、打ち合わせやメールのやり取りの分を、別の行として足します。ここには人が入るので、費用がかかります。機能の金額に紛れ込ませず、内訳として見える形にしました。
権限の種類と、ほかのサービスとのつなぎは、別に数えます
機能の行の数が同じでも、手間が大きく変わる要素が 3 つあります。
| 手間を増やす要素 | なぜ増えるか | 小さく始める形 |
|---|---|---|
| 権限の種類 | 種類が増えるほど、誰に何を見せるかを確かめる組み合わせが増える | 社内で共通の入り口 1 つにし、記録した人を一覧から選ぶ |
| ほかのサービスとのつなぎ | 当社につなぐ先を試せる環境がない。お客様が長く貯めてきたデータを、誤って消すおそれがある | 標準の範囲には入れない。要るときは別に見積もる |
| すべての操作の記録(変更履歴) | 作り込むと、きりがなく複雑になる | 入れない。誰が登録したかの記録で代える |
権限の種類は、見積もりでは掛け算として扱います。写真の台帳のシステムでは、写真を保管している外のサービスとのつなぎを、どちらの版にも入れませんでした。
見積もりには「今回は入れていないもの」の欄を置きます
入れないと決めたものは、見積もりと提案書に書きます。写真の台帳のシステムで「今回は入れていないもの」にしたのは、5 つです。すべての操作の記録、ほかのサービスとのつなぎ、工事の台帳と案件・見積もりのつなぎ、お客様ごとの工事の一覧、経営の分析です。
書いておけば、あとで「入っていると思っていた」という行き違いが起きにくくなります。どこまでが今回の対応範囲かを、お客様と同じ表で確かめられます。
見積もりの前に、触れる試作をお見せします
初めてシステムを頼む方は、どう頼めばよいかが分からないことが多いです。そこで、いただいた資料をもとに画面の見本(モックアップ)を作ります。「この機能の構成で、この金額です」とお見せしてから、ご発注を考えていただきます。
写真の台帳のシステムでも、15 日の打ち合わせで見本を動かしました。工事を開き、写真を選んで上げ、台帳で並べ替え、確かめて印刷するところまで、一通り動きました。気づいたことも 2 つありました。工事を選ばずに台帳の編集に入ると、別の工事の台帳に切り替わって見えること。一度作った台帳を、どこから直せばよいかが分かりにくいことです。どちらも、先に工事を選ぶ順番を画面の側で決めて直すことにしました。
契約の前に試作を見せるときのデータの用意は、デモのデータを直した記事に書いています。
機能が 1 行でも増えたら、着手の前に金額を確かめ直します
ご発注の前に、当社の技術の担当も入った打ち合わせで、機能の一覧、画面の一覧、権限を確かめます。想定どおりなら、お見せした金額で始めます。機能が 1 行でも増えていれば、見積もりを出し直してから始めます。
行で見積もっていると、この確かめが速く済みます。増えた行を指させば、どこが変わったかがお互いに分かるからです。最初の聞き取りで伺っておくことは、初回の相談で用意した 19 の質問にまとめています。
納めたあとの要望は、システムの中の受付で集め、月に 1 回仕分けます
納めたあとは月々の保守に移り、その中で、不具合は追加の費用をいただかずに直します。システムの中には、ご意見・ご要望を受け付ける欄を置き、月に 1 回の打ち合わせで仕分けます。不具合なら直し、不具合でないものは改善の提案としてご相談します。翌月に回すものもあります。
小さな機能の追加は、月々の保守の中で決まった数まで受けます。それを超える分は、1 件ずつ見積もります。作る仕事から月々の支援に移るときの区切りの付け方は、納品のあとに月額の支援に切り替えた記事に書きました。
当社の社内の業務システムも、AI が作り、人が確かめてから使い始めています。その記録は事例のページにあります。業務の中で、AI に任せる作業を毎月 1 つずつ決めて設定していく形は、AI伴走支援で行っています。



